最悪の渋滞のおかげでドタバタさせられることに
この週末は関西フィルの定期演奏会とPACの定期演奏会に出向くことにする。毎度のように金曜日の仕事を早めに終えると直ちに阪神高速に。しかし毎度毎度慢性渋滞の阪神高速だが、今日は最悪の混雑だった。神戸に入ったところで半分止まりながらのノロノロ運転で、いつまで経っても神戸から抜け出せない。結局もう18時前になっているのに神戸にいるような状態。渋滞が途切れたのは西宮を過ぎたあたり、そこから大阪めがけて突っ走ったが、大阪に到着した時点で18時半。しかもホール周辺の駐車場はクソ高いホールの駐車場も含めて満車ばかり、ようやく空き駐車場を見つけるとホールへ急ぐ。
ホールはゾロゾロと大量に入場中。いつになく観客が多い。もう既に18時半を回っているので夕食なんて取っている余裕はない。私も慌てて入場。何でこんなに今日は客が多いんだと思ったら、よくよく考えてみると今日は「かてぃん」こと角野隼斗が出演だった。道理でいつになく若い女性が多いと思った。
とりあえず全く何も腹に入れない状態だと危ないので、満員の喫茶に立ち寄ると超高級なサンドイッチを注文して、アイスコーヒーで流し込む。ろくに味わっている暇もない。
ホールに入った時には既に指揮者の藤岡幸夫のプレトークが始まっていた。それにしても今日は観客が多い。ほぼ満席に近い状態で入っている。角野の集客力恐るべしだ。これだけの集客力を持つピアニストと言えば、後は反田と辻井ぐらいか。ただ先日フェスティバルホールで行われたオスロフィルのコンサートは、イケメン若手指揮者のマケラにソリストは辻井君とW客寄せパンダだった割には、入りは惨憺たるものだったと聞く。辻井の集客力も一時に比べると低下したのか? まあそもそもこのコンサートは円安の影響とエイベックスのぼったくりのダブルパンチでチケットが異様に高かったので、私も購入を見送ったのであるが(ちょうどこの日は岡山フィルのコンサートに行っていた)。
関西フィルハーモニー管弦楽団 第341回定期演奏会
[指揮]藤岡幸夫
[ピアノ]角野隼斗
[管弦楽]関西フィルハーモニー管弦楽団
モーツァルト:ピアノ協奏曲 第26番 ニ長調 K.537 「戴冠式」
エルガー:交響曲 第1番 変イ長調 op.55
一曲目のモーツァルトは、プレトークで藤岡が「スコアのソロピアノのセクションが最低限の記述しかないので、そのまま演奏したら味もそっけもない演奏になってしまうから、この曲に関してはピアニストがいかにアドリブを加えられるかが見せ所」と語っていた。私は残念ながら角野がどの部分にアドリブを効かせているのかを細かく判別できるほどのモーツァルト通ではないのだが、それでもモーツァルトの音楽にしてはやけに装飾音が多いことは感じた。
角野の演奏はとにかく「よくもこれだけ指が動くな」と驚くほどに音の多いアクロバチックな演奏である。華麗にして軽快というところ。またところどころ弾き崩しなどもあり、その辺りは女性ファンにアピールできる色気になるが、どちらかと言うとそちらよりも軽業師のような演奏の方が本領のようである。第一楽章などはとにかくアクロバチックで豪華絢爛な演奏に徹している。
藤岡が「室内オーケストラ的な音を聞かせたい」と言っていた関西フィルは8-6-4-4-2型という最小構成。藤岡が目論んだ通りの室内楽的なまとまって落ち着いたアンサンブルを奏でている。その演奏は当然のようにソロピアノを浮き立たせる形になっている。
第二楽章は意外と淡々と弾いてくるなと思っていたら、中盤以降タップリと歌わせてきた。女性をウットリとさせるいわゆるイケメンピアノだ。そして最終楽章は再び怒涛の音の洪水。こうして聞くとやっぱり角野の本領はこっちか。
