徒然草枕

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尾高/大フィルのメンデルスゾーンチクルス第2回目

往路から散々な目に

 この週末は久々にコンサートの連荘である。金曜の夜のザ・シンフォニーホールでの尾高/大阪フィルのメンチクと、土曜の昼のびわ湖ホールでの沼尻/京都市響によるマーラーの7番である。

 金曜日の仕事を早めに終わらせると車で直ちに大阪に直行する。しかしここで想定外の出来事。事故渋滞や自然渋滞で10キロ/hr以下での走行を1時間以上余儀なくされる事態が2回。1回までは想定内だが、まさかの2回は想定外。おかげで大阪にたどり着いて高速を降りた時点で18時をとっくに過ぎている状態。慌てて駐車場に車を置くとホールへ急ぐ。もし駐車場がすんなり見つからなかったら完全にアウトだった。当然のことながらこの日は夕食など摂る時間がないので空きっ腹を抱えてホールへ。

ホール到着時には既に辺りは薄暗くなっている

 

 

メンデルスゾーン・チクルスⅡ~メンデルスゾーンへの旅~

オケは14型

[指揮]尾高忠明
[ピアノ]務川慧悟
[管弦楽]大阪フィルハーモニー交響楽団

メンデルスゾーン:
交響曲 第5番 二長調 op.107「宗教改革」
ピアノ協奏曲 第1番 ト短調 op.25
交響曲 第4番 イ長調 op.90「イタリア」

ソリストアンコール
J.S.バッハ イタリア協奏曲より第2楽章

 メンチクの第2回目は短めの曲を3曲組み合わせたプログラム。今回は5番と4番だが、作曲順で言うと2番目と3番目になる。これらと同じ頃に作曲されたのがピアノ協奏曲第1番だという。

 最初の第5番は何かと「人気がない」「構成に欠陥がある」など今ひとつ評判の良くないところのある曲であり、メンデルスゾーンの交響曲の中で評価的にはあまり高くないというのが実態のようであり、メンデルスゾーン本人もあまり気に入ってなかったという話も残っている。実際に曲自体も古典派からロマン派への橋渡し的なところがあり、その辺りが未消化な感もある。とは言うものの、現実にはメンデルスゾーンらしさの十二分に出ている曲であり、私的には世間の評価は不当に低すぎるのではという思いがある。

 さて演奏の方であるが、前回にメンデルスゾーンの交響曲第1番から見事なまでにロマンティックさを引き出していた尾高であるから、当然のようにこの曲の場合もそのスタンスである。第1楽章冒頭から金管を中心にブイブイと盛り上げてくる演奏は基本的に派手派手である。ハッキリ言ってゾクゾク来るぐらい格好良い演奏。また日頃フェスティバルホールを根拠にしている大阪フィルは、一回り器が小さい上に音響効果がより高いザ・シンフォニーホールを使うと、まさにホールが唸りを上げるぐらいのパワーを発揮する。

 第1楽章のかなりロマンティックでパワー溢れる演奏に押された状態で、次は軽快で美麗なスケルッツオを経て、極めて叙情的な第3楽章へと。当然のように尾高はこれをタップリと歌わせてくる。結構無機質な演奏をすることが多かった印象の大フィルがこういう演奏をするようになったかと感心することしきり。

 そして堂々たるフィナーレ。大いに盛り上げての大団円へとつながる。全曲が一編のドラマのように感じられる演奏であった。ロマンティックなメンデルスゾーンとしては大成功のようである。

 

 

 10分の休憩後の2曲目は私は初めて耳にする曲。いきなり冒頭から怒濤のような音型に圧倒される。ただあまりに激しすぎて、いささか通常のメンデルスゾーンのイメージとはやや異なる感のある曲想。とんでもない音型の連続なのだが、務川のテクは全く揺らぐことがないのは流石。

 一転しての第2楽章は美しくて叙情的な音楽。こういうところでは務川の澄んだ美しい音色が映える。ただ贅沢を言うならあまりに正攻法に過ぎる。もう少し色気のようなものが欲しいところ。そして再び怒濤のようなただし軽快な第3楽章へと。こういう曲想で技術的に全く揺るがず、華麗な音色を聴かせるのは流石である。

 終始務川のテクニックには圧倒されたし、その音色の美しさにも感心した。その美しさはアンコールのバッハでより明瞭に発揮されている。ただあまりに真っ直ぐすぎる感があるのも相変わらずであり、私のような下品な人間にはあまりに上品すぎる感が無きにしも非ず。もう少し色気や茶目っ気などの遊びも欲しい。

