さて、2020年度終了に際しての本年度のベストライブ・・・と言いたいところだが、今年はコロナでコンサートは壊滅的状況。国内オケでさえ春から夏にかけてはコンサートが出来ない状態で、それがフル編成でようやく開催可能となったのは冬になった頃という状況、来日オケに至っては本年度はコロナ騒動前の1月に来日したフィルハーモニア管と11月にほとんど奇跡のように公演を実施したウィーンフィルの2つのみという状況。当然のように今期はまともなチョイスにはなりようがないという悲しいところです。
ベストライブ
そんな中で強引に選択すると、実質的にウィーンフィルのぶっちぎりにならざるを得ない状況があります。とは言え、本年の2件は例年のベストライブと比較しても決して遜色のあるものではありません。
第2位
エサ=ペッカ・サロネン指揮 フィルハーモニア管弦楽団
とにかく野生の雄叫びのような「春の祭典」が見事すぎた。圧倒的なパワーなのだが、それが決して雑にはならないという技量の高さに驚かされた次第。ドッシリとした安定感と漲る緊張感の中で繰り広げられるサウンドスペクタクルにはただただ呆然とするばかりであった。また庄司のヴァイオリンの妙技についてもまさに圧巻であった。場内も珍しいぐらいの大盛り上がりで、春先からこんな名演が飛び出すとは今年も春から幸先が良いと、その後の名演続出に期待したのであるが・・・。
第1位
ワレリー・ゲルギエフ指揮 ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
まちがいなく中止だと思っていたのだが、まさかの公演実施には驚かされた。しかしこの異常な事態の中でウィーンフィルもゲルギエフも並々ならぬ気合いが入っていたことがビンビンと伝わってきた。以前より何かと「手抜き」が言われることの多いゲルギエフとウィーンフィルなんだが、彼らの本気モードはこんなにもすごいのかと圧倒された。「悲愴」の圧倒的な美しさは従来の概念を覆すような感動的なものであり、心の底から揺さぶられた。またマツーエフのピアノの美しさも極めて印象的であった。単に今年のナンバー1というだけでなく、文句なく私が今まで聴いたウィーンフィルのライブの中でもぶっちぎりのナンバー1であった。
ワーストライブ
今年はこういう状況ですので、あえてワーストとして上げるほどの迷演はありません。ただそんな中でワーストとはまた異なるニュアンスのものとして番外編を一つ挙げておきます。
番外
小林研一郎指揮 読売日本交響楽団
コテコテのコバケン演歌むき出しの「英雄」だったんだが、これがどうしてどうして、ややゲテモノ感はあるものの意外に面白い演奏だった。特に第二楽章のこぶしの回った(ように聞こえてしまう)葬送演歌はまさにコバケン節の神髄であった。正直なところコテコテのコバケン演歌は私は得意ではなかったのだが、この公演の前の大フィルとの「マンフレッド交響曲」といい、曲によっては意外にはまる(ただしベートーヴェンの4番に関しては「?」だったが)ということに気づいた次第。
以上のように今期はとにかく公演の絶対数が少なすぎるのでまともな選定とはなっていない。しかし上記の2公演共に、例年のベスト5に並んでも何ら遜色のないレベルの公演であるので、その点についてはありがたいところであった。
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