徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

東京フィル第928回定期&映画「Hello World」&「マンモス展」「デュフィ展」

 さて朝になったが困ったのが今日の予定。今日は19時から東フィルのコンサートに出向くが、それ以外はほとんど予定がない状態。と言うのも月曜日はほとんどの美術館が休館日であるという月曜トラップのせい。月曜日が休みでない美術館も調べたが、数がかなり限られている上に出し物もイマイチという場合が多い。仕方ないので映画館にでも出向く事にする。

 とりあえず上映は9時過ぎなので、それまでは我が家のディーガにリモート接続して、昨日放送の健康カプセルとサイエンスZEROをチェック。世界遺産は日本シリーズのために放送中止の模様。ライバルチームから主力選手を引き抜いて弱体化させることで優勝を狙う(しかもその選手は1~2年で使い捨て)プロ野球界のがん細胞・拒仁軍の試合なんか見る気はさらさらしない。

 8時過ぎになったところでホテルから外出する事にする。向かうは上野のTOHOシネマズ。前から少し気になっていた映画があるのでそれを見に行く事にする。

 

Hello World

 ツンデレ美少女の攻略法・・・というのが一番身もふたもない単純な解釈だろう。一番表層的に浅く見ればそれだけの話になるのだが、この作品はそこから重層的な構造を持っているのが特徴である。内気な草食系文学男子の成長物語という側面もあるし、青年の過去に対する後悔と克服の物語という側面も含んでいる。

 小っ恥ずかしいほどの青臭い恋愛物語で始まった本作品は、段々と世界全体を巻き込んだ大騒動となっていく。もっとも世界全体の運命をも握ったかのような主人公の行動原理は、単に「愛する人を救いたい」の一言。この単純さも今時か。「天気の子」なんかにも通じる最近のアニメ作品の王道パターンとも言える。その過程で自分自身を省みて成長を遂げる主人公の姿がドラマの縦線となっている。

 ラストについてはこの作品の重層性を最も象徴しているとも言える。いささか蛇足感もなきにしもあらずだが、観客に対して救いをもたらすという意味では制作者側としてはどうしても加えたかったのではないかという気もする。またこれを加えた事で、一体この世界の現実とは何なんだ。現在我々が現実と思っているこの世界は本当に現実なのかといった問いも投げかける形になる。

 この作品も中心キャラに人気若手俳優を配するというパターンのようだ。しかしこのパターンは大体単なる話題作りに終始し、主役陣の演技力不足などから大失敗に終わる例が多い(最も典型的なのが「二の国」)。しかし本作の場合は、ヒロインの浜辺美波の演技力もあってか違和感は皆無。その点でも成功を収めていると言えるだろう。


 ところでやはりこの手の直球恋愛ものは私は正直苦手だ。何にせよ、まだこれから未来を変えられる若者と違い、正直なところ青春時代に山ほどの悔いを残している50男にはかなりツラい話だった。私もこんなクソゲーのような今の現実なんていっそ仮想世界ならなんて思いたいところである。可能ならば私も40年前からやり直しをしたい。40年前の優柔不断な自分を張り倒し、40年後に後悔の一生を送りたくなければ勇気と行動力を持てと言いたい。

 今の日本は、生まれながらにして最強装備を得られるチートコードを有しているプレイヤーと、いくら努力しても経験値もゴールドも全く得られないプレイヤーに分けられた社会になってきている。こんなクソゲー社会が続いていると閉塞感が世の中に満ち、いずれ社会全体が崩壊しかねない。世襲の馬鹿ボンが安泰な世にするために、多くの若者の将来の希望を奪っているような不健全な社会は、いっそガラガラポンした方が良いのではという危ない考えさえ浮かぶ今日この頃。マジでショッカーでも設立したくなってきた。

 

 映画を見終わった後は松坂屋の地下飲食店で昼食を物色。「銀座鳴門」なるうなぎ屋があり、4席ほどのイートインスペースがあったので、ここで「うなぎ丼(3300円)」を頂く事にする。

