徒然草枕

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ラトル指揮のロンドン交響楽団のライブ配信でマイナープログラムを

ロンドン交響楽団は収録映像をライブ配信中

 イギリスは新型コロナの感染の広がりなどで大変な状況になっているようで、ロンドン交響楽団もコンサートを開催できない状況になっているので、1月以前に収録した演奏をライブ配信している模様。公開から一週間は無料で視聴できるとのことなので、これを視聴することにした。

www.marquee.tv

 なおロンドンではさらに状況が悪化しているのか、この収録さえも1月の途中で中断された模様。閉鎖空間にオケの団員が集まって演奏をするという行為そのものが出来なくなっているようである。イギリスが正常化するのはまだまだ遠そうである。

 今回はマイナー曲ばかり。ラトルらしいチョイスと言う気もするが、私としてはいずれも初めて耳にする曲ばかりである。どころかヒナステラとジェラールについては作曲家の名前さえ知らず、ジェラールに至ってはGerhardと記載があったので、ゲルハルドだと思って調べたのだが該当がなく、英語版と日本語版のwikiを付き合わせてようやくジェラールと分かった次第。

 

ロンドン交響楽団ライブ配信(セントルークスでの収録)

サー・サイモン・ラトル指揮

ドヴォルザーク セレナーデ ニ短調
ヒナステラ ヴァリアシオン協奏曲
ジェラール ドン・キホーテからダンス
ドヴォルザーク アメリカ組曲

 最初のドヴォルザークのセレナーデは、やや古典的な響きさえ感じる非常に明快な曲。旋律線がハッキリしているのはメロディメーカーであるドヴォルザークらしいところか。小編成でのロンドン響も実に明快で切れ味の良い演奏をしている。

 二曲目のヒナステラは20世紀のアルゼンチンの作曲家らしい。ちなみにヴァリアシオンというのはスペイン語であり、英語のvariationのことらしい。確かにその名の通り、中心となる楽器がコロコロと変わりながら様々な響きを繰り広げていく。20世紀音楽でありながら、極端に前衛的に尖っている印象ではないので聴きやすい。ロンドン響の演奏もさすがの安定性である。

 三曲目はスペインの作曲家ジェラールのバレエ音楽「ドン・キホーテ」からの抜粋の模様。バレエ音楽であるせいかそう極端な前衛曲ではない。ジェラールはシェーンベルクを尊敬していたとのことであるのだが、その曲自体はシェーンベルクほどの奇々怪々さは感じさせず、むしろ華やかしい非常に馴染みやすい曲である。オケの演奏の安定感は言うまでもない。

 最後はドヴォルザークのマイナー曲。ドヴォルザークらしいメロディラインのハッキリした曲だが、アメリカが題材なためか全体的に軽妙さと浮き立つような明るさを持った曲である。ただそれでも第四曲なんかは一転して哀愁を帯びた旋律がなかなか美しかったりする。これだけの閑散配置で隙のないアンサンブルを展開できるロンドン響は流石と言うべきか。

 やや近代のやや知名度の劣る作曲家の曲をドヴォルザークのマイナー曲で挟んだというラトルらしい近代シフトのプログラム。こうして聞くとドヴォルザークが古典曲に聞こえてくるから不思議。