徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

新日フィル定期演奏会ルビー&「三国志展」「松方コレクション展」「メスキータ展」「高畑勲展」「ミュシャ展」in 東京

 翌朝は6時過ぎに起床する。今日はANAで東京まで飛ぶので寝過ごしてはいけないという気が強すぎたのか、夜中に何度か目が覚めてしまうという状況。そのうちに6時過ぎになったので起床したというのが実態。やはり睡眠力の低下を感じずにはいられない今日この頃である。

 起床するとすぐに着替えて荷物をまとめるとホテルをチェックアウトする。と言ってもまだフロントが開いていないので鍵をボックスに放り込むだけであるが。

東京へのフライト

 天王寺の空港バス乗り場まで歩くと、そこからリムジンバスで空港へ。バス内はほぼ満席となっている。利用者は多いようだ。朝の阪神高速はかなり混雑している。こんな中をバスで走るのもなかなか大変だろうと思う。

 大阪空港は現在ターミナルの改装中とのことで動線がグチャグチャになっている。そのせいでレストランにたどり着けず、やむなくターミナルビル内で850円のカレーを朝食に摂るが、例によって激烈にCPが悪い。これでもまだ味が良ければ納得できるんだが・・・。

 荷物検査場も大混雑だが、今回新たに導入されたという新型の検査場に回される。どの辺りが新型なのかはよく分からないが、キャリーからipadを取り出さなくてもそのまま通過できたところを見ると、その辺りが新型ということか。ただやはり人数が多すぎるので捌くことが優先であり、国内線のセキュリティは実際はザルなんじゃないかという疑問は湧く。

 何だかんだで到着ゲートには出発の1時間前に到着してしまった。そこでこの原稿を打ちながら時間をつぶしている(笑)。どうもこういう時の時間の暇つぶしは未だに苦手である。年を取ってくると気が長くなるという話があるが、むしろ残された時間が少ないことを感じて、余計に気が短くなった気もする。もっとも一日や一週間がやたらに短く感じるようにななったことも事実で、人生最初の25年と、次の25年を比較したら後者の長さは半分もないような気もする。子供の頃というのは常に社会が刺激に満ちていたので、とにかく一日が長かったが、成長してルーティンのような刺激のない日々を送るようになると、気がつけば一日が終わっている。こうして考えると、変化のない刺激の少ない日常を送った者の人生って、すごく短いんだろうな。

 いつもならスカイマークで飛ぶところだが、今回は久しぶりにANA。三連休前ということでかスカイマークの運賃も結構高かったことで、宿泊料も込みで考えるとこちらでも金額に大差がなかったことによる。

 ANAの機体は777。スカイマークの737と違ってかなりの巨体である。こんなのが空を飛ぶのだから驚き。乗り込んだ後は昨晩の疲れが出てきてほとんどウトウトしている状態で東京に到着する。

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巨大な機体の尻尾だけが見えている

 羽田空港に降り立ったのは10時数分前。今日の10時から発売のチケットがあるので、飛行機が着陸して電子機器の使用が可になった途端にチケット手配。何とかチケットの確保に成功。それにしてもバタバタとせわしない。

 空港からは京急とJRを乗り継いで上野に到着。上野駅のロッカーにキャリーを放り込んで身軽になると今日の目的地に向かって繰り出す。途中で科学博物館の前を通るが、恐竜展が開催中とのことで既に行列が出来ている模様。やはり子供にとってキャッチーなのは「恐竜、鉄道、アンパンマン」のようだ。これが大人向けなら「エジプト、浮世絵、印象派」となる。

 科学博物館の前を通過すると、まずは国立博物館で開催中の「三国志展」を目指す。三国志と言えばオッサンと特定のオタにキャッチーなテーマなので行列が心配だったが、館内は若干混雑していたものの、心配したような行列はなしでいささか拍子抜け。

 

「三国志展」東京国立博物館で9/16まで

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 テーマが三国志ということで、展示内容は三国時代の物品といったオーソドックスなものだけでなく、三国志を描いた壁画や彫刻なども含まれている。中でも展示の目玉的なものは、格好の良い関羽像であろうか。

