2週ごとにプログラムを変更して順次無料配信されているN響の過去の名演集であるが、第3弾は井上道義による幻想交響曲が配信されたのでこれを視聴。あの有名なおどろおどろしい曲を井上がいかに演奏するか。
明電舎 presents N響名曲コンサート 2019 (2019年7月2日 サントリーホール)
指揮:井上道義
ベルリオーズ/幻想交響曲 作品14
井上道義らしい非常にロマンティックな幻想交響曲というか、テンポ変動から強弱変動まで非常に激しい、実にネットリぬっちょりした演奏である。初っ端から井上のタコ踊りが絶好調なのであるが、N響がそれに合わせていつにもない粘度の高い演奏を展開する。
第一楽章などはもう冒頭から終始、ひたすらネットリぬっちょりで、歩いていたら蹴躓くんではないかというような印象だが、これはこれで面白い。第二楽章も舞踏会が納豆の糸を引いている。第三楽章はゆっくりと抑えめで進行、中盤以降におどろおどろしさが増してくるのであるが、ここでの表現は結構激しくはあるが、おどろおどろしさは意外に抑え気味。それよりは結構美しく謳っている。そして終盤には嵐の前の静けさ。
次の第4楽章は怒濤のような行進曲。ここは勢いに任せて突っ走ったという印象。終盤に井上が指揮棒で首をはねるような仕草をしていたのが印象に残る。悪魔の饗宴となる最終楽章は初っ端から怪しさ全開である。ややおどろおどろしく始まった曲は、徐々に盛り上がって大狂宴となる。そのまま一気にラストまでである。
クールで淡泊と言われているN響からこれだけの粘っこい演奏を引き出すとは流石に井上道義と言うところか。まあやはり幻想交響曲はこれぐらいおどろおどろしい方が面白い。