 15分の休憩後に最後の4番。この非常に陽性な曲は、その名の通りの「イタリア」のエキゾチックなムードが漂うかどうかで勝負が決まるような曲。その点、冒頭からエキゾチックムードは申し分ない。いきなりイタリアの照りつける太陽が目に浮かぶような演奏であり、音楽の風景画家とも言われたメンデルスゾーンの面目躍如である。活力と生命力に溢れているが、決して軽くなりすぎずにドッシリと構えた堂々たる演奏である。

 抒情に満ちて若干の哀愁を帯びた第2楽章の風情もなかなかのもの。エキゾチックムードがまさに全開になる楽章である。そして長閑さが溢れる第3楽章、怒濤の最終楽章へと続く。パワーが漲ってはいるが決して雑にはならないのが見事なところ。

 見事な演奏に場内はかなりの盛り上がりとなった。それも当然というもので、私としても納得の公演である。まさにメンデルスゾーンの魅力を遺憾なく披露してくれたと思う。ここのところ、目に見えて尾高と大フィルの組み合わせがグイグイと伸張しているのを改め感じさせられた。

 

 

コンサート終了後は滋賀に移動するが、この日は散々だった

 コンサートを終えると阪急オアシスでライフライン(ミネラル麦茶)と夜食を買い求めてから移動。明日はびわ湖ホールでのコンサートなので、今日は滋賀の「おふろcafeニューびわこホテル」で宿泊するつもり。温泉施設併設のホテルでゆっくりと一休みしようという考え。しかしホテルまでの道のりは予想以上に遠かった。まだ摂っていない夕食は館内のレストランで取るつもりだったが、レストランは22時半でオーダーストップとのことでたどり着いた時にはもう終了、仕方ないので軽く入浴だけして改めて夕食のために繰り出すことにする。

 とは言うものの、23時を回っている状態で空いている店は少ない。やむなく見かけた「和食さと」に入店する。最近は胃腸も弱り気味の上に、今日はかなり暑さにもやられていてコッテリしたものをガッツリという気力もないことからの選択。

 しかしメニュー表を見て驚いた。内容は焼き肉とか韓国のブルコギとかで「これのどこが和食?」というようなものばかり。仕方ないので天丼のセットを頼んだが、これがやって来たら驚いた。そばはパサパサで風味がないし、天丼はまずすぎて食う気にもならない。結局はそばだけ平らげて天丼はほとんど残す。

まずさに驚いた天丼のセット

 体に暑さが入ってしまっている。日中に車で走っていたので、車内温度の方はエアコンで制御出来ても、私のノートは当然のようにIRカットガラスのような高級装備は搭載していないので、直射日光はどうしようもなかったようである。車内温度は寒いぐらい下げているのに、身体の表面がカッカしている状態。

 とりあえずこの身体の火照りをどうにかしたいと思って、半額との表示があるかき氷を注文したのだが、これがまた驚くほどにまずい。今までこんなにまずい宇治金時を食べたことがない・・・と言いかけたが、食べたことはある。これはカップ入りの安物の宇治金時の味である。恐らく抹茶シロップにろくに抹茶も使わずに適当に香料とかだけででっち上げた安物を使用したんだろう。

 

 

 とにかく最悪の夕食であった。疲れたし意気消沈したし、コンビニなどに立ち寄る気も起こらずにそのまま帰る。今回は往路からして散々だった。ハッキリ言って尾高の演奏意外には何一つ良いことがなかったと言えるような内容。それでなくも私を取り巻く状況が悪化の一途を辿っている中、気が滅入りそうである。

 部屋で一息つくと、先ほどは烏の行水だったので、もっとキチンと入浴に行く。しかしこれは失敗だった。それでなくても私はラドン泉は体調によっては後で身体が火照ることがあるに、この日は既に身体に暑気が入っている上に、明らかに脱水状態気味(大阪への行きの行程で途中でライフラインが尽きた)。おかげで身体が火照りまくって、部屋に戻ってエアコンを全開でぶん回したのだが、身体がカッカして眠られず四苦八苦。結局この晩は、布団を被らず身体を冷やしてウトウト、その内に寒気を感じたら布団を着て、また暑くなってきたら布団を脱ぐというひたすら浅い睡眠が続く状態で一晩を送ることになったのである。

 

 

この遠征の翌日の記事

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