徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

麒麟がくる、一気見

 お籠もりついでに今まで録りだめていた「麒麟がくる」を一気見した。話は序盤の佳境である斎藤道三の最期の前夜というところまでであり、どうやら次回に道三は死に、光秀は熙子を背負って明智城から逃亡することになりそうである。

 この辺りは光秀の人生については全く何の記録も残っていない時代になるので、脚本家が好き勝手に話を作っているのだが、一応話自体は通っていてまずまずまとも。ここ数年のひどすぎる大河の中ではこれは画期的かもしれない。

 もっとも見ているとツッコミ入れたくなる箇所も多々あったので、まずはツッコミを列挙しておくか。

 

1.いろいろな事件に影でからみすぎの光秀

 まあ大河の主人公には付きものなので仕方のないところではあるが、織田と今川の合戦から畿内での将軍周辺の争いまで、あらゆるところでなぜか光秀が関与することになってしまう。早々と信長と面識を持っている上に将軍にまで直接会って「お前がしっかりしないから世の中がまとまらないんだ」というハッパをかけてしまったり(直接に言ったわけではないが)などのスーパー過ぎる活躍。まあ江ちゃん10才が神君伊賀越えに同行するよりはまだマシだが、最近のファンタジー大河っぽくて気にはなる。

2.光秀しか側近のいない嫌われ者の道三

 道三が何かと言えば光秀ばかり重用し、他に側近はいないのかと思わせる内容。もっとも息子と争った時に道三側に付いたものがほとんどいなかったので、領内で家臣に人望がなかったのは確かにそうなのかもしれないが、明確に道三に付いてたのは露骨に媚び売っていた光秀のおじさんぐらいしかいないみたいで、何かことあればまだガキだった光秀に頼っていたように見える。しかも土岐頼芸を追放する話で、光秀に「どちらかと言えば嫌いです」と断言された時にもろにショックを受けたようにしか見えなかったツンデレ親父でもある。

3.突然に熙子にプロポーズする光秀

 いきなり初対面(一応幼なじみ設定)の時から、「サクラ大戦の真宮寺さくらでもここまで媚び媚びではなかった」と感じるぐらい露骨に媚び媚びで登場の熙子。しかもいきなり昔の結婚約束まで引っ張り出してくるという猛アピール。正直ドン引きしても良さそうなのに、なぜか光秀がポヤーンとしているなと思ったら、二回目の登場でいきなりのプロポーズ。思わず「!?」

 

4.光秀に振られた途端に大物にモテモテのお駒

 光秀にからむ少女として、マチャアキの助手のお駒がいるが、光秀を取り巻く女性は正室の熙子だけで側室もいなかったということが「記録」に残っているので、登場時から振られることは確定していた。予定通りに唐突な熙子の登場で見事に振られているが、途端に今まで女性として見られていなかった節がある彼女が急にモテモテ。以前から挙動の怪しかった菊丸(女性の敵・岡村隆史)だけでなく、突然登場した木下藤吉郎(後の豊臣秀吉)は露骨に色目を使うし、松平元康(後の徳川家康)までポヤーンとしている状況。どれだけ大物にもてるねん。

5.策のない道三に策士すぎる帰蝶

 最初に織田信秀を打ち破って以来、策らしい策を見せないマムシの道三に対し、娘の帰蝶が何かと策士すぎ。信長と道三の面会を裏でお膳立てし、義龍が家督を継いでからは影で弟を焚きつけて、結果としては道三が滅ぶきっかけを作ってしまったことになる。一方の道三は帰蝶に一方的に踊らされているだけのようにも見える。もしかしてこの作品の斎藤道三は「殿といっしょ」の斎藤道三か?

      

6.父子関係の悪すぎる奴らが多すぎ

 話の核の一つである道三・義龍の親子が最期は殺し合いにまでなる関係だからなのかもしれないが、番組に登場する父子がことごとくうまくいっていない。信長は父の愛情を求めながら父に愛されなかった中二病息子として描かれているし、家康まで「父のことは嫌いだったから別に殺されても恨んでいない」と明言しているし(もしかしたら、今後同じことを今川氏真が言う場面があるかも)、主人公の光秀においてはそもそも父親がいないという状態。三谷幸喜が、女性不信のせいで女性をまともに描かないと言われていたが、この作品の作者も父子関係に何か思うところがあるのではと感じてしまうぐらいの極端さ。

 

 まあ初期の目に突き刺さる色彩はいくらかマシになったようだし、光秀の馬鹿っぽすぎる演技(初期の設定は10代ぐらいだろうから、若者と言うよりも馬鹿者になってしまっていた)あたりも光秀の年齢が上がってきたことで落ち着いてきた。また庶民派的でありながら奥深い危なさを感じさせる信長など、なかなかに斬新な描き方のキャラクターなども見える。ツッコミ所はあっても目下のところ決定的な破綻もなく、久しぶりに「見る気のする大河」になっている。これからしばし光秀浪人編に突入すると思われるのだが、ここをどういう描き方をするか。それと作品全体としては本能寺の変をどれだけ説得力を持って描けるかが勝負所となりそう。

 それはそうとコロナの影響はこの作品にもそろそろ及びかけているとのことで、それでなくても沢尻容疑者の件での撮り直しとかでドタバタしたので、スケジュールがかなり厳しく、途中で打ち切りという可能性も囁かれているとか。下手したら、話が途中までで終わって、最期は主人公がナレ死なんて可能性も・・・。それとも信長の家臣となった光秀が空を仰ぎながら「麒麟がくる世の中にするぞ」と呟きながら「俺たちの戦いはこれからだ」で終わるのかも・・・。キングダムも4話で放送中止になってしまったし、いよいよこっちの世界も洒落にならなくなってきた。