徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

お知らせ

アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

足立美術館に立ち寄ってから美術館最寄りのさぎの湯温泉に宿泊

 ようやく一息ついたところで次の予定へ。当初予定は山城巡り(今回の遠征では当初は尼子十旗の山城を攻略するつもりだった)だが、体の状態が最悪の上に天候も最悪というわけで今日は美術館巡りに徹するつもりでいる。今日の宿泊予定は足立美術館隣のさぎの湯温泉なので足立美術館に向かっても良いのだが、今から直行だとさすがに旅館のチェックイン時刻までに足立美術館でつぶす時間が長すぎる。そこでかなり久しぶりの奥出雲の美術館を目指すことにする。

 カーナビにルート選定を任せたら、かなりの山道を延々と走らされる羽目になってしまった。どうしてこのカーナビは以前からこういう道が好きなんだろうか? 今までこのカーナビのせいで不必要にマニアックな道を走らされたことが何度かある。

 

「戦後75年 いま安来から世界へ 加納莞蕾が求め続けた恒久平和」加納美術館で9/28まで

f:id:ksagi:20200920080242j:plain

加納美術館

 フィリピン日本人戦犯釈放運動に取り組み、世界の恒久平和を目指していた加納莞蕾の歩みを紹介するとともに彼の作品を展示。

 彼の戦争画の複製も展示されているが、従軍した彼が描いたのは他の画家のような戦意高揚のための格好いい絵画ではなく、傷つき倒れた兵隊の姿だった。これが彼の戦争への対応の原点だったという。

 戦後フィリピンでの戦争裁判では、多くの日本兵が何の罪を問われているかもよく分からないまま現地の復讐感情の元に死刑判決を受けたという。その中で加納莞蕾はフィリピンのキリノ大統領(彼自身が日本軍の攻撃で妻と子供を失っている)に対して戦犯達の救済を求め続けた。最終的にはキリノ大統領による赦免で日本人戦犯は救われたようだが、それと共に加納莞蕾は自らが世界の恒久平和を託されたと考えたという。

 加納莞蕾の絵画自身はフォーヴの影響を濃厚に受けたもので鮮烈な色彩などに特徴がある。初期のかなりカッチリした画風から、時代の進展とともに大胆な画風へと変化したことが伺える。

 なお同館には加納莞蕾の長男の加納溥基氏のコレクションの陶磁器なども併せて展示されており、これらの中にも面白い作品は多い。


 加納美術館の見学を終えると足立美術館への移動はそう時間がかからない。途中で月山富田城の対岸を通るが、見事な城跡に心がグラッと動くが、さすがに体調はともかく今日の天候での挑戦は無謀というものである。今日は朝の時点での計画通り美術館だけにしておくことにする。

 足立美術館の駐車場に車を入れる。ちなみに今日泊まる旅館の駐車場も足立美術館のものを使ってくれとのことだ。

 

「秋季特別展 日本画ベストアーティスト10」足立美術館で11/30まで

f:id:ksagi:20200920082731j:plain

足立美術館

 日本画を代表する10人、横山大観、竹内栖鳳、川合玉堂、菱田春草、上村松園、橋本関雪、安田靫彦、川端龍子、榊原紫峰、伊東深水の作品を展示。十人十色の作風がなかなかに面白い。やはり私的には感覚が合うのは菱田春草、上村松園、橋本関雪辺り。


 本館を一回りしたところで、レストランに入って一息つくことにする。やはり今日は完全に体力が尽きている。いつもは予算節約のためにこういうのはなるべく避けるのだが、今回はその余裕がない。ケーキセット1100円というのはさすがに高価(と言っても、自称叩き上げの苦労人の3000円のパンケーキには及ばんが)だが、庭園を眺めながらお茶をするというのもたまには良かろう。

f:id:ksagi:20200920080611j:plain

高級ケーキセット

 この美術館の大きな魅力の一つはやはり日本庭園だろう。いつ見ても実に絵になる庭園である(実際に絵画に見立てている)。展示作の方は正直なところこの美術館は既に何度も訪問しているのでよく知っている作品が多い。

