今日は関西フィルの定期演奏会
先週に続いて今週も水曜日にコンサートのために大阪に出向くことに。どうも秋のコンサートシーズンになってスケジュールが過密である。今年の秋は外来オケも来日ラッシュとのことだが、残念ながら私は軍資金の決定的不足のためにベルリンフィルを初めとしてほとんどのオケはパスすることを余儀なくされている。貧乏とは惨めなものである。
水曜日の仕事を早めに終えると車で大阪まで移動。例によって阪神高速の渋滞に出くわすが、まあこれは想定内。大阪には大体予定通りに到着、下道の混雑もそれほどではなく、駐車場もすぐに見つかる。
夕食はまたも全く工夫がないことに
さて、まずは夕食である。当初予定では「イレブン」を考えていたのだが、どうやら本日は休みの模様。そこでどこか・・・と思ったら結局はいつもの「福島やまがそば」になってしまうというあまりのバリエーションのなさ。先週と同じ「親子丼と温そばのセット(900円)」を注文する。
毎度毎度工夫のないことだと呆れるが、とにかくホッとする味である。特別感は全くないが、典型的な日常使いの店というところ。結局はこういう店が一番使いやすい。
今回は飯守泰次郎の追悼公演でもある
夕食を終えた時には18時を回っているのでホールに向かうことにする。ホール内では関西フィルの2度目のヨーロッパ遠征に向けてのカンパ募集中だが、今の私には寄付どころか「誰か私の遠征費用を負担してくれるスポンサーはいませんか?」状態である。
とりあえず喫茶でしばし時間つぶし。最近はようやくかつてほどクールダウンが必須ではなくなってきたが、それでもやはり開演前にはゆったりとくつろぎたいものである。それでなくても日常がストレスフルなんだから。
今回は久しぶりにデュメイのヴァイオリンを聴くことが出来る。前回は直前になってデュメイが足の不調で来日中止となったから久しぶりである。やはりデュメイ登場となると期待値は高くなる。会場の入りは9割以上となかなかの入り。なお今回は関西フィルは12型だが、コンマスの木村悦子に加えて、コンマスのバブアゼ、さらにアソシエイト・コンマスの堀江恵太まで加わるというデュメイ向け強化編成になっている。
開演前に8月15日に急逝した飯守泰次郎氏に関しての説明あり。なお追悼の意をこめてデュメイとヘルツォークの演奏が追加されるとの発表があった。また来年3月の飯守が指揮する予定だった公演は、小林研一郎指揮でスメタナの「わが祖国」に変更とのこと。コバケンの十八番を持ってきたようである。
関西フィルハーモニー管弦楽団 第340回定期演奏会
[指揮]マテュー・ヘルツォーク
[ヴァイオリン]オーギュスタン・デュメイ
[管弦楽]関西フィルハーモニー管弦楽団
モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲 K.527
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 第3番 ト長調 K.216
モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 K.364 から第二楽章
ドヴォルザーク:交響曲 第9番 ホ短調 op.95 「新世界より」
偉丈夫のヘルツォークは、その巨体をフルに動かしてのかなり激しい指揮をする。その演奏内容はかなりキビキビしたもので、オケに対してはかなり細かいところまで統制をかけているかなり圧の強い指揮である。ただ一曲目に関しては、オケの方が完璧にヘルツォークの意志に従えていない部分があるようで、ややガチャガチャした感のある演奏になってしまっていたように思われる。
二曲目はデュメイが登場。ヘルツォーク以上の巨体でありながら、極端に足の細いデュメイの体型は相変わらず不安を感じさせるもの。先に足を傷めた後遺症でもあるのか、歩き方にややぎこちないところが見られたのと、今回は演奏は椅子に座ってのものとなっていた。この辺りはやや心配。
しかしながら演奏の方には不安は全くないものであった。例によってデュメイの演奏は一筋縄でいかない。デュメイの音色は単純に美しいものではなく、明らかに濁りのようなものも感じられるのだが、それが音の深みにつながっているという一癖ある代物である。その奥深い音色でこのモーツァルトの軽快な協奏曲に一味加えてくる。なお相変わらずの結構自在流の演奏なんだが、ヘルツォークとの息はピッタリで、その指揮の下でオケもエッジの効いた明瞭な演奏を行っている。
その後は飯守が好きだったというモーツァルトの一曲。非常に美しくてやや悲しげでもある曲である。ここでは指揮者でありながらヴィオラ奏者でもあるというヘルツォークがヴィオラを手に登場するのであるが、驚いたのはその音色。非常に深いものがあり、堂々とデュメイとタイマンを張っている。どうやら共に指揮者としても奏者としても只者ではない二人が揃ったとんでも公演になってしまった。美しさに見せられながらも、丁々発止の緊張感が半端ない。単なる追悼演奏という次元でない演奏であった。
後半はヘルツォークによる「新世界」。とにかくテンポや強弱など徹底的に細かい指定をオケに施しているのが覗える。その指揮ぶりからもオケに対する統制の圧が半端ない。ただそれだけに緊張感に満ちて、美しくもあり、迫力もある演奏。第一楽章からメリハリ効きまくりのかなり凄い演奏が繰り広げられるのであるが、第四楽章になるとその迫力たるや半端ない。関西フィルから単なる爆音という意味ではない力強さを引き出している。そしてそのままフィナーレへ。呆気にとられる凄まじい演奏であった。やはりこの人物、只者ではない。
一曲追加になったことで、終了は9時を10分ほど過ぎることとなったが、その分以上に中身の濃いコンサートであった。まさに堪能といって良い内容である。やはりデュメイは只者ではないのだが、今回はそれに匹敵するもう一人の怪物登場で、ひたすら圧倒されるのみだったのである。