徒然草枕

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大阪フィルの定期演奏会のライブ配信を聴く

 今日は午後7時より放送された大阪フィルの定期演奏会のライブ配信を聴いた。配信は山形交響楽団の時と同じカーテンコール。正直なところ嫌な予感がしていたが、残念ながら予感的中で、最初のハイドンは音量レベルが低すぎて良く聞こえない状態(しかも冒頭部は音声自体が切れていた)。しかも画質も荒く、止まることも多々。モーツァルトの時から音声レベルは何とかなり、ストラヴィンスキー以降は画質・音質共に安定した印象(それでも途中で1回止まったが)。

 開演前に井上道義によるトークがあったが、例によって脱線しがちで、挙げ句に国境を封鎖するのは馬鹿らしいとか、テンションが上がりすぎたのかついには「死を恐れるな!」とか言い出したので、オイオイこれはヤバいぞと思っていたら、さすがにストップがかかった模様(笑)。まあマエストロの気持ちはよく分かる。私なんかでも「パチンコを禁止しないくせにコンサート禁止なんて馬鹿げたことをするな! 献金の額で判断するんじゃねぇ!安倍の馬鹿野郎!」とか言いそうだし(笑)。

 

大阪フィル第536回定期演奏会

指揮:井上道義
ヴァイオリン:アイレン・プリッチン

ハイドン/交響曲 第2番 ハ長調 Hob.Ⅰ:2
モーツァルト/交響曲 第5番 変ロ長調 K.22
ストラヴィンスキー/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調
ストラヴィンスキー/バレエ音楽「春の祭典」

 

 ハイドンは残念ながらまともに聞こえなかったのでモーツァルトから。

 モーツァルトのかなり初期の作品になるのだが、さすがにモーツァルトらしく完成度の高い曲。弦楽のアンサンブルが軽妙かつ美しいが、それを近年アンサンブル力の向上がめざましい大フィルが美しく奏でる。

 プリッチンをソリストに迎えてのストラヴィンスキーの協奏曲は、音色は非常に現代音楽的なのであるが、意外にシンプルで軽快な曲調はどことなく古典派の音楽を思わせて、それがあえてハイドンやモーツァルトと組み合わせた理由のように感じられる。

 プリッチンが演奏後のインタビューで、オケとの掛け合いが云々という話をしていたが、確かに室内オケとソリストの対話のような場面が多々あり、それが音楽全体の緊張感を高めている。しかしこの辺りも今回の大フィルに揺らぎはなかった。またメロディラインがハッキリせずテンポも独特で難曲と思われるこの曲を、ソリストのプリッチンは抜群の安定度で演奏していた。この辺りは実に見事と言うべきだろう。

 さて休憩後のメインである「春の祭典」。井上はキレッキレッではあるが、野放図にブンチャカ鳴らすのではなく、抑制もかけてアンサンブルをキチンとまとめてきたという印象。だから雑にならない演奏。そもそものバレエ音楽らしく「踊れる」演奏でもある(まあ指揮者の井上は実際にタコ踊りしてるけど(笑))。ただ単に爆音で鳴らすだけなら簡単なんだが、井上の組み立てた音楽をはそんな単純なものではなかった。また現在の大フィルはその井上の要求に応えるだけのレベルに到達しているのが感じられた。爆発的エネルギーを秘めながらも端正な演奏と言うことで、これがハイドンから始まった今回のコンサート全体のコンセプトにつながるのかと感じた次第。

 

 休憩時間にソリストのインタビューをしたり、井上道義の楽屋裏トークがあったりなど、通常のコンサートでは出来ないサービスをしようという精神が見事であった。非常事態を逆にチャンスにつなげようという発想は、良い意味での大阪らしい。実際に今回の配信は大阪フィルのファンを増やす効果は確実にあると感じられた。

 次回の定期は4/10で尾高によるミサ・ソレムニスだが、それまでに事態が正常化していることを祈るのみ。そうでないとさすがに音楽界全体が限界になる。