徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

年間チケットを購入して、ペトレンコとベルリンフィルのショスタの8番を視聴

デジタルコンサート年間視聴券を購入

 ベルリンフィルデジタルコンサートホールからBDとDVD付けるから年間視聴券を18500円で販売するので買ってくれとのDMが届いた。正直なところ特典のBDとDVDにはそれほど魅力を感じないものの、現状で毎月1900円/月(ユーロ相場によって多少上下する)程度を払っている状況を考えると、このまま1年ぐらい視聴するんだったら、今後ユーロが暴落でもしない限り単純に得になりそうな。まあ今のところ「元が全く取れていない」なんて言いつつも、結局はこのままズルズルと多分最低1年は視聴継続するだろうと考えたら、まあこれに乗るのも良しかということで契約した。

www.digitalconcerthall.com

 ところで既に月極契約している者はどうなるんだ? と思っていたら、その場合は自動的に月極契約が1年間停止するということをサイトに「日本語で」キチンと掲載してある。全く至れり尽くせりである。それにしてもベルリンフィル、完璧な日本語サイトまでキチンと用意してあるのは流石だと思う。私のように「外国語に著しく不自由している者」にはたとえ英語サイトがあってもハードルが高いところだが、ここみたいに日本語サイト(それもありがちな変な翻訳語でなくて自然な日本語)があれば、契約したりするのもハードルが極めて低くなる。やっぱりこの辺りはグローバルビジネスしているところは違うもんだと感心する。

 というわけでこれからさらに1年間こことつきあうことにしたところで、元を取るためにまたプログラムを1つ視聴。今回はペトレンコが指揮したショスタコーヴィチ交響曲第8番の無観客ライブ。11月半ば頃の公演だが、前回のバレンボイムの「わが祖国」の時はかなり閑散としてきていても観客を入れていたのだが、無観客ライブになったということは、ドイツのコロナ状況悪化で観客を入れての公演が再び難しくなってきたか。恐らく年間ディスカウント券の発売もそういう状況を反映してのことと推測される。なお販売は1/3までとのこと。

 

ベルリンフィルハーモニー管弦楽団デジタルコンサート(2020.11.13)

指揮:キリル・ペトレンコ

ショスタコーヴィチ 交響曲第8番ハ短調

 ショスタコの8番は私にとって馴染みのある曲とは言い難いが、とりあえず冒頭から第1楽章自体はあの有名な第5番にかなり似ているのが印象に残る。重苦しい低弦に悲鳴を上げるような弦楽セクション、時折咆哮を上げる管楽器というショスタコの非常に聞き慣れたパターンが登場する。

 ペトレンコの指揮は例によって切れ味鋭い。非常に明快で簡潔でもある。ベルリンフィルの技倆も相まってスパッと斬り込んでくるようなエッジの効いた演奏となっている。

 曲調は楽章が進むにつれて混迷していくようなところがある。ショスタコはこの次の交響曲第9番で世間の期待を見事に裏切る軽快で簡潔な作品を持ってくるのだが、そこにつながる片鱗は既に随所に覗えるようになってきている。もっとも曲調自体はかなり重苦しく、最後は息を引き取るかに思えるような終曲でもある。

 切れ味鋭いペトレンコの指揮にかかると、このような混迷した曲でも音楽自体が非常に明快に伝わってくるのは流石である。この作品は表現の点で非常に難解な曲に感じられるが(下手に演奏したらただのグダグダに終始して眠いだけの曲になりそう)、その点はペトレンコとベルリンフィルの組み合わせのレベルの高さに感心させられるところ。もっとも私としては「楽しむ」というところに行くまでには、もう少しこの曲について私自身が慣れる必要がありそうだが。ただし本演奏を聞く限りにおいては決してハードルは高くない。