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松坂屋地下の銀座鳴門

 あっさりした味付けのうなぎで上野の「伊豆栄」などにも通じる江戸前うなぎの特徴だろうか。こうして食べるとうなぎを蒸すことは、柔らかくするだけでなく事前に脂を落とすという意味もあるようだ。柔らかくはあるが、箸で身がホロホロ崩れるといったような柔らかすぎるものではなく、皮などは結構パリッとしているので私のような関西人にも抵抗の少ないところである。私の本来の好みはもう少し甘いうなぎだが、今のように体調がよろしくない時には、こういうあっさり目のうなぎもありである。

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江戸前のうなぎ丼

 贅沢な昼食を終えると午後の予定に入る。これからお台場の日本科学未来館に行って、そこで開催中の「マンモス展」を見に行くつもり。とりあえず御徒町から新橋に移動すると、ここからゆりかもめでお台場へ。ゆりかもめは以前に台場を見学の時にも乗っているが、橋への高度を稼ぐためのループラインなどに特徴がある。

 日本科学未来館は相変わらず券売所がモタモタしている。元々客あしらいがあまり良くはない施設だが、今回は外国人が多いことで余計にもたついている。ここでしばし待たされてからの入場となる。

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日本科学未来館

 

「マンモス展」日本科学未来館で11/4まで

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 シベリアの永久凍土はまさに古生物のタイムカプセルである。土中で凍結すると酸素欠乏の上に極低温保存なので、古代生物があり得ないような新鮮な状態で発掘されることがある。今回はそのような状態で発掘されたマンモスを展示すると共に、マンモス復活プロジェクトの状況を紹介している。

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マンモスの子どものミイラ

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マンモスの骨格標本

 いかにも鮮度の良さそうなマンモスの標本があるのには驚かされる。これらの標本から採取した細胞からのDNA解析なども進められているらしいが、残念ながらDNAの損傷が思っていたよりも大きいため、より状態の良い標本の発見(もしくは画期的なDNA修復技術の開発)が待たれるところであるとのこと。ただ標本を見れば見るほど、マンモスが全く新規の動物というわけでなく、ゾウの亜種ぐらいに思えてくるのも事実。

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このマンモスの鼻からは細胞が採取されたらしい

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マンモス復元模型

 なお会場ではマンモスの毛に触れることが出来るコーナーがあるのだが、内側の毛はフワフワのいかにも保温性に優れているものであるのに対し、外側の毛はかなり固く、何かの弦に使えそうだったのには驚いた。なおマンモスの肉は硬くてあまり美味いものでないと考えられるらしく、狩猟してもどちらかと言えば骨や皮が建材に使われていたようであるとのことで、ギャートルズは残念(笑)。

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意外と硬いマンモスの毛

 マンモス展の見学を終えると常設展示の方も一回りする。どちらかと言えば子ども向けの内容が多いが、ロケットのエンジンとか、アンドロイドとか面白い展示もある。ところでこのアンドロイド、どこかで見たことがあるような顔だと思えば、堀北真希?

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H2ロケットのエンジン

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このアンドロイドは堀北真希?

 科学未来館の見学を終えると新橋に戻ってくる。このまま一旦ホテルに戻っても良いのだが、どうせ新橋まで来てるのだから、この最寄りの月曜日にも空いている美術館に立ち寄ることにする。

 

「ラウル・デュフィ展」パナソニック汐留ミュージアムで12/15まで

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 デュフィの色彩鮮やかで軽妙なタッチの絵画は、どことなく心を浮き立たせるような効果がある。本展ではそのデュフィが手がけたテキスタイルを中心に展示している。布の図案となると、デュフィが色彩よりも形態の軽妙さを出してくるのが興味深いところ。絵画だと輪郭線などがかなりいい加減な印象なのに対し、こちらはカッチリとした形態を描いており、それがまた自由闊達な印象。デュフィのこういう側面は今まで知らなかった。

 軽妙かつ洒落ているのがデュフィの作品の最大の特徴だが、今まではそれが単なる軽薄さと映っていたのだが、今回デュフィの違った側面を見ることで、初めてデュフィの作品を面白いと感じたかも。

