徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

チェコ国立ブルノフィル大阪公演&「切り絵アート展」at 神戸ファッション美術館

 翌朝は目が覚めると8時過ぎだった。ホテルの周りは結構うるさかったのだが(夜中にパトカーが走り回ったり、今時時代遅れの珍走団らしき音が聞こえたりなど賑やかな地域である)、それにも関わらず結構爆睡していたようである。半分寝ぼけたまま昨日買ったサンドイッチを朝食に摂る。

 今日の予定だが、14時からザ・シンフォニーホールで開催されるブルノフィルのコンサートがメイン。後はその時の状況と体調次第である。ただ14時までホテルでボンヤリしているのも性に合わないので、その前に出かけるとする。

 向かったのは六甲アイランド。ここのファッション美術館で開催中の「切り絵アート展」を見学しようという考え。六甲アイランドは久しぶりだが、寂れっぷりはポートアイランドよりはまだマシというところか。しかしそれでも活気があるとは言い難い。

 

「息を呑む繊細美 切り絵アート展」神戸ファッション美術館で3/24まで

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 切り絵は絵画と違って、立体的な表現を用いたりできるし、また色のコントラストを明快に出したり出来るなどの特徴がある。そのような切り絵の特性を活かして十数人の作家が競演である。驚くほどの超精細な作品もあれば、木版画風味のザックリと長閑な作品もあったりなど、作家ごとの個性が光っている。

 しかしやはり目を惹かれるのは超絶技巧系の作品。異常に細かい細工には思わず絶句。ここまでやると確かに芸術としての一ジャンルではある。

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昼食をこの辺りで摂っていこうかと考えていたが、飲食店は日曜が休みのところや既にご臨終してしまっているところが多く、結局は適当な店を見つけることが出来なかったので大阪に移動してしまうことにする。

 

昼食はホール近くのそば屋で

 大阪に戻るとMETのムビチケを買うためにステーションシティシネマに立ち寄る。ついでに駅ビルをウロウロして飲食店を物色するが、こちらは六甲アイランドと対照的にどこもここも大行列で入店意欲を削がれる。それにどこもここも軒並みCPの悪そうな店ばかり。結局は大阪駅は諦めてザ・シンフォニーホール近くのそば屋「やまがそば」「そば定食」を頂くことに。結局は普段使いするならこういうタイプの店が一番手堅いということである。

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昼食のそば定食

 

チェコ国立ブルノ・フィルハーモニー管弦楽団

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[指揮]レオシュ・スワロフスキー

[ピアノ]アリョーシャ・ユリニッチ

[管弦楽]チェコ国立ブルノ・フィルハーモニー管弦楽団

【オール・チャイコフスキー・プログラム】

チャイコフスキー:歌劇「エフゲニー・オネーギン」より“ポロネーズ”

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番

チャイコフスキー:交響曲 第6番「悲愴」

 先週に東京で聴いたのはご当地もののドボルザークプログラムだったが、今回はご当地でないチャイコフスキープログラム。こうなるとご当地補正がない分、ブルノフィルのやや雑さのようなものがどうしても出てくる。ただそれでもこのオケ特有の元気の良さのようなものは魅力ではある。一曲目のエフゲニー・オネーギンはその元気の良さで押し切った感じ。

 ピアノ協奏曲については、ソリストと指揮者が必ずしもしっくりといっていない感もあったが(スワロフスキーがややマイペースである)、それでも全体としてはノリの良いまずまずの演奏であった。なおユリニッチについてはアンコールのドビュッシーの演奏がなかなかに魅力的。どちらかと言えばガツンガツンと鳴らすよりもこういう演奏の方がむくようである。

 「悲愴」については、このオケの弱点である弦の弱さ(下手というのではなく人数の少なさから物理的に音圧が弱い)が出てしまって、一楽章などは今ひとつ切実な緊迫感が盛り上がらない。ただ演奏自体は曲が進むにつれて良くなってきて、三楽章なんかはノリの良さもあってなかなかの演奏、最終楽章も弱点はあるもののそれでも感情のこもったまずまずの演奏であった。
 相変わらずスワロフスキーは爆演型でガンガンと突っ走るという印象。ブルノフィルのカラーとも相まって元気に満ちた演奏である。このカラーを考えると、悲愴よりは5番の方が良かったのではという気もする。

 

 大阪でのコンサートを終えると、ホテルに戻る前になんばに立ち寄ることにする。目指すは大阪高島屋。ここのグランドホールで開催されている浮世絵展に立ち寄るのが目的。ちなみに私は高島屋のカードを持っているので入場料が半額である(実はこのために以前に高島屋のカードを作った)。

 

「サンタフェ リー・ダークスコレクション 浮世絵最強列伝~江戸の名品勢ぞろい~」大坂高島屋で3/11まで

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 アメリカのサンタフェのリー・ダークス氏の個人的な浮世絵版画コレクションらしい。彼はアメリカ空軍服務後に新聞記者を経て、そこから経営に携わったとのことで、空軍士官として日本に駐留した時に日本美術に関心を持ち、本格的に蒐集を開始したのは2000年ぐらいからとのこと。それでよくもこれだけのコレクションを蒐集したものだと、その熱意と財力に感心する次第。

 コレクションはいわゆる欧米の浮世絵オタクのコレクションの例に漏れず、非常にコンディションの良好なものが多い。その内容は浮世絵初期の作品から末期まで幅広く、本展では北斎、広重などは特別コーナーを設けてまとめて展示してある。

 必ずしも有名どころの作品ばかりでなく、一般的には無名な絵師による作品も多いが、ズラリと並べると浮世絵版画が時代と共に進化を遂げてきた歴史が分かるという秀逸な構成となっている。北斎の「神奈川沖浪裏」などという定番中のド定番から、私も全く名前を聞いたことのない絵師の良品までバリエーションが広いので、ザッと見ていくだけでもなかなかに楽しめる


 それにしても日本国内では使い捨て感覚で消費されていた浮世絵版画が、海外のオタクによって大事に保存されて高く評価されることになったというのは、何とも皮肉な話である。そもそもこの国は文化というものに対する感覚が非常に鈍く、それは今でも続いている。やはりこの辺りはまだまだ貧しい国なのだと思う。

 

新今宮の老舗洋食店「グリル梵」でビフカツ定食を頂く

 高島屋にはもう用がないので(私は残念ながら高島屋でショッピングを楽しめるような富裕層ではない)、南海で新今宮に戻るとそのまま夕食のために新世界に繰り出す。腹も減っているし、気分としては洋食。と言うわけで久しぶりに「グリル梵」を訪問。例によって「ビフカツ」を注文する。ミディアムのビフカツが最高。やはりこれこそが正しい関西のビフカツ。

 

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裏通りの名店グリル梵

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ビフカツ

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このミディアム具合がたまらない

 夕食を堪能するとホテルに戻ってきて入浴。昨日は風呂には入れなかったのでようやくサッパリしたという感覚である。後は部屋でBDでガッテンなどを見ながらマッタリと過ごす。