徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

お知らせ

アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

東京交響楽団のニコニコ生中継を聴く

連チャンでお布施の日はライブ配信で

 さて昨日の尾高/大フィルに続いて、本日の下野/PACオケも断念せざるを得なくなった私であるが、果たして今後もお布施はどこまで増加するんだろうかと考えると頭が痛いところである。このまま行けば、翌々週の鈴木優人指揮による関西フィルもほぼ確実にお布施、さらにその翌週の小泉和裕指揮の大阪フィルもお布施になる可能性が高い。何かストレスで頭がおかしくなりそうである。

 コロナは一向に収束の気配を見せていないが、その影響は楽団の方にも忍び寄っている模様で、先日は山形交響楽団に感染者発生で大事を取って本日の定期演奏会が急遽中止という報まで飛び込んできた。いよいよもって社会機能の維持さえ危機に瀕してきているようである。

f:id:ksagi:20220212161045j:plain

また今日も配信ライブ

 こういう鬱々とした日々を癒やすにはネットでのライブ配信ぐらいしかないのであるが、Twitter経由で東京交響楽団の公演の無料配信があるとの報が飛び込んできた。となるとこれを視聴しない法はないというところである。それにしても東響は複数回にわたってニコニコ生中継を実施しているが、これはファンの裾野を広げるのには貢献しているだろうと思う。コロナが沈静化したら、私もまたノット指揮の東響のライブを聴きたいところ。何やら今回の騒動で、こういう配信に積極的なところと消極的なところの差が顕著に現れている気がする。なおチケットを有しているがこういう時勢下でホールに出向くことが不可能な観客に対してのフォローなんかも欲しいと感じる今日この頃。

 

 

東京交響楽団名曲全集第174回(ミューザ川崎)

指揮:大友直人
ピアノ:清水和音

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 op.18
ルーセル:バレエ音楽「バッカスとアリアーヌ」第2組曲
ストラヴィンスキー:組曲「火の鳥」(1919年版)

 一曲目のラフマニノフはやや重めに始まる。そのテンポで繰り広げられる清水のピアノはやはり極めて甘美でゆったりと歌わせるいいさか大時代的なもの。「サッカリンの砂糖漬け」とさえ揶揄されるこの曲の甘さをたっぷりと歌わせ、まるでムード音楽の雰囲気さえ漂う。

 第二楽章はさらに甘美さに拍車がかかる。大友率いる東響の演奏は決して極端に甘々な音色を出しているわけではないのだが、これに絡む清水のピアノの音色が甘美の極致なので、全体としては甘美極まりない音楽となる。そして華麗なる最終楽章。軽業師的な軽やかさが現れるこの楽章であるが、清水はそれでも随所で甘いささやきを織り込んでくる。なのでバックのオケもガツンガツンと行くではなく、しっかりと清水のピアノの調子に合わせてきており、清水が甘く囁くところでは弦楽陣がそれに寄り添っている。そしてドラマチックなフィナーレへと。まさに美しいラブロマンのような一編である。

 還暦を迎えて流石にハゲデブ親父と化した清水和音(笑)のどこからこの甘美さが出てくるのだと思わせるほどの甘美極まりない音楽であった。そしてソロアンコールはスクリャービン「2つの詩曲」よりとのことだが、これがさらに甘美極まりない音楽であった。

 20分の休憩の間に昼食の冷凍鍋焼きうどんを温めて腹に放り込んでから戻ってくると後半である。

   
ちなみに私のお勧めはここの冷食シリーズ

 

 

 ルーセルはラヴェルと同時期にフランスで活躍した作曲家とのことで、その曲調はやや混沌としているがその音色は優しくて美しいもの。そこから華々しく盛り上がるところを過度に溺れず抑制のかかった美しさを見せるのは大友流か。そしてそのまま華麗にフィナーレの盛り上がりを迎える。

 例によって万事そつなく難点は全くなく、ただし強烈な印象もないという相変わらずの大友流である。妙にバタバタした印象もあった曲なのだが、それを綺麗にまとめ上げるのは流石ではある。

 後半二曲目はバレエつながりでストラヴィンスキーの「火の鳥」。東響の演奏は強音よりも弱音を美しく歌い上げる感がある。王女達のロンドなんてまさに非常に美しい叙情的な音楽となった。

 その分、魔王の踊りなどではあまり緊迫感は現れない印象。こういうところでも激しさよりも流暢さが現れる大友流は好き嫌いも分かれるところだろう。そして静かな子守歌を経て壮麗なフィナーレへ。華々しく盛り上がって終了である。

 曲調的にもう少しはっちゃけても良いような気もするのだが、そうはならないのが大友流美学。あくまで冷静でダンディな演奏である。もっともその辺りが下品な私などにはいささか物足りなさも感じさせてしまう所以。私的にはむしろ前半の清水のメロメロドラマのラフ2のようなゲテモノ寸前の方が楽しめてしまうところがある。