翌朝は8時頃まで爆睡していたが、それでも体がスッキリしない。どうにも調子が悪い。結局はそのまま朝食も摂らずにチェックアウト時刻の11時まで部屋でゴロゴロとしている。
ホテルをチェックアウトすると朝食兼昼食をホテル近くの長崎チャンポンの店「十鉄」で摂る。野菜の多いチャンポンはこういう時にはありがたい。
昼食を終えると大阪へ。ただし開演の15時までは時間があるので、結局はネカフェのフラッとブースでゴロゴロして時間をつぶし、開場時刻になってからホールへ向かう。最近はどうもこういうだらけた展開が多くなった。
イングリット・フジコ・ヘミング&モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団
イングリット・フジコ・ヘミング(ピアノ)
ユーリ・シモノフ(指揮)
モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団
ショパン:ピアノ協奏曲1番ホ短調作品11
リスト:ラ・カンパネラ
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調作品64
フジコ・ヘミングについては「テクニックがヨタヨタなド下手な老ピアニスト」という評と「魂を揺さぶるような名ピアニスト」という両極端な評を聞いているが、今回その演奏を聞いてその理由が良く理解できた。テクニックという観点だけから見ればかなり危なっかしい面が多い。しかしながらその音色には非常に深いものがある。それが最も端的に表れているのが、二曲目のラ・カンパネラ。かなりのスローテンポで弾かれるこの曲は、もう全く別の曲と言っても良い内容。ただしなぜかそこに感動させられるものがある。
テクニックに比重を置いて聞く者には耐えられない演奏だと思われる。実際に暗譜が怪しいのか、時々後に控えた女性が楽譜を持って出てくることがあり、その度に明らかに演奏が気のそれたものになるということが何度かあり、特に第三楽章においては演奏が止まる寸前というかなり危ない場面もあった。こういう点を挙げればテクニックの衰えたド下手なピアニストとの評も妥当ではある。
なおこれだけテンポの揺れるピアニストに対してキチンと合わせてきたシモノフとモスクワフィルの技倆には感心させられた。
最後のチャイコの5番は、シモノフの計算とモスクワフィルの技倆がかみ合った凄い演奏。第一楽章をやけに抑えた調子で来るので、意外に地味な演奏をしてくると思っていたら、それは最終楽章のフィナーレに向けて徐々に盛り上げていくという大きな計算の元での演奏であったことが最後に分かった。ラストでは久しぶりに鳥肌が立った。シモノフもなかなかの巧者である。
ショパンのピアノ協奏曲の第一楽章が終了した途端に場内に大拍手が起こったのにはまいった。要するに客層が辻井や五嶋龍と類似しているということだろう。これではチャイコの5番は大丈夫かなと心配になったが、とりあえず何カ所かのトラップで大惨事が起こることがなく終わり、それには安心させられた(6番でなかったのが幸いか)。
世間的にはフジコ・ヘミングが主役のコンサートと認識されているのだろうが、私的にはシモノフの的確な指揮とモスクワフィルの技倆が印象に残ったコンサート。もう一度この組み合わせによるオケ曲だけのコンサートを聴いてみたいところ。もっともそれだと観客動員が期待できないのだろうな・・・。