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本展の目玉、異様に格好良い関羽像

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格好良すぎです

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張飛と関羽

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これじゃない感が漂う趙雲像

 

 さらには横山光輝三国志の絵が飾ってあったり、人形劇三国志の人形が展示してあったりと今までになくごった煮な印象の展覧会である。それなりに面白くはあるが、展覧会としての印象は実はかなり薄かったりする。

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人形劇三国志より劉備

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そして諸葛孔明

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張飛の蛇矛のレプリカ

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これは赤壁の戦いでしょうか

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当時の馬車の像

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当時の軍船模型(一応こういう学術的展示もあるのですが・・・)

 

 博物館の会場では、三国志武将メーカーなるものがあって、自分の顔写真からオリジナル武将を作れるらしい。私も試してみたのだが、出てきた武将がイケメン過ぎて私とは似ても似つかない。司馬良ということは司馬氏の一族なのに蜀の劉備に付いたのか。数奇な運命の武将のようだ。関羽と張飛の死を知って泣き崩れたところで経歴が終わっているが、その後を私が想像で補うと「関羽の敵を討つべく夷陵の戦いに参加するが大敗、敵の追撃を振り切って何とか脱出には成功したものの、蜀に帰り着いたところで劉備の訃報を耳にする。これで人生の無常を感じて、職を辞して仏門に入って劉備達の御霊を弔いながら生涯を送る。」といったところかな。

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どこからどう見ても私とは似ても似つかん

 鶴屋吉信の出店が出ていたのでお茶をしたくなったが、時間に余裕がないことと席に空きがなかったことから先を急ぐことにする。次の目的地は近くの美術館。

 

「松方コレクション展」国立西洋美術館で9/23まで

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 国立西洋美術館のコレクションの核になった松方コレクションの経緯について作品展示と共に解説。

 造船業で財をなした松方氏が「日本にも世界に匹敵する美術館を」との考えを元に個人的に蒐集したのが松方コレクションである。その当時には世界有数のコレクションだったのだが、その後に川崎造船の経営破綻による売却による散逸、イギリスの倉庫に保管していた作品の焼失、フランスにあったコレクションの戦争に伴う差し押さえ等、諸々の事情で一部が流失した後に現在の状況がある。

 展示作は国立西洋美術館の収蔵品が中心であるので見覚えのある作品が中心だったが、一部は他の美術館の収蔵品もあり。これらは松方コレクションの散逸期に所有権の変わった作品のようである。これらも含めて非常にレベルの高いコレクションであったことが覗える。

 

錦糸町でとりあえずの昼食

 美術館2カ所をハシゴしたところで13時前。そろそろコンサートに向かう必要があるが、その前に昼食を摂りたい。上野では「困った時のぶんか亭」だったのだが、どうやら閉店になった模様。さして美味くもなくて安くもない店だったが、いつも結構客だけは入っているイメージがあったのだが? テナント料が高すぎたのか?

 上野界隈でレストランを探してウロウロする時間もないので、飲食店は錦糸町で探すことにする・・・と思っていたのだが、「つばめグリル」は行列、ラーメン屋「青葉」まで行列が出来ている状態。一体どうなってるんだ? 行列に並んでいる暇なんてないので、行列のなかった「そばじ」に入店、ざるそばとカツ丼のセットを注文する。

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錦糸町のそばじ

 元々行列がないという理由で選んだ店なので何の期待もしていなかったが、出てきた玉子がコチコチに固まったカツ丼を見て、やっぱりなという印象。しかし食べてみると存外味は悪くはない。価格も高くない(750円)し、立ち食いそば+αぐらいの感覚でいたら、東京という場所柄を考えるとそう悪くもないかもしれないという気がしてきた。

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カツ丼とざるそば

 とりあえずの昼食を終えるとホールへ急ぐ。開演30分前にロビーコンサートがあるとかでロビーには黒山の人だかりが出来ている。新日フィルはこういうのにも熱心なようだ。

 

新日フィル定期演奏会ルビー

ベアトリーチェ・ヴェネツィ[指揮]
吉野直子[ハープ]
池田香織[メゾ・ソプラノ]