f:id:ksagi:20200920080814j:plain

さすがの庭園である

 以前に訪問した時には工事中だったカ所に新たに魯山人館が建ったようである。もっとも魯山人の器に関しては以前から「料理を持っていない魯山人の器は未完成状態である」と感じているので単独ではあまり魅力は感じない。むしろそういう制約のない壺など方が面白いようである。

f:id:ksagi:20200920080851j:plain

ここは以前は工事中だった

 新館では全館を使用して横山大観の作品をほぼ年代順で展示していた。それをズラッと眺めていくと、朦朧体と批判されて苦しんだ若い頃、画風も固まって技術的に一番乗ってきた40~50代ぐらい。そして精神的な深みが増してきた最晩年期というように画風が変遷しているのが分かる。私的には最晩年の円熟した境地の作品が一番惹かれるのを感じる。

 

さぎの湯温泉で宿泊

 美術館の見学を終えるとそのまま車から荷物を取り出して旅館にチェックインすることにする。今日宿泊するのはさぎの湯温泉「竹葉」。以前から足立美術館を訪れるたびにこの温泉街の存在は気になっており、いつかは宿泊する必要があると感じていたのであるが、今回念願かなって初宿泊である。

f:id:ksagi:20200920081255j:plain

足立美術館自体が温泉街の中にある

f:id:ksagi:20200920081334j:plain

竹葉は足立美術館の隣

 部屋は普通の旅館の部屋。一応Wi-Fi完備でそこそこの速度が出ている。テレビは残念ながらBSはなし。冷蔵庫もあるし部屋の設備はそろっている。トイレが共同というのだけが気になる人もいるかもしれない。

f:id:ksagi:20200920081520j:plain

旅館の和室

 

温泉を堪能してから地場名菓で一服

 部屋に入るとまずは入浴である。男女別の浴槽と貸切風呂がある。泉質は含弱放射能・ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉とのこと。かけ流し浴槽であり、強烈な浴感はないがじんわりと温まる湯。非常に快適である。

f:id:ksagi:20200920081624j:plain

内風呂

f:id:ksagi:20200920081655j:plain

露天風呂

f:id:ksagi:20200920081724j:plain

これが貸切浴場

 入浴を終えるとまたもやワーケーションである。ただその前に足立美術館前の売店で買い求めた地元菓子を賞味する。若草は羽二重餅に白梅粉をまぶしたようなものでなかなかに私好み。朝汐の方は普通の薄皮饅頭だが、皮に山芋を使っているのが分かる。餡もあっさりした風味でこれまた私好み。明日、土産品として買って帰ることにする。

f:id:ksagi:20200920081812j:plain

今日のおやつ

f:id:ksagi:20200920081835j:plain

若草の中は餅

f:id:ksagi:20200920081951j:plain

こちらは朝汐

f:id:ksagi:20200920082026j:plain

いわゆる薄皮饅頭

 

夕食はかなり美味い

 原稿執筆に必死になっている間に気付いたら夕食の時間。準備が整ったとの呼び出しがあるので食堂へ。一見しただけで非常に美味そうである。

f:id:ksagi:20200920082151j:plain

夕食の会席

f:id:ksagi:20200920082220j:plain

このカレイの煮つけが美味い

f:id:ksagi:20200920082254j:plain

豚肉の蒸し焼き

f:id:ksagi:20200920082353j:plain

天ぷら

f:id:ksagi:20200920082420j:plain

カニの味噌汁

f:id:ksagi:20200920082443j:plain

フルーツ

 実際に食べてみると予想していたよりもさらに美味い。そして驚いたのがご飯の美味さ。この近くの農家で作っている無農薬米だとのこと。ご飯が美味しすぎてつい食べ過ぎそうになる。結局、何杯ご飯を食べたろうか。

 満足して夕食を終えると再び入浴してからまたワーケーションでこの夜は更けていく。

次の記事

www.ksagi.work

前の記事

www.ksagi.work