徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

お知らせ

アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

2023年度クラシックライブベスト5

 さて今年も年末恒例の本年度の年間ベストライブを選択することにします。本年はコロナが終わったことに無理矢理されたことで、ライブは一気に増加しました。しかし私の方が深刻な資金不足のために、この秋の外来訪日オケラッシュもベルリンフィルやロイヤルコンセルトヘボウを初めとしてほとんどパスせざるを得ないことになり、このチョイスの意味が怪しくなってきておりますが、そもそも最初からあくまで私の「私的な」判断ですので、貧乏くさいチョイスになったとしても継続することにしていきます。

 

 

ベストライブ

第5位
ポリャンスキー指揮 九州交響楽団

 巨匠ポリャンスキーが九州交響楽団の実力を限界まで引き出しての、華やかでありながら浅さを感じさせない強烈なシェエラザードはやはり忘れがたいものがある。このオッサン、流石に只者ではない。

 

第4位
ヴァシリー・ペトレンコ指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

 辻井のバックオケと嘗めてかかっていたら、それを覆すような高密度で美しいサウンドに圧倒された。ショスタコの8番での音色にはあまりの美しさに唸りっぱなし。今期でCPでは最強だったコンサート。

 

第3位
ラハフ・シャニ指揮 ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団

 極めて感動的であったチャイコの悲愴が印象に残る。特に第1楽章など鳥肌が立ちそうになったぐらい。生命力溢れる悲愴は新たなスタンダードの1タイプを示した。

 

第2位
セミヨン・ビシュコフ指揮 チェコフィルハーモニー管弦楽団

 新たにビシュコフを迎えてのチェコ情緒満載の演奏が見事。さすがに弦楽陣のアンサンブル密度などではヨーロッパ一流オケであることを感じさせた。アンコールの超ノリノリのハンガリー舞曲なども非常に印象深い。

 

第1位
トゥガン・ソヒエフ指揮 ウィーンフィルハーモニー管弦楽団

 チェコフィルとはまた違った印象のドラマチックなドボ8が印象に残る大名演。メストからの急遽の代演で一部からは懸念もされていたソヒエフが遺憾なくその実力を発揮した感があり、新しい時代の到来を感じさせた。いつになくノリの良いウィーンフィルを堪能。

 

番外編
チョン・ミン指揮 江陵市交響楽団

 タダ券で行った韓国地方都市のオケと侮ってかかっていたら、どうしてどうしてしっかりと密度の高い演奏に驚かされた。流石に韓国侮りがたしと思わされたコンサート。

 

 

ワーストライブ

 本年は予算の関係から聴きに行くコンサート数を絞ったこともあり、首をかしげるようなおかしな演奏には出くわしていない。そこで今年はベスト5には食い込んでいないが、忘れがたいコンサートを挙げる

 

忘れえぬライブ

 

飯守泰次郎指揮 関西フィルハーモニー管弦楽団

 今年惜しまれつつも急逝した飯守泰次郎だが、私が聞いた彼のラストは4オケ祭での関西フィルでのブラームスの2番になる。オケとの長年の信頼関係を現すかのような、関西フィルの持ち味を最大限に生かしたしっとりとした演奏が印象的。座って指揮をしていた飯守が、興が乗ったか第2楽章で突然に立ち上がったのには驚いた。

 

シャルル・デュトワ指揮 大阪フィルハーモニー管弦楽団

 近年富に密接な関係を示しているデュトワと大フィルが、今年はフランスもので煌びやかで美しい音色を炸裂させた。それしても毎回デュトワと競演する度に、確実にレベルが向上していく大フィルがすごい。デュトワマジックは未だ健在。

 

ヤン=ウィレム・デ・フリーント指揮 読売日本交響楽団

 コンパクト編成オケのピリオド奏法と古典指向的な様式を取りながら、そこから超ロマンティック演奏を引っ張り出したそのギャップに圧倒された。特に叩きつけるようにシャープな第1楽章は特筆すべき。プロ合唱団の実力を引き出してオケと歌唱の一大音楽空間を作り出したフィナーレは圧巻であった。

 

 

総評

 今期は予算の関係で聴きに行くコンサートを絞り込んだこともあって、ハズレというようなハズレはなかった。個人的には今年の秋の外来オケ訪日ラッシュの中から2つしかいけないという状況は痛恨の極みだったのだが、いずれのコンサートも完全に満足を超えるレベルのパフォーマンスだったことで心理的に救われた。結局はこの2公演が上位2つを占める。

 さらに今年前半のまだ円安の影響が今ほど顕著でなかった時期の比較的お得な来日公演がその下に入った。いずれもチケットの価格以上の価値のある公演であり、お買い得だったと言えるCPの良いコンサートである。そして第5位にはわざわざ九州まで出向いたポリャンスキーの九響公演をあげた。なおこの九州遠征が、私的にはもう最後の長距離遠征になるかもしれない。

 忘れがたいコンサートとしては飯守ファイナルと今や恒例行事となってきたデュトワの大フィル公演。前者は飯守と関西フィルの親密な関係を覗え、後者はデュトワが振る度にレベルを上げていく大フィルの現状が分かる公演。さして3つめは最近の印象深かった読響第九をあげておく。

 それにしても私の財政状況の悪化と同時に円安による外来オケチケットの価格高騰のダブルパンチで、来年度はさらなる状況の悪化が予測され、来年度のこの企画は在阪オケのコンサートからのみという事態に陥る可能性も予測される。なにせ例年CPの良いお得なオケの代表と言えるワルシャワ国立フィルの来日公演までもが、A席で2万円近くという状況になると、さすがに来日オケには手が届かなくなってくる(以前はせいぜい1万円ちょっと、日本の正常時(アホノミクス以前)には8000円とかだった)。

 私の財政状況の大幅改善などは、それこそ宝くじでも当選しない限り難しく、アホノミクスの後遺症からくる大幅円安の改善もすぐには望めないことを考えると、来年度はかなり厳しいと言うしかない。

 

 

2022年度ベストライブはこちら

www.ksagi.work