徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

ロンドン交響楽団のライブ配信で、ユジャ・ワンとティルソン・トーマスの演奏を

 5/7に配信されたユジャ・ワンをソリストに迎え、マイケル・ティルソントーマス指揮によるコンサートをYouTubeで視聴。

ロンドン交響楽団コンサート

指揮:マイケル・ティルソン・トーマス
ピアノ:ユジャ・ワン
ロンドン交響楽団

コリン・マシューズ 隠し変数
ガーシュウィン ピアノ協奏曲
ショスタコーヴィチ 交響曲第5番

 コリン・マシューズは現代音楽家であり、ロンドン交響楽団の提携作曲家も務めていたという。だからロンドン交響楽団は彼の作品に通じており、ティルソン・トーマスも彼の曲を初演したことがあるらしい。そういう経緯があるからか、よく分からない音楽ながらも「気心知れた」という感があって、演奏に安定感があるのが感じられる。

 ガーシュウィンのピアノ協奏曲は、かなり伝統的な形式に則った曲という印象を受ける。ただクラシックの範疇にはあるものの、映画音楽的にジャズ的にも聞こえ、官能的な部分もある音楽である。それに対してユジャ・ワンの演奏であるが、例によってかなり技術が前面に出るところのある演奏。相変わらず本人の外観に反して演奏自体はやや色気に欠けるところがある。しかしバックのティルソン・トーマスがその学者的風貌に反してかなり色気のある演奏をしている。ロンドン交響楽団の弦などがしっとりと魅惑的に演奏し、トータルとしては非常にバランスの取れた名演となった。

 さてショスタコーヴィチだが、冒頭からやけに軽く始まるのには拍子抜けた。終始一貫言えるのは優美とさえ感じるような雰囲気。ショスタコのこの曲は冒頭から叩きつけるような悲しさ一杯の演奏をする者も多いのであるが、ティルソン・トーマスの演奏にはそのような影は微塵も感じられず、終始明るいといっても良いような普通に叙情的な演奏である。ゆったりとしたテンポでゆったりと謳わせるのは全体を通じての話であり、最終楽章もやけくそのような空騒ぎでも、華々しい勝利のファンファーレでもなく、普通に美しい音楽で一貫している。とにかく最後まで全く影が差さない。

 これもありなのかもしれないが、私としては冒頭の「拍子抜け」という感覚を最後まで引きずってしまったというのが本音。果たしてこれがショスタコなのかと言った時には、少々疑問は残る。