徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

岡山フィル定期演奏会で太田弦指揮のドボ八

コロナを厳重警戒しながら岡山へ

 予想通り三連休効果でコロナは一気に感染爆発、大阪は感染対策完全放置で選挙に専念していた知事の無策もあって、医療難民が溢れるディストピア状態になっている。さすがに私としてもこの最中に大阪に出かけていくことはためらわれ、先日の大阪フィル定期演奏会はパスすることにした。

 そして今日である。実は今日は岡山フィルの定期演奏会のチケットを確保してある。これを取ったのは太田弦という指揮者がどういう演奏をするのかに少々興味があったこと。東京芸大出身で2015年の東京国際音楽コンクールの指揮部門で2位を獲得したという28才の若き俊英で、最近になってその名を聞くことが多くなった指揮者である。果たして21世紀を担う大器か、それともぽっと出でいつの間にやら消えていく有象無象の1人か、そのどちらであるのかという辺りが興味があったところ。

 直前まで岡山遠征の実行は逡巡したのだが、結局は諸々勘案した結果、岡山の方はまだ大阪よりは随分まともということと、行程において会場内以外に密になるところが思いつかなかったことから決行することにした。

 昼頃に家を出ると岡山まで直行する。岡山ダンジョンをくぐり抜けてホール近くに到着すると駐車場を物色。満車のところが多かったが、とりあえず24時間800円の駐車場を見つけて車を置く。

 どうにか車を置くと、昼食前に家を出ていたことから、とりあえず昼食だけは岡山で摂ることにする。なお当初予定では美術館訪問も入っていたのだが、なるべく立ち寄り先を減らしたいとそれは中止している。

日曜なのにやや閑散とした商店街

 

 

お昼はうどんにする

 いつものようにやや閑散とした商店街をプラプラ。しかし暑さにあたられているせいもあって、なかなかこれが食べたいというのが浮かばないし、適当な店もない。ラーメン屋を何軒か見かけたが、正直なところラーメンの気分ではない。ウーンと悩んで横を見たところ「手打ちうどんたぬき」という看板が目に入ったので、そこに入店することにする。どうやら信楽タヌキが店のシンボルとなっている。

信楽タヌキがシンボルの「手打ちうどんたぬき」

 注文したのは数量限定という「カツ丼セット(1000円)」。出てきたうどんを見た時に驚く。カツ丼の付け合わせという量ではなくて本格的なうどん。これは今の私にはややボリュームがありすぎ。なおうどんについては手打ちを名乗っているだけあってシッカリはしているが、腰があると言うよりも単純に硬いうどん。やや粉っぽさを感じるところがある。

カツ丼セットはかなりボリューミー

 カツ丼の方は味付けはやや濃いめだが、基本的には私の好み系の味付け。とは言うものの、絶対的ボリュームがありすぎなので、結局はご飯を一部残すことに。

 昼食を終えるとホールに向かってプラプラと歩く。それにしても暑い。これは表を歩いているだけで普通に熱中症で倒れそう。

岡山シンフォニーホール

 最近は3階席が多かったのだが、今回は1階のS席を確保してある。中央やや後方のかなり良い席である。見渡す限り観客は結構来ており、7~8割というところか。

 

 

岡山フィルハーモニック管弦楽団第73回定期演奏会

今回は1階のS席

指揮/太田 弦
ピアノ/三浦 謙司

スメタナ/歌劇「売られた花嫁」序曲
シューマン/ピアノ協奏曲 イ短調
ドヴォルザーク/交響曲 第8番

 一曲目はとにかく忙しい曲として有名な「売られた花嫁」。オケの技倆に挑戦するかのような曲であるが、岡山フィルの演奏には破綻はない。とは言うものの、もう一段の音色の粒立ちが欲しいのは事実。どことなくまとまりの甘さのようなものがある。また曲全体を通しての見通しが今ひとつ明快でない。

 二曲目は三浦によるウルトラセブン。実はこの組み合わせはつい先週に大阪フィルの神戸公演で耳にしたところである。その時には「タッチが硬質で一本調子なので面白味に欠ける」という感想だったのだが、基本的にはその時の感想と同じ演奏である。ただ神戸の時は席が悪すぎたせいもあって硬質なピアノの音がカンカンと頭に響いていささか不快であったが、それは今回の席はかなり良席であるのと、ホールの音響も良好であることで緩和されている。

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 ただやはり「この超ロマンチックな曲が、どうしてこんなにクールで淡々とした演奏になるのか」という疑問は残る。アンコールなどを聞いた限りでは、演奏に感情が欠けるロボットピアニストというわけではないようなので、これが彼のこの曲に対するアプローチということだろう。つまりはその辺りの解釈が私とは異なるということか。

 最後はドボ八。若き俊英・太田弦のアプローチは細かい統制をせずにオケを鳴らさせるというタイプ。確かにオケは良く鳴っているのだが、今ひとつしまりに欠ける印象がある。キビキビするよりは大らかに鳴らすという印象で、いわゆる緊張感はない。ただ聞いていると「えっ?それを出す」というように、場面場面で取り上げるセクションなどが私の感覚とは異なり、時々全く別の曲に聞こえる場面が。全体を通しての印象は非常にヌルいというのが本音。そう言えばこういうタイプの指揮をどこかで聞いた記憶がと思って辿っていくと山田和樹であった。太田弦のキャリアを読み返してみると、一応山田和樹のレッスンも受けたとの記述がある。それがどの程度スタイルに影響を与えるかは不明だが、どうも私とは相性の悪い類いの指揮者であるような気がした。

 そう言えば山田和樹の演奏は緩徐楽章が美しいというよりも眠いになりがちなのだが、太田の指揮でも同様の傾向があり、第二楽章は美しくはあるのだが眠さの方が正面に出てしまって、実際に回りを見渡すとここで落ちてしまっていた聴衆が多数。

 独得の音色の鳴らせ方など興味深い点もあるのであるが、どうもそれよりは私とは相性の悪さが際立ってしまった感がある。