徒然草枕

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ベルリンフィルデジタルコンサートホールでペトレンコのブラームス

お籠もりの週末を癒やすライブ配信

 週末だというのに、コロナで出かけるわけにもいかないし、何となく体がダルくて何をする気も起こらないし、さらには頭がボンヤリして考えさえまとまらない。昨年末以来どうも体調がパッとせず、「もしかしてオミクロンに感染したか?」とか、「もしかしてワクチンの後遺症?」なんて考えまで浮かぶことのある今日この頃である。こんな時はボンヤリテレビを見るぐらいしかないところだが、これまたテレビをつけても本当に見るべき番組が何もないということで、肉体的な調子の悪さから精神面の不調にまでつながりそうである。

 こんな時はやはりライブ配信に限るというところだろうか。ベルリンフィルデジタルコンサートホールの時間差ライブは大抵は日曜日なのだが、今回はなぜか土曜日である。ドイツのカレンダーを知らないんだが、祭日か何かがあるんだろうか? そう思って調べてみたが、どうも特別に祭日などがあるようではない。そこでベルリンフィルのスケジュールを見に行ったら(ドイツ語を読むことは出来るが読解することの出来ない私でも、Google先生のおかげでドイツ語HPを読めるのは素晴らしいことだ)、大抵は木金土に開催される定期演奏会が、今週は土日にベルリン・ドイツ交響楽団のコンサートがあるために水木金になっているようだ。改めてスケジュールを見てみると、ベルリンフィルハーモニーのホール回転率はかなり高いようである。日本のホールからしたら、うらやましいところも多いだろう(地方のホールになるとコンサートなど年に1回なんてところも少なくない)。彼我の文化のレベル差というところだろうか。

 今回の内容は、ペトレンコ指揮でツィンマーマンという現代作曲家にルトスワフスキにブラームスというよく分からない組み合わせである。個人的には前半にはほとんど興味が無いのだが、まあ食わず嫌いもよろしくないだろう。

 

 

ベルリンフィルデジタルコンサートホール

指揮:キリル・ペトレンコ

B.A.ツィンマーマン 大オーケストラのためのプレリュード《フォトプトシス》
ルトスワフスキ 交響曲第1番
ブラームス 交響曲第2番二長調

 一曲目はいかにも絵に描いたような現代音楽で、やはり私にはよく分からない。もっとも現代音楽らしい奇々怪々さやおどろおどろしさはあるが旋律的でないというだけで、私にとっては面白くないものの不快と言うまでの曲ではない。

 二曲目のルトスワフスキも似たようなもの。彼の曲はもっと分かりやすいものもあるのだが、若い頃の曲のようだからいかにもその若い尖った部分が出た曲である。もっとも「交響曲」という形式を名乗っていることから、いわゆる完全にグチャグチャの現代曲とは違って、もう少し旋律的ではあるし、理解のとっかかりのある音楽にはなっている。その曲をペトレンコはさらに分かりやすく演奏してくれているのだろうというのは、私にでも分かる。

 さて休憩の後のブラームスだが、この曲は冒頭から弦楽斉奏が非常に美しいのであるが、ペトレンコの演奏は美しいながらも決してそこに溺れはしない演奏である。またメロドラマチックに演奏する指揮者もいたりするが、例によってペトレンコの演奏は基本的に陽性である。

 クールでクレバーで切れ味が鋭いが、決して無味乾燥な演奏ではなく十二分な美しさがあるというのがペトレンコらしいところである。緩徐楽章である第二楽章でもその切れ味の鋭さは垣間見えていたが、緩急対比の激しい第三楽章、堂々たるフィナーレ第四楽章となるとさらに冴えまくるところである。ややアップテンポ気味に怒濤のように持っていったフィナーレなど、ライブでこれを聞けば盛り上がること間違いなしだろう。実際、会場もかなり盛り上がっていた。

 まあ相変わらずペトレンコはそつのない演奏をするなというところ。なお「そつがない」という言葉は往々にして「面白味もない」という意味に使われることがあるが、この場合は「破綻がない」という意味である。ペトレンコによるベルリンフィルのコントロールも堂に入っている感がある。