ニーノ・ロータ/組曲《道》より抜粋
ヒナステラ/ハープ協奏曲 作品25
ファリャ/バレエ音楽《三角帽子》全曲

 指揮はアロンドラ・デ・ラ・パーラの予定だったが、代わって新鋭ベアトリーチェ・ヴェネツィ。スラッとした長い手足で身振りの大きい指揮をするが、その姿は溌剌としていて颯爽としている。また動作の大きい指揮と言っても誰やらのようなカメラ受けを狙ったタイプの指揮でなく、その動作に諸々のニュアンスを含んで巧みにオケをコントロールしている。かなり表現力が豊かな指揮である。

 新日フィルもこの指揮を受けて、いつになく煌びやかで色彩的な演奏を行った。それが今回のラテン系プログラムと合致してなかなかの名演。

 ベアトリーチェ・ヴェネツィの名前は初めて聞いたが、単に若い美女と言うだけでない才能を感じさせる女流指揮者である。これはもしかして次世代のスター誕生に立ち会ったのかもしれないという気がしてきた。それにしてもこんな女性指揮者が出てくるとは、時代も変わったものだ。


 コンサートを終えるとすぐに移動する。雨が少々降ってきたようだが、そんなことにかまっていられない。傘を出す暇も惜しんでそのまま駅まで突っ走る。まだ今日の予定は終わっていない。まずは東京駅に立ち寄ると駅併設の美術館へ

 

「メスキータ展」東京ステーションギャラリーで8/18まで

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 オランダでデザインや版画の指導者として教鞭をとったメスキータの弟子にはエッシャーなどもいるという。ユダヤ人であるメスキータはナチスの台頭でアウシュビッツに収容され、その作品もすべて破棄される危機にあったところをエッシャーら彼の弟子達が命がけで彼の作品を守ったのだという。エッシャーの初期の作品には特にメスキータの影響が見られるとのこと。

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自画像

 版画だけでなく絵画作品などもあるのであるが、やはり最も彼らしいというか、最も強烈に心に突き刺さってくるのは彼の木版画である。その明瞭な黒と白のコントラストはこちらの頭脳に挑戦してくるかのような強烈さを秘めている。

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どこか心に刺さる作品

 精密な描写がある一方で、大胆に簡略化したり幾何学的に再構成していたりといった点が見られることが多いのであるが、この辺りがエッシャーに影響を与えたのだろうなというところが頷けたりするのである。


 次は大手町駅から地下鉄に一駅乗って美術館へ。

 

「高畑勲展-日本のアニメーションに遺したもの」東京国立近代美術館で10/6まで

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 「太陽の王子ホルスの大冒険」などの往年の名作アニメーションの演出を手がけ、現在のアニメに大きな足跡を残した高畑勲の展覧会。

 高畑勲自身は絵を描いたりした人物ではないので、どうしても展示は地味でマニアックになる。ただそういう地味な展示を通して、彼が何を描こうとしたのか、どう描こうとしたのかが伝わってくるような構成になっている。

 ホルスの一場面の映像が上映されていたが、今日の目で見てもその表現の高度さには驚かされるのである。これが実現したのは、彼の意図をくみ取ってそれを的確に形に出来る宮崎駿などの更なる天才の出現が大きいようであるが、そういう奇跡の出会いがこういう奇跡的作品を生んだということが良く理解できる。才能が才能を呼ぶというか、見出すというか、こういうことが実際に起こるんだなと感慨深い。

 あちこちに彼の作品の断片が展示されていたが、それを見ていると、もう一度彼の作品をじっくりと見たくなってきた。正直なところ「アルプスの少女ハイジ」などは今でこそ名作と感じるが、当時まだ子供であった私には「変化が少なくて退屈な作品」と映っていたのも事実だったりする。今改めて大人の目で見てみると、また違った感想を抱くことになるだろう。

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アルムの山小屋のジオラマ

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ハイジとオンジがいます

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ベーターも

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会場外には山小屋のセットが

 

