徒然草枕

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白鷺館アニメ棟

関西フィル定期演奏会でカサドシュによる幻想交響曲

久々にデュメイの演奏が聴ける

 この金曜日は関西フィルの定期演奏会が開催される。今回はカサドシュ指揮の幻想交響曲のことだが、どうも「普通の幻想交響曲ではない」という事前情報が公式twitterでアナウンスされている。実に興味深いところである。さらに今回はソリストとしてデュメイが参加している。調べてみると私がデュメイの演奏を聞くのは実に2019年11月以来とのことになる。これもなかなかに楽しみなところである。

 なお例年はデュメイ指揮の公演が定期内に2~3回ぐらいは組まれていたものだが、今年は定期でデュメイ指揮のものは全くなく、いずみホール公演がデュメイ指揮となっている。昨年定期もデュメイ指揮の予定が3回あったのが1回しかなく(その時は私はコロナの状況を鑑みて泣きの涙でパスしたんだが)、看板詐欺という陰口まで叩かれる恐れもあるし、その度に急遽別の指揮者を手配となると大変だからだろうか。まだ今年もコロナの状況は不透明なので、いずみホール公演に分離しておけば、最悪は公演中止から変更もしやすいということか。さらに客入りイマイチの感もあるいずみホール公演のテコ入れにもなるってとこだろうか。

 金曜日の午後の仕事を早めに終えると阪神高速をすっ飛ばす。例によってまだ大阪へは車である。どうも選挙が近くなったせいで、コロナはなくなったかのような雰囲気が意図的に醸成されているが、実際は確実に感染者数は増加に転じており、恐らく選挙が終わると突然に「コロナの感染爆発でとんでもないことに」と言い出すの見えている。まだまだ当分新快速を使った移動は躊躇われるところである。特に維新の失政でコロナ野放しの大阪はかなり危険である。

 例によって阪神高速は通常通りの渋滞。毎度のことなのでこれは予測済み。今回の遅れもまあ予測の範囲内である。とりあえず駐車場に車を置いた頃にはちょうどホールで入場が始まっている頃。しかし私はそれを横目で見ながら、とりあえず夕食を先に摂ることにする。

ホールは既に入場開始

 

 

 立ち寄ったのは毎度ののように「福島やまがそば」。もう少し時間に余裕があったら「イレブン」に行きたいところだったんだが・・・。とりあえず注文は「そば定食(750円)」。

いつもの福島やまがそば

 おにぎりがついているので、とりあえず手頃に腹を膨らませることが出来るメニュー。地味だがそばの出汁がなかなかに美味い。そばに関しては私の好みよりは若干柔らかめだが悪くない。美味い、早い、安いのメニューである。

毎度のように蕎麦が美味い

 そばを腹に入れるとホールへ。今回はザクッと見て8割の入りというところか。まずまず入っているようである。やはりデュメイについてはお待ちかねというところがあろう。

 

 

関西フィルハーモニー管弦楽団 第328回定期演奏会

[指揮]ジャン=クロード・カサドシュ
[ヴァイオリン]オーギュスタン・デュメイ
[管弦楽]関西フィルハーモニー管弦楽団

ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64
ベルリオーズ:幻想交響曲 op.14

 さて公式twitterでも言っていた「仕掛けの多い演奏」だが、幻想交響曲以前にオベロンでも垣間見える。カサドシュはとにかくテンポ変化とか強弱変化とかを突然に行うというトリッキーな指揮をするようである。またこの曲では管楽器が弾けるような独得の表現も加わっている。もっともこれはオケも要求に応えるのは大変だろう。この曲に関してはオケがカサドシュの意図に100%応えきっているとは感じられない箇所も垣間見えた。

 次がいよいよデュメイ登場である。デュメイの手にかかればメンコン如き(と言うほど実は簡単な曲ではないのだが)技術的には何の問題もない。なおこの曲は奏者によってはメロメロのメロドラマにする者もいるのだが、そういう安っぽい表面上の感情に走らないのは相変わらずのデュメイ流。やや早めのテンポで淡々という印象を受けるような演奏である。その一方で音色は深い。そして所々少し個性的なアクセントが付いたりするのがデュメイ節。

 終始一貫、そのデュメイ節が炸裂した演奏である。こうして改めて聞いてみると、技術的に上手いのは当たり前として、やっぱり個性的な演奏だなとつくづく感じられるところである。感情は抑え目に聞こえるのにかかわらず、がしっと鷲掴みされるところがある。以前よりデュメイが振るとトボルザークがブラームスの後継者として聞こえるというところがあるが、メンデルスゾーンも彼の手にかかるとドイツ・オーストリアの本流を汲んでいるという部分が浮上するのである。

 

 

 休憩後にいよいよ幻想交響曲。「仕掛けが多い」という事前アナウンス通りに確かに仕掛けが多い。カサドシュはとにかくテンポ変動や強弱変動を突然に仕掛けるのはオベロンでも明らかであったが、それだけでなくて楽器間のバランスまで調整しているようである。同じ旋律でも通常とは違う聞こえ方をする場面が多々。

 この曲の第一楽章は純粋に若者の憧れや不安などを描いた素直な演奏も多いのだが、カサドシュの場合はいきなり第一楽章からやや混乱が含まれている。ザッと聞いた印象では、既に最初から素面でないというか、阿片でバキバキにキメてきていると言うように感じられる。初っ端から若者の憧れというよりも妄想が垣間見える。

 第二楽章もいささか妄想めいた舞踏会であり、果たしてこれが現実のものなのかに疑問を感じさせるところがある。そして第三楽章になるとバキバキにキメた後にくる虚脱感だろうか。そして終盤に再び妄想が炸裂する。

 第四楽章はほとんどやけくそのような行進であり、第五楽章はおどろおどろしい乱痴気騒ぎだが、むしろ逆にここで地獄に落ちた若者がハッと正気に戻ったかのような場面もある。しかしもう取り返しはつかずにそのまま地獄の底へ。と言うわけで、この曲のテーマは「ダメ。ゼッタイ。」(笑)。

 というようなところが私の演奏を聞きながらの妄想だが、これがカサドシュの意図かどうかは分からない(と言うよりも、恐らくカサドシュが見たら「こいつ、何を好き勝手な妄想を」になりそう)。客観的に言えば、予想外の変化が突然にあり響きも少し違う幻想交響曲であった。フランス人カサドシュらしく、シニカルでエスプリも含んだとでも言っておけば、それっぽく聞こえるだろうか(笑)。もっともこれを乱れることなく演奏するとなったら、オケもかなり大変であったろうことは想像できる。やや異色ではあるが明らかに名演。場内も関西フィルの定期では異例に近いほどの盛り上がりとなったのである。


 なお休憩中に9月のいずみホール公演と定期の会場先行発売があり、私もいずみホール公演のチケットを入手した。もっとも気になるのは9月頃になると、現在なくなったことにされているコロナが再び猛威を奮って、大阪などはとんでもないことになっている可能性である。そうならないことを祈るが、今の政府とあの知事では・・・。