コロナに厳戒の上で大阪に出向くことに
コロナの流行が一段落した(ということになって)、不安全開のままとりあえず経済活動が動き出した。となったところでいよいよオーケストラの活動もおっかなびっくりで再開の模様である。とりあえずこの週末、大フィルと関西フィルから規模縮小の上で定期公演を開催するとの連絡が入ってきた。さてどうするかが問題だが、再開されるとならやはり行ってみたいというのが人情である。この週末に大阪に繰り出すこととした。
とは言うものの、まだまだ大阪は危険地域である。やはり万全の対策を取っておくべきだろう。危険ファクターは何かを考えた時に、やはり圧倒的に危険度が高いのは移動の列車である(にもかかわらず、なぜか政府は通勤電車では感染しないという謎設定を死守しているが)。そこで大阪訪問では極めて異例であるが、全行程を車で移動することにした。またマスクを装着するのは当然として、消毒液のスプレーおよび殺菌用ウェットティッシュも用意している。
さて車で移動となると費用のことを置いておいても、駐車場の確保が問題となる。そこで私はフェスティバルホール友の会特典を利用して、ホール近くの駐車場を予約することにした。会員特典で3時間1000円で近隣の契約駐車場が利用可能。この特典を使用するのは初めてである。まさかフェスティバルホールに車で行く事態などないと思っていたから、こんな特典なんてまず使うことはないと考えていたのだが・・・。まあとにかく会費の元が少しでも取れたと考えよう。
金曜日の仕事を終えると高速を大阪まで突っ走る。電車通勤を自動車通勤に切り替えた者が多くいるというが、そのせいか夕方の阪神高速は渋滞でとにかく走りにくい。こうなるのを想定して今日は早めに仕事を切り上げていて正解だった。とりあえず駐車場は6時から借りているのだが、現地に予定よりやや早めに到着したので、途中の道路脇に車を止めてこの原稿を車中で入力している(笑)。車窓の外にはオフィスから帰宅するらしきビジネスマンがゾロゾロ歩ているのが見える。総理は「国会やってたらいろいろと突かれたくないところを突かれるから嫌」とさっさと国会を閉じて逃げ出したが、この状況下でもビジネス戦士は命がけで使命を果たしているわけである。その内に時間が来たので駐車場に車を入れる。
車を置くととりあえずホールへ向かう。座席は早い者順で指定の座席に切り替えだという。だからやや早めに出てきた次第。私が当たったのは番号から見るとホールのやや端の方だが、まずまずの席である。早めに来たのが正解。
夕食を摂ってから厳戒態勢のホールへ
座席を確保するととりあえず夕食を摂っておくことにする。立ち寄ったのは数ヶ月ぶりの「キッチンジロー」。ハンバーグとエビフライのランチで1000円。特別に美味いというほどのものではないが、CPは良い。私の場合はここにフェスティバルホール友の会特典でコーラがつく。ソーシャルディスタンスを保った席でとりあえず夕食。
夕食を終えるとホールへ入場。ホール係員は全員マスクにフェイスガードに手袋という重装備。入場ゲート奥ではサーモグライフィらしき装置が控えて観客を監視している。発熱している観客がいれば、ここで捕獲退場となるのだろう。時間ギリギリに汗かきながら走ってきたらアウトになりそうである。
ステージは拡張用ステージも用いて、そこにオケを閑散配置している。さすがにフェスティバルホールのステージは広いのが幸いして、弦五部はほぼフル編成が乗っている。ただし管楽器は少なめ。曲目をベートーヴェンに切り替えたのは、管楽陣を縮小するためだろうか。確かに一番飛沫が飛ぶのは管楽器だろうし。ちなみに弦楽奏者及びティンパニはマスク着用。
大阪フィルハーモニー交響楽団 第539回定期演奏会
指揮/大植英次
曲目/ベートーヴェン/交響曲 第4番 変ロ長調 作品60
ベートーヴェン/交響曲 第5番 ハ短調 作品67「運命」
バーンスタインプログラムからベートーヴェンのオーソドックスな交響曲に変更。4番は12編成で、5番は拡大して14編成で演奏した。
ベートーヴェンのこれらの交響曲については、ピリオドアプローチなども最近は流行であるが、大植のアプローチは当然のように現代アプローチ。かなり派手気味の演奏となった。
大フィル自身が元々精緻なアンサンブルを誇るというタイプのオケではないが、今回はアンサンブルを取りにくい閑散配置もあってか、そっちの方はやや雑とも取れるような部分もあった。しかしその代わりにとんでもないパワーでノリノリの演奏。大植が抑制をかけずに勢いで突っ走るタイプなので、それにオケが乗っかった雰囲気が濃厚。
第4番はいかにも楽しげな印象。オケも大植も演奏をできる嬉しさに満ちたかのような生き生きとした演奏である。少々雑になろうが、お構いなしでとにかく元気元気である。生命感に満ち満ちている。
第5番は最初からかなり気合の入った演奏だったが、一番凄まじかったのが最終楽章。一切の抑制をかけずに暴走寸前の演奏。音が割れようなアンサンブルが怪しくなろうがそんな些事には構わないと言わんばかりの怒涛の音楽である。とにかく演奏の巧拙などという次元を超えた感情がさく裂した演奏であった。
久々のフルオーケストラの熱演を堪能した観客は、爆発的な盛り上がりを見せた。感染予防の観点でブラボーなどの声出しは禁止されていたが、場内に観客が半数も入っていないと思えないほどに熱烈な拍手が。最後には引き上げようとした大植を引き留めるかのように大勢が立ち上がっての熱烈な拍手に、大植も感極まったらしい様子を見せる一場面も。
まだまだとても今後を楽観視できる状況ではないが、これから正常化に向かって進んでいけばありがたいところである(・・・が多分無理だろうという予感はしている)。今後も紆余曲折はあるだろうが音楽の力を信じたい。
なおプログラムに来月の公演のことが載っているが、やはりスダーンは来日不可で、飯守泰次郎が代演の模様である。プログラムはそのままらしいので、どうやらブルックナーをするつもりのようだ。ということは、次回はここからさらに金管を大幅増員するということか。まあフェスティバルホールのステージはかなり広いので、まだ増員できるスペースはあったように思うが。
宿泊した新今宮はいつにもなく閑散としていた
コンサートを終えると駐車場に車を取りに行く。明日は関西フィルのコンサートがあるので、今日は大阪で一泊するつもり。宿泊は例によって新今宮であるが、さすがに時世柄風呂トイレ共用には抵抗があるので、今回は風呂トイレが個別にあるというこの界隈では最高級クラスになるホテル中央オアシス(と言っても宿泊料は4~5000円程度なのだが)に宿泊することにしている。ちなみに駐車場も併せて確保済み。
中之島から新今宮までは20分程度御堂筋線を南下。時間が遅いせいか車はそう多いというほどではない。久しぶりの新今宮は今まで見たことがないほど閑散としている。まずはこの界隈を大勢うろついていた海外からのバックパッカーが壊滅状況だが、それだけでなく日本人も極端に少ない。いつもは外国人宿泊客でにぎわっているオアシスも、客の姿をほとんど見ない。部屋に荷物を置いてから買い物に出たが、向こうに見えるジャンジャン横丁は今まで見たことがないぐらい閑散としている。この界隈に多いカラオケスナックは三密対策で戸を開けているせいか、街路にカラオケの音がかなりうるさく漏れている。
ホテルに戻ると長距離運転のせいもあってかなり疲れが出てきたので、早めに就寝することにする。