徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

ウィリアム・モリス展と岡山フィルの定期演奏会のハシゴ

岡山まで出向く

 今日は岡山フィルのコンサートのために岡山に繰り出すことにした。午前中に家を出ると山陽自動車道を岡山に向かって突っ走る。しかし現在、山陽自動車道は赤穂の手前辺りで例のトンネル火災事故で下り車線は通行止め中。途中で高速を降りて国道2号線を走ってから、再び山陽道に乗り直す必要があるので、無駄に時間を浪費する状態になっている。

 結局何だかんだでいつもよりもかなり時間を浪費してから岡山に到着。実は計画立案の時点ではもろもろ考えていたこともあったが、疲労で寝過ごした(この年になると、何だかんだで大阪との渋滞込みのドライブは疲れるし、2日とも何だかんだで1万歩以上歩いている)せいで予定は後ろに遅れ気味。結局はすべてをすっ飛ばして岡山に直行することにする。とはいえ、すべての予定をすっ飛ばしたことで、岡山に到着したのは流石に開演時刻の14時よりは遙かに前。とりあえずプランBを発動することにして、岡山県立美術館を目指す。

 美術館には11時過ぎに到着。しかしこの時点で既に結構疲労が溜まっている。このまま展覧会を見学に行ってもボンヤリすること必然と考え、休憩を兼ねて美術館内の「喫茶シファカ」に立ち寄ることにする。

美術館内の喫茶シファカ

 フレンチトーストにアイスコーヒーを付けてマッタリ。ここでしばらく休憩して、ようやく気力が出てきたところで展示室の方に向かうことにする。

フレンチトーストとアイスコーヒーでマッタリ

 

 

「ウィリアム・モリス 英国の風景とともにめぐるデザインの軌跡」岡山県立美術館で11/5まで

 近代工業化による画一的な大量生産品に抵抗を感じ、中世手工業的なものに価値を感じて日常生活の中に美を取り入れようとしたアーツアンドクラフツ運動の中心となった、ウィリアム・モリスについての展覧会。

 当然のように展示品は壁紙やら絨毯の類いが中心となるのだが、植物をモチーフとしたテキスタイルであるのだが、この植物モチーフのうねるような曲線はこの頃に隆盛していたアール・ヌーヴォーとも呼応しているものであろう。改めてじっくりと眺めてみると、かなり装飾過剰気味な派手なものに感じられるのだが、これらがイギリスの風土の中の住宅に収まるとシックリと落ち着くというのが見事。もっともこれが日本の風土に合うかはまた別問題である。

 晩年にはモリスは理想の本というものも手がけたようであるが、流石にこの辺りになると私の目には装飾過剰で目障り。正直なところ文字から目がそれてしまうので集中できない本という印象を受けた。時代がこの後、まさに「シンプルイズベスト」のアール・デコに移り変わっていくことも感じられたわけである。

 なお会場の外には地元企業のモリス展コラボドレスなるものが展示されていた。モリスの作品のイメージを意識したものだと思われるが、やはり私の目には過剰装飾気味に見えてしまう。

ウィリアム・モリス展を意識したデザインの模様

しかし私の目にはやや装飾過剰に写る

 

 

 展覧会の見学を終えると美術館の駐車場から車を出してから駐車場探し。岡山シンフォニーホールには駐車場がないのでタイムズなどを探すしかないのだが、ホール北の駐車場は軒並み全滅。ホール南まで車を回してようやく発見である。車を置くととりあえず昼食を摂る店を探す。

岡山シンフォニーホールを南から

 商店街はやはり駅前のイオンにかなり客を取られているものと思われるが、私の経験ではまだ今日は人出が多い方だろう。コロナが終わったことになって、とりあえず表を出歩く人が増えたということはありそう。

今日は比較的人出があるか

 

 

昼食は2日続きのカツ丼

 相変わらず「やまと」は人気か行列が出来ている。もっとも私はここの味付けは好みが合わないことを以前に確認済みなので別の店を探すが、これがなかなか面倒くさい。結局近くに「うどんそば」と記した「春秋庵」なる店を見つけたのでここに入店。本日のランチというカツ丼(800円)を注文。

