陶板名画の庭を見学
お茶も終えたところでホールのある北山に向かうことにする。四条から北山は地下鉄ですぐである。北山に到着したのはまだ開演まで1時間以上前。そこでさらに時間つぶしに地下鉄出口のすぐ横にある陶板名画の庭に入場。
ここは所謂陶板複製画を展示した美術館。いわゆる大塚国際美術館などと同じである。展示作は最後の晩餐に最後の審判、後は変わったところで鳥獣戯画など。展示点数は少なく大塚国際の百分の一ということころ。もっとも入場料も100円とこちらも大塚国際の三十分の一なのでまあそんなものか。ちなみに最後の審判については、入場料を払わなくても京都コンサートホールに向かう道の途中から見えたりするのだが・・・。
私と同じように開演までの時間つぶしのつもりの者がいるのか、意外と観客が入っていたりする。私はと言えば、以前の京都国立博物館での展覧会では見ることが出来なかった鳥獣戯画を眺めたり、最後の審判をマジマジと再点検したりなどと言ったところ。この肉体の競演のような大作は、いかにもミケランジェロらしい迫力ある作品である。
しばし時間をつぶすとコンサートホールに向かう。もう既に私と同様にホールに向かう者がゾロゾロ。到着時はまだ会場まで数分あるようで、入口前には例によって「別に並んで待つ必要もないのに整然と行列を作って待っている日本人の風景」。
私の席はホール1階の奥。昨日のフェスティバルホールよりは良い席である。まあ支払った料金も昨日の二倍であるが。
ロンドン交響楽団
[指揮]ベルナルト・ハイティンク
[独奏]マレイ・ペライア (ピアノ)
モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番 ハ短調 K.491
ブルックナー:交響曲第7番 ホ長調(ノヴァーク版)
ピアノ協奏曲が始まった途端に驚いた。いきなり冒頭から情緒タップリの演奏が始まったのである。何だ?と思っていたら、ピアノ独奏が始まったらさらにメロディが甘美に流れる。確かモーツァルトのピアノ協奏曲のはずだと思っていたのだが、勘違いか? ショパンだったっけ? だけど一番じゃないし、二番なんてあったっけ? そんな疑問が頭を駆けめぐったのだが、実は曲はモーツァルトのピアノ協奏曲第24番で間違っていなかった。しかしあまりに表現が甘美にすぎるので、以前に聴いたことがある同じ曲とはとても思えなかった。昨日の淡々とした23番とはまさに対極の位置にある。やりすぎると下品な演奏になりかねないのだが、そのギリギリのところで絶妙のバランスを保っている。これについてはとにかく驚きに満ちた初めて体験するモーツァルトであった。
続くブルックナーは冒頭の弦楽器から体がゾワーッとするのを感じた。弦の響きの厚み、管の響きの美しさ、すべての点で私の予想を超えていた。幾重にも重なった旋律が強烈なパワーを持って迫ってくる。ひたすらその大きな音楽に飲み込まれてしまった。私にとっては「長くて退屈きわまりない曲」のはずのブルックナーの交響曲を、最後まで集中力が途切れることなく興味が失せることもなく聴き通せることになった次第。私のブルックナーに対する思いこみさえも覆す中身の濃い演奏であった。
ハイティンクは御年86才とは思えないお達者ぶりで、足下もしっかりしている。何よりこの長大な曲を最後までこのテンションで振り通すのだからただ者ではない。演奏後の京都コンサートホールは爆発的な盛り上がりを見せ、会場からオケのメンバーが立ち去った後も拍手は終わらず、最後にハイティンクが再びステージに現れることになった。私がこのホールでは初めて見る熱狂ぶりであった。まさに巨匠ハイティンク健在なりをアピールするかのようなステージであった。
今年最高値のチケットであったが、それだけ以上の価値のある演奏であった。久々にライブを腹一杯堪能したという感覚である。
近くで夕食を摂る
コンサートが終わってホールを後にしたのは5時半頃。少し時間つぶしと共に夕食を摂りたい。というのもこのホールの隣にある植物園で現在夜間ライトアップのイベントが開催されているというのでそれを見学する予定。開催時刻は6時から。今回は最初からそのつもりでわざわざ重たい一眼レフをぶら下げてきたのである。とは言うもののこの近くの飲食店と言えば限られている。結局は以前にも入ったことのある進々堂で夕食を摂ることにする。注文したのは「リブロース黒胡椒ソース(2270円税込)」。
メニューに「フランスのカフェやビストロの定番アイテム」とあったが、だから大量のフレンチポテトなのか。サクッと揚がっていてなかなか美味いが、ここのレストランはパンの食べ放題も付くので炭水化物が多すぎるように思われる。さすがに今の私にはこれを全量食べることは無理だった。
植物園のライトアップを見学
夕食を終えた時には6時を回っていたので植物園のライトアップを見学に向かう。ライトアップのメインステージは温室周辺で、並木は琳派をイメージしたというカラーでライトアップされているが、私としてはどの辺りが琳派かはよく分からない。温室前にはヤノベケンジによるという風神、雷神、花の女神の像が立っているが、見事なほどに一貫性がない。ちなみにこの中の雷神は以前に豊田市美術館で見た記憶がある。
薄暗い中でライトアップがチラチラという独特の雰囲気がある会場だが、その中に立っていた像は神像と言うよりはモンスターのイメージ。オタク式で言えば使徒。どことなく不気味さを感じる。「恐い!」と泣き叫んでいる子供がいたが、それは正しい反応だ。
植物園の南口を出ると、真っ暗な中を北大路駅までトボトボ。そのままホテルに向かうのであった。
「機能的な」チェックイン四条烏丸で宿泊する
ようやくホテルに着くとチェックイン手続き。しかしこのホテル、部屋に入って驚いた。3畳間程度の和室にマットを敷いてあって、それで部屋はほとんど一杯。趣としては「天井の高いカプセルホテル。それでいて風呂トイレ付きで洗濯機まで置いてあるという「機能的」設計。閉所恐怖症のものなら圧迫感で苦しめられそうだが、前世がハムスターである私にはむしろ落ち着くスペースか。
大浴場で入浴してから部屋に戻ると急激に疲れが襲ってくる。布団の上で横になってテレビを見ている内に、いつしかウトウトとしてくるのである。
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