徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

尼崎城&スイス・ロマンド管弦楽団

 翌朝の朝食は「千成屋珈琲」に出向く。9時の開店の5分前に到着するが、既に親子連れが開店待ち。開店と同時に他の客もなだれ込んできてすぐに満席となる。

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ミックスジュース発祥の地

 私が注文したのはミックスジュースとナポリタン。懐かしい関西喫茶店朝食の定番である。このメニューを見ただけで昭和にタイムスリップしてしまう。昔は喫茶店のハイカラメニューと言えば、なぜかナポリタンスパだった。その伝統を受け継ぐ正しいナポリタンである。薄焼き玉子を下に敷いて、フライパンにパスタが焦げ付かないようにしてるのもうれしい。

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定番のミックスジュース

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昭和の喫茶店の定番ナポリタンスパ

 この喫茶店の欠点は禁煙でない(この辺りも昭和である)ということなのだが、今回は客に誰もニコチン中毒患者がいなかったようで快適に過ごせた。

 

 朝食を摂るとホテルに戻ってくる。出かける前にシャワーを浴びておきたい。ここのホテルの難点は男性用シャワー室が1つしかないことで、夜や朝は混雑して使えないことが多い。昨晩入浴を諦めたのもそれが原因。そこで1泊客はチェックアウトするこの時間帯を狙った次第。ただチェックアウト時だけにエレベータが大混雑して乗れず、5階から1階まで階段で降りる羽目に。

 シャワーで汗を流してサッパリすると出かけることにする。今日の予定は14時からザ・シンフォニーホールで開催されるスイス・ロマンド管弦楽団のコンサートだが、その前に寄り道をするつもり。新今宮から西九条まで移動すると、そこから阪神なんば線に乗り換える。目指すは尼崎。この度オープンしたという尼崎城を見学しようという考え。

 

尼崎城

 海と街道に面し、瀬戸内水運と街道輸送の拠点として幕府に重要視されていた尼崎城は、かつては広大な敷地と壮麗な四層天守を誇っていた。しかし明治になると建物は払い下げられて取り壊され、堀は埋め立てられてその遺構は完全に市街地に埋もれてしまい、今では近くの小学校に天守の模型が置かれているだけという情けない状態になっていた。しかしミドリ電化創業者の安保詮氏が「創業の地に恩返ししたい」と私財10億円を投じて天守を再建(残念ながら場所は元の位置と違う)、市に寄贈したらしい。それが完成して、内部を整備した上でつい先週から公開になったとのこと。

 鉄筋コンクリートにアルミサッシのなんちゃって天守ではあるのだが、それでも見た目はなかなか堂々としたもの。遺構が全く何もない状態よりは明らかに見栄えが良いし、市のシンボルとしても格好良いだろう。内部には尼崎城に関する展示がされており、入場料は500円。

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なんちゃって天守だが、なかなか見栄えは良い

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入口は南の方から

 最上階の5階は展望台だが、残念なことに見事に市街しか見えない。そこでバーチャルリアリティで往事の風景を再現して展示してある。

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最上階は展望台

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南側の風景

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CGで再現した往時の風景

 これ以外にも天守を描いた手ぬぐいの展示とか、火縄銃とかを使ったゲーム、侍になれるコスプレコーナーなんて行った定番どころに映像展示なんかもあって、尼崎市もまずまず力を入れている様子。リピーターが着くかは怪しいが、観光客なら一度は入っても損はしないだろうと思われる。

 

 尼崎城の見学を終えると小雨がぱらつく中を隣の大物駅までプラプラと散策する。この大物駅の近くには大物崩れの石碑が建っている。京都での戦いで敗北した管領の細川高国が巻き返しのために、先日訪問した三石城の浦上村宗を味方に付けて三好元長の軍勢とこの地で争う。しかし援軍のはずの赤松政祐が敵に通じたために細川・浦上軍は背後から急襲される形になって総崩れ、浦上村宗はこの戦いで命を落とし、逃亡した高国も捕まって自害させられる。これが大物崩れと呼ばれる戦いの全貌。なおこの戦いの後に播磨の覇者だった浦上氏は内部分裂もあって衰退、その間に宇喜多氏が台頭してくることになるという遠い播磨に影響を与えた戦いの跡である。