途中でみつけた「春秋庵」

 なんの工夫もなく2日連続カツ丼になってしまった。まあ内容的には可もなく不可もなくの無難な味付けである。もし次に来ることがあったら麺類を食べてみるか。

まずまずのカツ丼

 

 

 昼食を終えると開場直後のホールへ入場する。そもそも今回岡山くんだりまで遠征してきたのはプログラムがドボのチェロコンにシベリウスの2番と、もろに私好みだったことによる。さらに指揮者が秋山和慶とのことなので、大名演は期待できなくても大ハズレもなかろうという計算もある。

岡山シンフォニーホールに入場

 まだ開演まで時間があるので喫茶でも立ち寄るかと思ったが、よくよく考えると今日は既にアイスコーヒーを飲んでいた。コーヒーの飲み過ぎは多分胃に来る。仕方ないのでロビーでしばし時間をつぶしてから席に向かう。

 私の席は3階の安席。なおこのホールは3階席まで延々と階段を登るしかないというバリアフリー全盛の昨今の風潮に挑戦したチャレンジングな建築であるので、3階まで上る頃には息が切れる。しかも私が確保した最前列は、いざ座ろうとするともろに高所恐怖症を喚起する恐怖席。2階席が3階席よりも前に張り出していたら怖さも少しは軽減されるのだが、ここは2階席と3階席が全く同じ大きさなので、3階席の最前列からは高さ数十メートルの断崖の縁をのぞき込むのと同じ状態。高所恐怖症にとっては最悪の仕様である。やっぱりいろいろと「チャレンジング」な設計になっている。こりゃ無理せずにもっと後ろを確保しておくべきだった。さらに視界を妨げないように設計しているのは分かるが、高所恐怖症の人間にとって腰より低い位置の柵なんてないのと同じである。

3階席最前列はかなり恐い

 とりあえず深呼吸などで無理矢理に精神を安定させて開演を待つことになる。途中でプレトークが始まったが、司会のRSKの女子アナはさすがに喋りが本職なので良いが、インタビューを受けている秋山和慶は喋りがグダグダなので何を言っているかが分からない。そう言えば今は亡き飯守泰次郎のプレトークが、ほとんど認知症老人のボヤキに聞こえたのを思い出す。もっとも秋山はそこまで衰えているわけでなく、単に滑舌が悪いだけであるが。

 

 

岡山フィルハーモニック管弦楽団第78回定期演奏会

岡山フィルは12-10-8-8-6型編成

指揮:秋山和慶
チェロ:佐藤晴真

ウェーバー 「魔弾の射手」序曲
ドヴォルザーク チェロ協奏曲
シベリウス 交響曲第2番ニ長調

 一曲目の魔弾の射手でいきなりホルンが危うい場面が発生して「こりゃ大丈夫か?」と不安になったが、後はまあ無難にこなした。これ以外にも木管がしでかしたり、金管がやたらに無神経にバリバリと吹いている局面などがあり、管楽器に関しては今一歩の感は否定出来ない。

 ただ弦楽陣の密度は以前よりも増した印象である。12-10-8-8-6の構成になっていたが、以前の岡山フィルは弦楽陣の非力さを感じることが多かったのだが、今回はこの弦楽陣が分厚いアンサンブルを奏でた印象。

 佐藤のチェロは軽快でありながらもなかなかに美しい音色を出す。秋山の指揮はゆっくりと構えて急がない印象。安全運転という言い方も出来る。秋山は実力に不安のある地方オケなどで、そのオケの技倆に合わせて音楽を設定するということに長けた面を以前から感じているのであるが、今回もそれがでていたように感じられる。

 なかなかに感心したのは最後のシベリウス。いきなり弦楽アンサンブルが分厚く幽玄に聞かせる。残念ながら北欧の霧が立ちこめるところまでは行かないが、それでもまずまずの雰囲気がでている。いささかヒステリックに響きがちの金管がやや残念感があったが、全体を通してなかなかに聞かせる演奏になっており、岡山フィルもレベルが上がってきたという印象を受けた。

 まずまず満足出来るコンサートであった。車を回収すると家路につくのである。帰りは途中で降りずに高速1本だから楽なものである。もっとも相変わらず岡山ダンジョンはかなり高レベルではあったが。