朝から中華を頂いてから佐川美術館へ
翌朝は6時半ぐらいに自動起床してしまう。疲れがあるので本当は爆睡したかったのだが、こういう時に限って逆に眠りが浅くなってしまう。昨晩は中途覚醒が数回ある状態で、寝た感覚があまりない。
とりあえずグダグダしていても仕方ないので風呂に湯を張って体を温める。活動できるようになったところで朝食へ。朝食はホテル隣の中華料理屋「餃子 満州園」で取れるようになっている。どうやら元々はジョイフルがあったのが、最近に中華料理屋に変わったようだ。だからホテルの案内チャンネルなんかにはまだ「朝食はとなりのジョイフルで」という記載がそのまま残っている。
朝食メニューは酢豚定食やチャーハンなどから選択式。私は酢豚定食を選択。朝からしつこいかなと思ったが、どっこいなかなか食べられる。というか結構うまい。意外だったのは豆腐とワカメと溶き卵のスープの美味さ。これは思わぬ収穫。こりゃ昨日の夕食もここでも良かったかもなんて考えが頭をよぎる。なお後で入店してきた高校生の団体はバイキングを用意してもらっていた模様。
さて今日の予定だが、まずは佐川美術館に立ち寄るつもり。これがあるから美術館から近いこのホテルを取ったのである。ただ昨晩に調べていたら、現在の佐川美術館は事前予約制になっているとのことで夜になって慌てて予約を入れることになる。その結果、本来はチェックアウト時刻の10時直後が良かったのだが、早い時間帯は既に塞がっていて予約を取れたのは10時45分から。うーん、10時にチェックアウトしてから30分ぐらいどうしよう・・・。
結局はホテルで10時ギリギリまで粘ってからチェックアウトする。佐川美術館までは10分ちょっと。現地に到着してから若干を駐車場でつぶしてから予約時間よりもまだ早かったが美術館に向かったら、30分前から入館可能とのことなのでそのまま入館。それなら時間つぶさずにダイレクトに向かえば良かった。
「イスラエル博物館所蔵 ピカソ ー ひらめきの原点 ー」佐川美術館で9/4まで
イスラエル博物館が所蔵するピカソ作品を、版画を中心に展示。ピカソは創作の初期から版画作品に取り組んでいたようだが、その過程で様々な技法を試している。またピカソの作風も時代と共に変化するので、その変遷をも観察することが出来る。ピカソはキュビズムを開拓したのみならず、シュルレアリスムなどにも興味を示していたようである。
画風の変遷と共に分かるのは、モデルの変遷などから覗えるピカソの女性遍歴である。ピカソはその生涯において複数の女性の影があり、その時の愛人をモデルにして作品を量産したりしているので、モデルが変わった時は愛人が変わった時という比較的分かりやすい人物でもある。そのような女性遍歴もピカソには創作のインスピレーションになっていたようである。
版画やドローイングなどのシンプル作品が中心で、展示数が多数であるためにピカソという作家の創作の変化について探求したいという向きには興味深いだろうと思うが、やはり展示内容が地味かつマニアックな印象を受ける。そのために例えば私のようにピカソ個人に対してはさして興味がないという者にとっては、いささか退屈さを感じてしまったというのが事実。
ピカソを見学した後は、平山郁夫の絵画や佐藤忠良の彫刻なども見学するが、これらについては以前に数回来た時と内容が変わっていない。別館での樂吉左衞門の茶碗などはまあ面白くはあるのだが、いささか過剰装飾で重たさを感じてしまう。私個人としてはもう少し軽やかさを感じる茶碗の方が好みである。
佐川美術館の見学を終えると移動。今日の予定はびわ湖中ホールで14時から開催される「ファルスタッフ」。ただまだギリギリ時間がありそうなので、ホールに直行する前にもう一箇所立ち寄る。
「塔本シスコ展 シスコ・パラダイス」滋賀県立美術館で9/4まで
日本のグランマ・モーゼスこと熊本出身の画家・塔本シスコの回顧展。
彼女が日本のグランマ・モーゼスと言われるのは、まず絵画の専門教育を受けずに50才を過ぎてから絵を描き始めたこと。またその作風も身近な風景などをカラフルな色彩で描き、決してその作品自体は技巧的には感じられないという辺りもグランマ・モーゼスに通じるところがある。
とにかく目につくのその強烈な爆発するような色彩である。絵画技術としては稚拙にさえ感じられるのだが、天性と思えるその色彩感覚には圧倒されるところで、一度見たら忘れないぐらいのインパクトがある。技巧的ではないにも関わらず、描き込みの緻密さというのもグランマ・モーゼスと共通するところ。
大型の画面を用いて、時にはカンバスを回転させながら描くというその作品は、方向が不明な時空を越えたようなおかしな感覚を抱かせるものもある。
90才を過ぎるまで作品を描き続けたとのことで、最晩年の作品は認知症も入ってきたとのことで、さらに奇妙さが増してくるのだが、それがまた味になってしまうという希有な作品。とにかく強烈なインパクトで押しまくられたのである。
昼食はホールで摂ることに
これで美術館の予定は終了なのでホールの駐車場まで突っ走る。びわ湖ホールの立体駐車場はホールの隣にあり、3階から連絡通路が接続している。
なお結局何だかんだで昼食をまだ摂っていないことから、ホールに到着してから館内のレストランでビーフシチュー(1250円)を食べる。まあこういうところではCP云々なんて言うだけ野暮である。
オペラへの招待 ヴェルディ「ファルスタッフ」
指揮:園田隆一郎
演出:田口道子
管弦楽:大阪交響楽団
青山貴(ファルスタッフ)、市川敏雅(フォード)、清水徹太郎(フェントン)、古屋彰久(カイウス)、奥本凱哉(バルドルフォ)、林隆史(ビストーラ)、山岸裕梨(アリーチェ)、熊谷綾乃(ナンネッタ)、藤居知佳子(クイックリー夫人)、坂田日生(メグ・ペイジ)
ヴェルディ最晩年の喜劇である。ヴェルディらしい歌手がガンガン歌う展開もあるのだが、全体を通じては非常に愉快で快活な作品となっている。オペラ入門者を対象としている本公演向きの題材とも言える。
作品が作品だけに、歌手には歌唱だけでなくコミカルな演技も求められる。その点についてはファルスタッフの青山はなかなか怪演と言えよう。クイックリー夫人の藤居、アリーチェの山岸などもなかなかに良い味を出している。びわ湖ホール声楽アンサンブルの面々は手慣れたものというような印象であり安定感がある。
悲劇ばかりのヴェルディとは思えないような、終始一貫楽しいドタバタ騒ぎを展開する楽しい作品であり、その軽さ楽しさを前面に打ち出した公演であった。
これでこの三連休週末の近場遠征も終了。後は車をすっ飛ばして帰宅するだけと相成ったのである。内容的には結構充実していたが、その分結構疲れたというのも本音だったりする。それとやはりコロナがすぐそこまで迫っている感が半端ないにもかかわらず、世間の完全に緩みきっている空気など、諸々危険を感じる局面も。さて、これからコロナが本格的に再爆発したら、今後の予定はどうなるやら。
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