徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

東京フィルの「巨人」

関東遠征だ

 芸術の秋などと言うが、11月は来日オケのコンサートが目白押しである。とは言うものの、悲しいかなかなりのオケは東京でしかコンサートを行わない。と言うわけで、この週末は久々の東京遠征である。東京地区で開催中の来日オケのコンサートを中心に、併せて東京地域の展覧会を押さえたいとの考えである。今回は飛び石休になるが、例によって「赤と赤に挟まれると赤になる」というオセロの法則によって2日は有給休暇を取って無理矢理に四連休にした。

 出発は金曜日。当初は仕事終了後の出発予定だったが、諸々を勘案した結果、午後は休暇を取って昼から出発することにした。仕事をする時は徹底して仕事、遊ぶ時は徹底して遊ぶというのが私の信条である(後半は実践しているが、前半を全く実践していないというツッコミが周囲から聞こえてくる気がするが)。新幹線で東京に到着したのは夕方。まずは宿泊ホテルであるホテルNEO東京に立ち寄って荷物を置いてくることにする。それにしても上野東京ラインの開通で南千住のアクセスが便利になった。

 ホテルに荷物を置くとサントリーホールに向かう。そもそも今日の昼に出発することにした理由は、今日開催される東京フィルハーモニーのコンサートを聴きに行くため。今年になってからの遠征で東京地域のオケは大体聴いたのであるが、東京フィルは残った未聴のオケなのでこの際に体験しておこうという考えである。

 六本木一丁目に移動するとコンサートの前に腹ごしらえ。「杵屋」があるので「カツ丼定食(1050円)」を頂く。面白くもおかしくもないチェーン店であるが、東京地域の飲食店選びのセオリーの一つ「東京では下手な現地の店よりはチェーンの方が無難」に従った次第。これが東京と他の地域での飲食店の選択の仕方の根本的な違いである。

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六本木一丁目の「杵屋」

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カツ丼を頂く

 ゆっくりと夕食を済ませるとホールに移動する。現地に到着した頃に開場時刻となる。

 さて今日の演目だが、モーツァルトのピアノ協奏曲とマーラーの巨人である。なお当初の予定ではピアニストは中村紘子だったのだが、彼女はしばしガンの治療に専念するとのことで急遽の降板となり、代演に決定したのが牛田智大という次第。なお実は私は中村紘子の演奏を聴きたかったわけではない。と言うか、正直なところ中村紘子の演奏には全く期待していなかった。と言うのも私は彼女の演奏を30年以上前にN響のライブで聴いたことがあるのだが、それはそれはひどい演奏だった(当時まだ高校生だった私にさえあからさまに分かるぐらい)のが強烈に記憶に残っている上に、そのしばらく後にNHKで聴いた別の公演での彼女の演奏のあまりのひどさに再び絶句し、私の頭からは中村紘子というピアニストは完全に抹消されていたからである。それからの長い歳月を考えてみると、彼女の演奏はさらに衰えこそすれ、当時よりも良くなるべき理由は全く考えつかない。そういうわけで私は今回はマーラーを聴くのが目的で、ピアノ協奏曲は捨ててかかっていたぐらいなので、この交代はむしろ幸いである。

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ホール前で開場を待つ

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サントリーホール名物電子オルゴール

 

 

東京フィルハーモニー交響楽団第871回定期演奏会

指揮 渡邊一正
ピアノ 牛田智大

モーツァルト ピアノ協奏曲第26番ニ長調「戴冠式」
マーラー 交響曲第1番二長調「巨人」

 牛田のピアノであるが、実に軽妙と言う印象。もっとも軽すぎていささか深みがないきらいもなくもないが、この曲の曲調を考えると悪い演奏ではない。ただ前回に聴いた印象では、もう少し曲に表情をつけるピアニストというイメージを持っていたのだが、今回はやけにサラッと弾き流しているように感じられた。実際、アンコール曲では十二分な陰影をつけていたところを考えると、どうやらこの軽さは意図的なもののようだ。

 マーラーの巨人については、とにかく印象としては「非常に明るい演奏」というもの。この曲はマーラー特有のかなり屈折した感情などが反映している曲のように私は考えていたのだが、渡邊の演奏からはそういう屈託は全く感じられない。ややゆったり目のペースで奏でる第一楽章、第二楽章は極めて明朗に旋律を謡うし、重々しくて辛気くさい第三楽章でさえ、むしろユーモラスに聞こえてくる。さらには第四楽章は華々しいフィナーレになっている。正直なところあまりの音色の明るさに私は面食らってしまった。こういう演奏もありなのだろうが、私としては個人的には違和感が強い。

 

 さすがにマーラーになるとオケが大編成(16編成になっていたようだ)になるためにステージ上がかなり狭苦しく感じられた。これだけの大編成を自前でやれてしまうのが日本のオケの中でも最大の人員を抱えるこのオケの強みではあるが、おかげで料金が他のオケに比べるとやや高いようである。なお演奏技術については今回を聴いた限りではかなり安定しているように感じられたが、このオケ特有の魅力というものは今回だけではあまり見えなかった。

 コンサートを終えるとホテルに戻って入浴してから就寝。しかしやけに寝苦しい。どうも夕食が早かった上に抑え気味だったせいで低血糖気味になっているようだ。フラフラしながらジュースを買いに行くと、それを一杯口にしてから夜中に就寝するのだった。

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