渋谷のくじら専門店で夕食

 後の予定はもう一カ所。ただそろそろ洒落にならないぐらい腹が減ってきた。そこで次の美術館に入館する前に夕食を摂ることにする。立ち寄ったのは渋谷の「元祖くじら屋」。祝・商業捕鯨再開記念である。注文したのは桜コース(3600円+税)

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渋谷の元祖くじら屋

 最初は水菜のハリハリサラダから。次が刺身鉢になるが、赤身がやはり美味い。私は馬刺しでも赤身を好む人間なので、赤身と相性が良いようだ。

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ハリハリサラダ

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刺身、赤身が最も私の好み

 次に出てくるのは鯨の唐揚げ。鯨料理では定番と言えるメニューである。普通に美味いと言うところだが、正直もう少し量が欲しい。

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唐揚げ、美味いが量が少ない

 次に登場する鯨の西京焼きがメインと言うところだろうか。これが抜群に美味い。鯨の旨味が味噌と合ってたまらない。正直なところ3本ぐらいは食いたい。これの後はボリュームを補うためか豚串が2本出てくるが、まあこれは普通。

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抜群に美味い西京焼き

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数合わせ感のある豚串

 最後は鯨のしぐれ煮の入った茶漬け。これも普通に美味いと言うところ。

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鯨茶漬け

 味の点では申し分なかったが、やはりCPがあまり良くない。ボリュームが不足である。鯨の商業捕鯨が軌道に乗って、もっと安価に良質な肉が出回ることを期待するのみ。なお店内に訪れていた客の中には欧米人もいたのだが、やはり日本人にもいろいろいるのと同様に彼らも人種差別主義者だけではないということだろう。

 腹ごしらえをしたところで、今日最後の美術館に立ち寄る。

 

「みんなのミュシャ」Bunkamuraで9/29まで

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 前半はミュシャの作品の展示であるが、いわゆる有名なポスター類よりも、そこに至るまでの初期作品に結構比重を置いているのが、今では年中どこかで必ず開催されている普通のミュシャ展とは若干違う特徴。とにかくミュシャがあの「ジスモンダ」のポスターで一躍時代の寵児になる前から、卓越したデッサン力を有していたことを覗わせる。

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有名な黄道十二宮

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非常に美麗であります

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やっぱりうっとりとする

 後半は表題の「みんなのミュシャ」ということでミュシャに影響を受けた作家達の作品の展示がメインとなるが、影響を受けた作品にアメコミまでが含まれるというのはいささか驚きだった。そう言われてみるとあの線での濃厚な表現はミュシャ的と言われればそう見えなくもない。

 日本からは明星などの文芸誌に始まり、「日出処の天子」の山岸凉子や、これはお約束とも言える天野喜孝なども登場していた。個人的にはなぜ藤島康介が含まれていなかったのかだけがやや疑問なのだが。とにかく今日の少女漫画の基本パターンを確立した画家とも言われているだけに、サブカルチャー方面への影響は計り知れないところがある。


 展覧会の見学を終えてBunkamuraを後にすると、今日の宿泊予定ホテルがある南千住へ移動することにする。途中の上野駅でキャリーを回収すると、上野の駅ナカで夜食のパンを購入。ところで上野駅の発車メロディが「トゥーランドット」になっているので「?」と思っていたら、現在文化会館で上演中ということでのようだ。この公演は私もびわ湖ホールで開催される分については見に行くつもりだが。ところで「トゥーランドット」を耳にすると反射的にイナバウアーをしたくなるのだが、出来ないけど・・・(笑)。

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これが上野で上演中の模様

 南千住に到着した時には22時を回っていた。今日の宿泊ホテルは南千住のホテル丸忠CENTRO。今まで利用していたホテルNEO東京が休業のために最近利用しているホテルである。宿泊料がNEO東京よりやや高いのが難点。

 ホテルにチェックインすると強烈な疲労が湧き上がってくる。とりあえず布団を敷いてその上で横になるとしばしダウンしたまま動けなくなってしまう。しばらくそのままグッタリしていたが、入浴時間が来たのでとりあえず風呂には入るべき体を引きずりながら大浴場へ。何とか入浴は済ませるが、部屋に戻ると完全にそのままダウン。