徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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山形交響楽団のライブ配信はやや残念な結果に(その後の追加情報あり)

 山形交響楽団のライブ配信が今日あったのだが、残念ながら結果は「失敗」と言わざるを得ないだろう。と言っても演奏がひどかったというわけではない。極めて残念なことにそれ以前の環境面で致命的な問題が多数あった。

 

問題が山積み過ぎた「CURTAIN CALL」のライブ配信

 今回のライブ配信はクラシック専門の配信ページという「CURTAIN CALL」で行われたのであるが、まずそこにたどり着くのが難儀の極み。ライブ配信の直前になって山形交響楽団の案内ページがダウンするというトラブルが発生したので、まずそこまでたどり着けなかった者が多いのではないだろうか。私はTwitterの方から何とか辿ることが出来たが。

 そしてさらに大問題だったのが画質及び音質である。サーバの能力が貧弱なのか放送画質が常に最低レベルであり、ワンゼク画面を引き伸ばしたような荒い汚い画面で見ていると目が痛くなってくる。しかしさらに致命的だったのが音質。最初プレトークが始まった時から蚊の鳴くような声で、こちら側のスピーカーを最大ボリュームにしても何を話しているかが聞き取れなかったから嫌な予感がしたが、そのまま本番に突入してしまった。おかげで第一曲目は演奏の内容はほとんど分からず。放送中に徐々に音量の修正はしたようだが、それでも基本的に音量が小さすぎるのは変わらずで、神尾のヴァイオリン協奏曲は演奏の細かいニュアンスは全く聞こえない状態。しかも放送中に度々映像・音声共に止まる(いきなりクルクル矢印が登場)。我が家は一応光回線であり、マシンはデルのワークステーションを使用しており、回線・マシン性能共に問題はないはずなので、恐らくこれは先方のサーバの貧弱さと推測される。これは音楽ライブ配信サイトとしては致命的。

 荒い画面を通して神尾がなかなか熱演している様子は伝わってくるのだが、肝心の音の方が全く伝わってこない状態はかなりのストレスを溜める。しかもよく見ていると音声と映像に若干のズレがあるのが感じられる。これも音楽配信としては致命的。

 

様々な改善必要点が目につく

 音量についてはマイクのセッティングの問題も考えられるが、そもそも冒頭のマイクを使ったアナウンスでも蚊の鳴くような音しかしていなかったことを考えると、単純にマイクレベルのチューニングの問題と思われ、そもそも放送技術が著しく低いということを感じさせられる。クラシック音楽はダイナミックレンジが広く音量の変化が激しいので、基本の音量レベルを上げすぎていると大音量時に音割れの危険があるので音量レベルを低めに設定することは良くあるが、それにしても度を超しているというものである。恐らく事前にテストさえしてないのだろう。クラシック専門ストリーミング配信を名乗っている割にはあまりにお粗末に過ぎる。

 サーバの能力に関しては想定外の多数の観客が視聴したためにアップアップになった可能性があるが、視聴者数は2千人程度で、ホールの収容人数及び午前中にあった東京交響楽団のライブ配信の視聴者数(5千人を超えていた)などと比較した場合、これで送信に問題が生じるようなら能力的に問題外と言わざるを得ない。

 ページを見た時にラインナップに大阪フィルの名前が見えたことから、来週の大阪フィルの定期演奏会はここで配信されるものと推測されるが、大阪フィルは山形交響楽団よりも知名度が遥かに高い上にそもそもフェスティバルホールを訪れる人数だけでも2千人を超えるという人気オケであることを考えると、これは本番に著しい不安を感じずにはいられない。

 私は日本においてもクラシックのライブ配信というものはもっと行われるべきと考えている。そうなった場合にYouTubeやましてやニコニコ動画では諸々の問題が多すぎると感じているので、専門サイトの存在は不可欠と考えている。しかし紛いなりにもクラシック専門サイトを名乗る存在がこれでは多くの懸念を否定できない。

 

演奏の内容については・・・

 結局は残念ながら前半の二曲は「鑑賞」というレベルに達しなかったので感想の書きようがない(謂わばコンサートに行ったら隣にドタバタとやたらに騒ぐおかしな客がいたために音楽を全く集中して聴けなかったという状態に近い)。

 どうやらTwitterでも「音量が小さすぎる」という意見が大量に寄せられたようで(私も書いた)、ラストのシューマンは音量面は解消したのであるが、残念ながら良い音声とは言いがたいものでもあった(音の広がりが全くなくモノラルに近い)。恐らく遠くのマイクだとレベルが低いので近くのマイクに切り替えたものと思われる。何にせよクラシック専門ストリーミング配信としては厳しいことを言わざるを得ない。

 

 さてメインのシューマンは小編成オケらしくコンパクトでまとまりのある演奏であった。アンサンブルに若干の雑さが垣間見える場面が皆無であったわけではないが、概ね良好な演奏であったように感じられた。阪の指揮は奇をてらわないオーソドックスなもの。その辺りはこのオケのカラーとも合っているように感じられた。シューマンの曲は構成自体にやや難があるので、下手をすれば弛緩した冗長なものになりかねない危険もはらんでいるのであるが、そこのところは上手く処理していた印象である。

 

 神尾の協奏曲の時点では視聴者は2千2百人ほどいたのだが、後半のシューマンでは1千6百人ほどに減っていた。神尾のファンが前半だけで満足して離脱したのか、前半の音のひどさに愛想を尽かして逃げ出した客がいるのか、その辺りは定かではないが、折角のライブ配信でしかも山形交響楽団の熱演をつまらぬ問題でふいにしては残念に過ぎる。

 

追加情報(3/23)

 カーテンコールのサイトがリューアルされ、山形交響楽団の演奏会もアーカイブとして4/5まで配信されています。ライブ配信では問題のあった音量についても修正されているようですので、視聴をお勧めします。

curtaincall.media