翌朝は目覚ましは8時半にセットしていたのに7時半には目が覚めてしまう。今日のコンサートは7時から、昨日と同じオペラシティだが、その前にいろいろと予定が目白押しになっている。早めに行動を開始することにする。
まずは最初の目的地は府中。地下鉄銀座線、山手線、京王線を乗り継いでの移動となる。府中からはちゅうバスだが、とにかくこの美術館はアクセスが悪いのが最大の難点。
「マリー・ローランサン展」府中市美術館で12/20まで
マリー・ローランサン美術館の収蔵品を中心に、初期から晩年に至るまでローランサンの作品を一堂に展示。
ローランサンがあの有名なパステル調の形式を確立したのはかなり初期の頃のようだが、最初はフォーヴやキュビズムの影響を受けており、描線などに硬さが残るものになっている。それがあの独自のパステルの柔らかい画面を確立するが、晩年になると原色などの鮮やかな色彩が増えたややシャープさの増した画面になる。生涯にわたって進化し続けていたのがこの画家のようだ。
私は以前から、ローランサンの絵には同じパステル調でも何タイプかあるのを感じていたが、それが製作年代による差だということは今回初めて知った。私が「ローランサンにしては硬い」と感じていたのは初期の作品、「ローランサンにしてはやけに鮮やか」と感じていたのは晩年の作品であったということのようだ。なるほど、初めて合点がいった。これは収穫だ。
昼食は府中で
府中駅までちゅうバスで戻ると、次の目的地に向かう前に駅の近くで早めの昼食を摂ることにする。入店したのは「ベリーグッドマン」。ステーキの店ということだが、まあファミレス+αというようなところか。東京だったらこんなもんだろう。
日本民家園を見学する
昼食を終えると京王とJRと小田急を乗り継いで向ヶ丘遊園駅へ。ここはもう川崎市ということになるらしい。府中市は東京の西というイメージがあるのに対し、神奈川県川崎市は東京の南というイメージがあるから、関西人の私にとってはこの両市がこんなに近くにあるというのはどうも感覚的に理解しにくい。もっともここは川崎市といっても川崎市の北西端で中心部からはかなり離れた位置になるが。
さてここまでやって来たのは生田緑地にある岡本太郎美術館に立ち寄るため。バス停まで行くと1時間に1本程度のバスがまもなく到着するようなので、とりあえずはそれに乗車して生田緑地入口まで移動する。
○○入口という名前のバス停のお約束で、生田緑地はそこから結構距離がある。岡本太郎美術館の手前には日本民家園なる日本中の古民家を移築した博物館があり、岡本太郎美術館はその奥になる。ついでだから民家園も見学していくことにする。
この手の古民家を集めた博物館は、四国の四国村などがあるし、東京にも小金井にたてもの園が存在する。たてもの園は結構明治以降の洋風建物が多かった印象なのに対し、ここの場合はそれ以前の本当に普通の民家(と言っても庄屋クラスのお屋敷ではあるが)が移築されているようである。
合掌住宅や曲がり家など特徴的な住宅が並ぶ
地域別に分類されており、信州の建物を集めた地域には合掌造りが、東北のエリアに曲屋などが展示されている。また建物の保存のために囲炉裏に火を入れている建物も複数あった(これをすることで防虫など効果が出る)。
内部はかなり起伏があるので上がったり降りたりと結構歩く必要がある。最後の建物である船越の舞台なんかはかなりの高台にあるので登るだけでも大変である。
正門から入って、西門手前まで行って、そこから奥門まで戻ってきてそこから出るという形で園内を一周。奥門のところからしばし歩いた先に岡本太郎美術館がある。
岡本太郎美術館
私の訪問時には「岡本太郎と中村正義・東京展」を開催中。中村正義は日展で活躍した日本画家だったが、自らの芸術を求めて日展に反旗を翻す形で新しい運動を起こしていく。まさにそれまでの自分を否定するかのような行為だったのだが、実際に自身の過去の作品を破壊したこともあるようだ。そして彼は日本における現代アートの祭典とも言えるような「第1回東京展」を作るのであるが、元々体があまり丈夫ではなかったことから燃え尽きるように生涯を終えたようだ。この「第1回東京展」に関与した一人が岡本太郎とのこと。中村正義の作品については、晩年に行くにつれて一種の凄みのようなものが現れてくるのは感じられるのだが、それが好ましいかどうかについては別の話。
常設展の方は太陽の塔や明日の神話などを初めとする岡本太郎作品が多数展示されている。奇妙奇天烈な太郎ワールドだが、これはこれでやはり結構面白い。
現代アート系がハッキリ言うと嫌いである私は、岡本太郎に対しても以前は余り興味はなかったのだが、最近は何となく彼の作品からのメッセージ性のようなものが見えてくるようになってきた。とにかく言えるのは、彼の作品はただ出鱈目に作っているわけではないということだ。この辺りが単にスタイルだけの最近の作家とは異なるところ。
美術館の見学を終えると、民家園の合掌造りでなめこそばを食べていくことにする。まあそばは美味いんだが、今ひとつなめことの一体感がなかったのは残念。
本遠征の次の記事