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デュフィのテキスタイルを使用したドレス

 正直なところデュフィはあまり好みではないのでパスするつもりだったのだが、結果としては来て良かったと言うところ。またデュフィの絵画は心を軽やかにする効果があり、映画の影響でやや鬱に沈みかけていた心情を持ち上げる効果もあったように思われる。

 展覧会の見学を終えると一旦ホテルに戻ることにする。コンサートはサントリーホールで19時からなので、それまで一休みすると共に原稿入力などを行うことにする。途中で入浴可能時間となったので、疲れが出ない程度にさっと汗を流しておく。

 

上野で夕食を摂る

 17時前になったところで、上野で夕食を摂ることも考えてホテルを出ることにする。上野駅2階のレストラン街を物色。実は気分的にはつばめグリルに立ち寄りたいと思っていたのだが、つばめグリルは数人の待ち客がいる状態。あまり長く待つわけにもいかないので、行列のなかった「かつくら」に入店する。京都のとんかつ店の東京店に入店するというマヌケな話だが、贅沢も言っていられない。ロースカツ定食を注文する。

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上野のかつくら

 まあ料理柄、可もなく不可もなくといったところだが、野菜中心の具だくさんな白味噌の味噌汁は京都のとんかつ屋らしい。ただ同じかつくらでも関西の店に比べるとCPの悪さを感じる。これは東京という土地柄の恐ろしいところか(すべての料金に土地代が乗ってくる)。

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ロースカツ定食

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デザートにゆずシャーベットをつける

 トンカツの後にはゆずシャーベットも頂いてサッパリしたところでサントリーホールを目指す。2日連続のサントリーホールである。平日の帰宅ラッシュ時なのか、地下鉄が混雑しているのが鬱陶しい。もっともこんな混雑、東京の本来のラッシュからはほど遠いのは十分承知しているが。

 

東京フィルハーモニー交響楽団第928回定期演奏会

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指揮:ミハイル・プレトニョフ
テノール:イルカー・アルカユーリック
新国立劇場合唱団
東京フィルハーモニー交響楽団

ビゼー:交響曲第1番
リスト:ファウスト交響曲

 ビゼーの若き頃の交響曲は、かなり古典的な様相の音楽である。しかしプレトニョフはこの作品を非常にロマンティックに演奏している。特に印象的なのは第二楽章の美しさ。徹底的にエレガントでロマンティックであり、非常にドラマチックな演奏となった。

 後半のファウスト交響曲は曲自体が冗長に過ぎるのが否定できない。特に第二部などは美しいと言うよりも退屈というしかない部分がある。プレトニョフの演奏はメリハリを付けて退屈させないように配慮していたようなのであるが、それでもこの曲自体が持つ欠点を完全には解消できていなかったようである。だが曲が後半に進むにつれて引き締まってきて、フィナーレの合唱も加わった部分はかなりゾワゾワと来る感動があったのは事実である。

 演奏自体はなかなかだったと思うが、どうもリストの曲とは私は以前から相性が今ひとつのようである。彼の曲は構成感が緩すぎるんだろうか? 有名なピアノ協奏曲でも結構退屈したりするから。


 コンサートを終えるとホテルに戻る。途中でスーパーに立ち寄って明日の朝食を、バーガーキングで夜食を購入する。バーガーキングのバーガーは値段も高めだが、サイズもキングサイズ。味はまあまあ(マクド以上モス未満)だが、一緒に買ったチキンナゲットはまずかった(マクドレベル)。

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この日の夜食

 ところでバーガーキングは日本で苦戦しているのか、撤退が相次いでいるとか。ただこのバーガーを見ているとそれもさりなんという気がする。日本市場をなめてかかってアメリカ流をそのまま導入すれば良いと考えていたのだろう。私がコンサルするならば、とにかくバーガーのサイズを小さくして価格を下げることを提案する。また日本向けにカスタマイズした商品の投入も必要だが、そこまでして日本市場を取りに行くよりは、傷の浅い内にさっさと撤退するという経営判断なんだろう。どうもアメ車が日本市場で絶対に成功できないのと同じメカニズムを感じる。

 夜食を終えたところでこの夜はこのまま眠ることにする。実は今日も1万5千歩。疲れはかなり累積している。