そのまま大盛り上がりで終了。ホールの前半分を占めていた女性たちが一斉に立ち上がったのには驚いた。満場の拍手どころか口笛まで飛んでいたが、さすがにこれは下品。通常の関西フィルコンサートとはあまりに雰囲気がそぐわず、反射的に眉を顰める会員も。
満場の喝采を受けてのアンコールはモーツァルトのきらきら星変奏曲の角野バージョン。元々の曲にさらにアクロバチックさを加えて、途中ではジャズ的なアレンジまで入るいかにも角野らしいアレンジ。当然のように会場は大盛り上がりである。立ち上がる御婦人方も先ほどの倍ぐらいに増えた。もっとも盛り上がり方がいわゆる普通のクラシックファンとはタイプがやや違うので(ジャニーズのコンサートの方が近いかも)、あまりこの手のファンばかりが取り囲んでいたら、角野が今後一流のピアニストに脱皮していくのに障害になる可能性もとやや心配してしまった。
20分休憩後の後半はオケを14型に拡張して藤岡によるエルガーの交響曲。エルガーと言えば尾高のイメージが強いが、実は藤岡も以前にエニグマを取り上げるなどエルガーに力を入れている。
藤岡のアプローチは彼らしくメロディを前面に出したなかなかに熱い演奏。曖昧模糊とした印象のあるエルガーから、メロディを浮上させてそれを美しく奏でるという演奏。尾高の構成がしっかりした演奏よりは、もっと情緒的であるがそれゆえに聞きやすさはかなりある。
堂々たる第一楽章に続いて、激しいスケルツォである第二楽章、そこから切れ目なしに美しさ満載だが快適すぎて眠気を誘うことがある(藤岡談)という第三楽章。これでもかとばかりに美しさを前面に出した演奏である。そしてスケールの大きな最終楽章へと。エルガーがあまり得意ではない私(どうもエルガーの音楽とターナーの絵画とは相性が悪い)がそれなりに楽しめたのであるからなかなかの名演と言える。
なかなかに甘い演奏であり、ロマンティックが止まらない(表現がジジイである)というところか。こういうコンサートだと私の隣に素敵な女性が同伴していたら・・・なんてことも頭を過ってしまうが、全くあり得ない話であることは言うまでもない。
新今宮の定宿に宿泊
満足して会場を後にすると、車を回収して今日の宿泊ホテルへ。向かう先は例のごとくの新今宮のホテル中央オアシス。私の定宿の中では高級ランクのホテルである。ホテルにチェックインするとまずは夕食の調達のために近所のファミマへ。結局はファミマで購入したカツ丼が今日の夕食。スーパーよりはやや割高だが、味はマズマズ。カツとじがご飯と別盛になっているので、ご飯がふやけていないのが最大のポイント。確かにスーパーなどの最初からご飯にかかっているタイプは、ご飯がふやけてていて美味しくないことが多いからこれは工夫である。また冷蔵状態では出汁にとろみをつけて煮凝り状に固めていたようなので、出汁がすべてカツに吸われてしまうということも防いでいるようだ。コンビニの商品開発の工夫を感じる。
夕食を摂る間に風呂に湯を張っておく。この高級ホテルの一番のポイントは風呂トイレセパレートであること。ユニットバスだとゆっくりと入浴できないのが、わざわざこの高級ホテルを確保した理由であるのは言うまでもない。浴槽内でしっかりと体を伸ばして、あちこちに溜まっている疲労を抜いておくことが、明日のことを考えると重要である(特に長時間運転していたことで腰がどうも不穏)。
風呂からあがると仕事環境を構築すると、フロントで無料コーヒーをもらってきて、それを飲みながらこの原稿執筆。それがこの日の夜まで続くこととなる。
この遠征の翌日の記事