体調悪化の中、何とかホールへ
翌日はいよいよ本格的に体調が悪化していた。これではコンサートに行くのがやっとで他に何かをするどころではない。結局はこの日は10時前にホテルをチェックアウトすると、そのまま神田に直行してそこのネカフェのフラットシートで1時前までゴロゴロして過ごしたのである。
1時前にネカフェを出るとキャリーを置くために東京駅に移動するが、生憎とロッカーはどこも満杯。最近は東京駅でコインロッカーが使えないことが増えて困っている。仕方なしに諦めて、キャリーを引いたまま初台まで移動することになる。オペラシティに到着すると、一昨日に夕食を摂った「築地食堂源ちゃん」で昼食に二色丼と牡蛎フライを注文。腹を膨らませてからホールに向かう。
生誕150年記念シベリウス交響曲サイクル
指揮:オッコ・カム
フィンランド・ラハティ交響楽団
シベリウス:交響曲第5番 変ホ長調 op.82
シベリウス:交響曲第6番 ニ短調 op.104
シベリウス:交響曲第7番 ハ長調 op.105
【アンコール曲】
シベリウス:
・アンダンテ・フェスティーヴォ
・ある情景のための音楽
・交響詩「フィンランディア」op.26
シベリウスチクルスの最終日となる今日は、シベリウスの後期交響曲3曲になる。一昨日の交響曲第4番から演奏の雰囲気が少々変わったことを感じたが、今日の演奏はその延長線上に位置する。初期交響曲の時よりも明らかに緊張感があって精度の高い演奏になっている。しかし昨日のヴァンスカの演奏のような激しさや厳しさのあるものと違って、もっとスケールの大きな朗々と歌うシベリウスという印象である。ああ、これが現地の人間の描くシベリウス像なのかなという説得力がある。複雑でやや難解さを秘めながらもスケールが大きくてゆったりとして温かさも持っている。北欧の大地がそこに展開するかのような演奏でもある。
アンコールは今日も3曲。初日の雰囲気からして最終日のアンコール最終曲は「フィンランディア」ではという予感はしていたが、予想通りに「フィンランディア」で来た。やはりこれなしにチクルスを締めくくるわけにはいかないだろうとでも言うところ。カムもいきなり何の説明もなく演奏を始めた辺りは「お待ちかね」と言わんばかり。これがまた素晴らしい熱演で、会場は見事なまでに興奮のるつぼに。最後は場内総立ちで拍手が続く中、一端引っ込んだカムが再びオケメンバーを引き連れてのカーテンコール。全員揃って深々と三度もお辞儀を繰り返し、場内もヤンヤの喝采となった。
ここまで盛り上がったコンサートは私も経験がない。しかもこれだけの感動を5400円×3で経験できたのだから、超ハイCPライブだったとも言える。今年の初めからこのコンサートに期待していた私の勘は正しかったようである。オペラシティの年間会員料金はそこそこにするのだが、十二分に元は取ったというのが本音。
コンサートの感動で心が熱くなっているが、体の方は風邪がいよいよ悪化して熱くなってきたようである。ここからは半ばフラフラしながら、ようやく新幹線で家にたどり着いたのである。
結局はシベリウス漬けの三泊四日であった。なかなかに中身は充実していたのだが、この時にひいた風邪はその後も尾を引いて、この週の社内発表はヘロヘロの体調で挑む羽目となってしまったのである。これは失敗。まあ私の人生そのものが失敗の集大成のようなものであるが。