徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

ミューザに行く前に、朝から東京の美術館を連チャンで回る

ハードな一日の始まりだ

 翌朝は7時半に目覚ましをセットしていたのだが、7時に勝手に目が覚める。体には少々だるさが残っていて体調はベストとは言い難いが、そんなことに構ってはいられない。今日もハードスケジュールである。メインはミューザでの日フィルライブだが、その前に美術館を駆けずり回る予定になっている

 8時過ぎにホテルから出かけると、上野駅で朝食を摂ってから最初の目的地へと向かう。美術館ツアーの最初は定石通りの上野巡回。上野駅で美術館のチケットを入手、各館の開館時刻を計算した上で巡回ルートも決めている。ただまだ朝も比較的早いというのに既に上野は灼熱地獄となってきている。今日はかなりハードになりそうだ。

 最初は9時開館の科学博物館から。開館10分前に到着したら既に待ち客がいる。予想通りではあるが親子連れが多い。

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科学博物館には既に待ち客が

 

 

「生命大躍進」国立科学博物館で10/4まで

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 最近放送されたNHKスペシャルと連動した企画。脊椎動物が進化していった過程で鍵となった、目の獲得、胎盤の発生、知性の進化といったポイントに着目して生命進化の歴史をたどる。

 展示品は当然のように化石などが中心だが、復元模型の類いも多く、さらにはNHKのお約束としての映像展示が多い。最初は微生物から始まり、カンブリア大爆発を経て有名なアノマロカリスなどが登場、この際にDNAの4倍化や外部遺伝子を取り込んでメガ発生するという劇的な進化が起こっている。

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アノマロカリス

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三葉虫

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ウミサソリ

 一旦大絶滅を経た次の進化では生命はいよいよ海から陸へと上がっていく。両生類からは虫類などの誕生である。ここからさらに恐竜が誕生するが、本展ではそちらではなくてその合間で生き抜いていたほ乳類が主役である。これらのほ乳類はまたも原始細菌などに感染することで胎盤を生成する能力を獲得することになる。

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海の中での壮絶な生存競争から

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陸上に上がるものが現れ

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ついには哺乳類が生まれる

 そして進化を遂げたほ乳類の中から原人が現れる。これらの原人は多様な分岐をしながら脳の容量を高めて、ついには文化を獲得するのである。

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そして人類誕生

 以上のようなおおまかな生命進化の歴史をザッと習うことが出来るという展示内容になっている。生命進化の通説も私が学校で習った頃などに比べるとかなり変化していることを痛感。大人にもお勉強になる内容である。

 

 博物館を出たときには外はさらに灼熱度が上がっている。風景がゆらゆらして見えるのが、陽炎が上っているのか私が目眩を起こしているのかが分からない。その中を次の目的地へと移動する。

 

 

「クレオパトラとエジプトの王妃展」東京国立博物館で9/23まで

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 クレオパトラと銘打ってはいるが、実際はこれは客寄せのための表題のようなもので、内容的にはエジプトにおける王妃に着目してエジプト文明を紹介した展覧会。

 古代エジプトにおけるファラオは神であるが、同様に王妃も女神に擬せられる。そのような王妃をかたどった彫像や絵画などが展示のメイン。一方でエジプトの神々を紹介したりエジプトの神話世界を理解するための展示を行っている。

 ただ内容的にはどことなく中途半端感も強い。結構見応えのある展示品も多かったのだが、その割には展覧会全体での印象は薄い。

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 建物を出た途端に失神しそうな暑さ。既に体力は限界に近くなってきている。灼熱地獄も体にキツイが、美術館巡りは意外と館内で歩くので、このダメージが徐々に効いてくるのである。かなり昔のガッテンでも、美術館見学のような「歩いては立ち止まって」を繰り返すのはただ歩き続けるよりもハードであると言っていたが、実にそれは私の実感とも合致している。なおこの時のテーマは「美術館の見学の仕方」というものだった。この時代のガッテンはテーマにもう少しバラエティがあったのだが、最近は料理と病気の二つだけになってしまって、番組の面白さが大分減退したような気がする。むしろテーマの多彩さという点では「目がテン」の方が面白さはある(もっとも内容はかなり胡散臭い時が多いが)。

 

 

「ボルドー展-美と陶酔の都へ-」国立西洋美術館で9/23まで

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 フランスの古都・ボルドーについてその黎明期から現代に至るまでを紹介。

 とは言うものの、美術的見所としてはドラクロワの「ライオン狩り」ぐらいで、後はボルドーの成り立ちの歴史とか、交易で栄えた時代の文物とか、どことなく観光案内的で私としては今ひとつ関心を持てない内容が多かったのが事実。どうも都市の名前を冠した展覧会はこうなりがちのようだ。

 

 3カ所目の美術館から出てきた時にはもう既に本格的にへばってしまっていた。予定外だがぶんか亭で早めの昼食とクールダウンをすることにする。まだ11時過ぎと昼食には早めだが、もう少しするとあの店は急激に混雑するのがオチだから、早めにしといた方がよいだろう。注文したのはランチメニューの豚の生姜焼き丼とそばのセット、さらにクールダウンのためにアイスを注文。例によって面白味もおかしみもない可もなく不可もなくの内容である。

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面白味のない昼食

 燃料補給とクールダウンを済ませると店を後に。案の定、私が出る時には既に入場待ち客の列が出来ていた。この程度の店でも行列が出来るのが東京の恐ろしいところ。

 これから川崎ミューザへの移動となるのだが、ライブの開演まではまだ若干の時間がある。そこで途中でさらに一カ所立ち寄ることにする。目的地は東京駅からすぐ。と言うよりも東京駅の中。

 

 

「九谷焼の系譜と展開」東京ステーションギャラリーで9/6まで

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 九谷焼と言えば鮮やかな色彩に斬新な表現のものが多いという印象だが、本展では江戸時代の古九谷から始まって、明治時代の輸出用の作品、さらには現代作家による作品まで多彩に展示している。

 古九谷は私が九谷と言った時にイメージする作品そのもの。緑と黄色の色彩が鮮やかな器である。その後、さらに色鮮やかさが増してきてとにかく派手な陶器というイメージになる。明治時代には盛んに輸出されたらしいが、これらの作品は超絶技巧を駆使した豪華なものが多い。ただデザイン的にはいささか派手さが癇に障る気もしたのだが、やはりその後の欧米の流行がゴテゴテしたアール・ヌーヴォーからシンプルなアール・デコに変化するにつれて段々と人気が落ちてきたらしい。

 現代の九谷になればもう過去の伝統からは大分離れた作品も多い。同時に実用性からも離れたようだ。ただデザインがいささかうるさめに感じられるところが、意外と九谷の伝統だったりする。

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 そろそろ時間ギリギリだ。ミューザに向かうことにする。場所は昨日下調べしてあるのでスムーズに到着(そもそも方角さえ間違わなければ迷う余地もない場所だが)する。

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