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大物崩れの石碑

 大物崩れ石碑からさらに足を伸ばすと、残念さんの墓と呼ばれる墓がある。これは長州藩士・山本文之助の墓だが、彼は蛤御門の変の時に大物で捕らえられ、留置されていたところで自殺したのだとか。その際に「残念で悔しい、もし悔しいことがあれば、自分に参れば1つだけ願いを叶えてやろう」と書き置きを残したそうな。それから彼は残念さんと呼ばれ、その墓を参れば願いが1つ叶うとして有名になったそうな。

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残念さんの墓

 さて私にとって残念で悔しい思いと言えば、やはり大抵は金にまつわる話。由緒正しいプロレタリアート家庭で生まれた私は、子供時代から今日まで金に不足したエピソードが事欠かない状態。さてここに参拝したことで私もブルジョワジーになれるかどうか。もしこれが本当になったらさらに参拝者が殺到しそうだ(笑)。

 

 ここまで見学したところで雨がさらに強くなってきた。大物駅から移動することにする。目的地はザ・シンフォニーホールなので阪神福島駅へ。福島駅と言えば、最近Googleがゼンリンと契約解除したことでGoogleマップの精度が落ちたとして騒ぎになっているが、実は阪神福島駅もマップから突然に消えてしまっている。多分隣にあるJR福島駅と勝手に「統合」されてしまったのだと思われる。以前はキチンと表示されていたのだが・・・。

 ホールへの移動の途中で昼食を摂る店を探すがどこもピンとこない。と言うわけで久しぶりに「上等カレー」で「カツカレー(1000円)」を頂くことに。相変わらず玉子が良く合うカレーである。

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福島の上等カレー

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玉子が良く合うカツカレー

 昼食を終えるとホールへ。入りは8割と言うところか。東京交響楽団のロゴが入ったバッグを持った客がいたが、関東からの遠征だろうか? ノットのファンか?

 

スイス・ロマンド管弦楽団

[指揮]ジョナサン・ノット
[ヴァイオリン]辻 彩奈

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64
マーラー:交響曲 第6番 イ短調 「悲劇的」

 スイス・ロマンド管はかなり元気なオケのようであり、大音量でバリバリと鳴らすところがある。おかげで最初のコンチェルトはソロバイオリンが斉奏に埋もれる局面が何度かあった。辻のバイオリンはかなり技術が前面に出てくるタイプだが、技術だけで押し通すのではなく表現力も過不足がない流麗な演奏。

 メインのマーラーの6番は初っ端からスイス・ロマンドのパワーが炸裂した。冒頭からホールが鳴動するかのような重低音が響き渡る。猛烈なパワーでグイグイと押しまくる演奏で、それをノットも思い切り煽りまくる。大音量になるとホール全体が音で満たされる印象でパワー満々。ただしノットは単にパワーで押しまくるだけでなく、明確に表情を付けて明快な演奏を行う。だからただ単に大音量でがなっているだけの演奏ではなく、マーラーがこの曲に秘めた情感も伝わってくる。時折とてつもない切なさなどもこみ上げてくるシーンもある。そのおかげて実に魅力的なマーラーとなった。

 オケも指揮者もノリノリなのが伝わってきたが、客席の方もかなり盛り上がっていた。拍手が鳴り止まずブラボーも飛び交い、ノットが7,8回ほど出入りしたが収まらない状態。そこでオケが引き上げたがそれでも拍手は収まらずにとうとう一般参賀。このホールでの一般参賀はかなり珍しい。

 熱演と呼ぶのがふさわしい見事な演奏だった。満足してホールを後にする。たまにこういう凄い演奏に出くわすのがライブの醍醐味と言っても良い。こういう時は気分が高揚してスッキリする。


 コンサートを終わるまでに2時間半ぐらいかかっていたので、新今宮に戻った時には夕食時になっていた。夕食は「だるま」で串カツを頂くが、串カツばかりガツガツと食う気力もなかったので、おにぎり茶漬けを頂くことにする。これが意外にいける。

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いつものごとく串カツ「だるま」

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いつものごとく串カツ(最近は野菜系が多い)

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おにぎり茶漬け(おかか)

 夕食を終えるとホテルに戻るが、風呂には行ったらグッタリになってしまった。そこでかなり早いが明日の仕事に備えて就寝するのである。