徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

2年ぶりのPACオケはインキネンの元で鮮烈なサウンドを聴かせてくれた

かなり久しぶりのPACオケを聴きに行く

 今回はPACオケのコンサートに出向くことにした。PACオケを聞くのは実に1年以上ぶり以上になる。ザクッと調べると前回は2020年度の2月にミラノフ指揮のものに行ったっきりである。となると1年どころかまる2年か。やはり関西フィルや大阪フィルのコンサートさえ多くをお布施にしてしまった状況下では、なかなかPACのチケットを買うという選択肢はあり得なかった。

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 ちなみに本来は先月のチケットを取っていたのだが、カンブルランの来日が中止になってしまって指揮者が下野に切り替わったことで、下野の展覧会の絵ならわざわざ危険を冒してまで出て行くまでもないと見送っている。しかし今月はインキネンは無事に来日したということなので、それなら出向くかということになった次第。

 移動は例によって車。土曜の午前中に出発するとまずは西宮の前に神戸を目指すことにする。どうせなら神戸市立博物館で開催中の「ミイラ展」を見学してからコンサートに行こうという考え。しかしここのところ阪神高速は慢性のひどい渋滞であるが、今回ももろにそれが牙を剥いた。須磨の料金所を過ぎた途端に道路は大渋滞で動かなくなる。結局は湊川で見切りを付けて高速を降りるが、下道とて順調と言い難く、いきなり神経を使う運転を余儀なくされる。目的地である神戸市立博物館に到着したのは予定よりも数十分遅れ。

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予定よりもかなり遅れてようやく目的地到着

 

 

 ところで今回の神戸市立博物館の「ミイラ展」、CTスキャンによる分析の結果判明したミイラの内部や、被葬者についての話を紹介と聞いた時に「あれ? この展覧会、どこかで見たことがあるような」と感じた。もしかして巡回展で以前に見学してるのではと思ったのだが、よくよく考えてみるとこの2年ほど、東京などには全く行っておらず、巡回展の類いで関西以外で見学したものはといえば、2019年12月に九州交響楽団のコンサートに行ったついでに立ち寄った「挑む浮世絵」展ぐらい(現在、京都文化博物館に巡回中)。

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 それにも関わらずこの既視感は何なんだろうとの戸惑いは大きく、結局は過去のアーカイブをひっくり返した結果、ようやく判明したのは昨年の11月の鹿児島遠征の最後に神戸に戻ってきてから立ち寄った兵庫県立美術館での「ライデン国立博物館所蔵古代エジプト展」で同じくミイラの内部分析の結果が紹介されていたということだった。

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 これでようやくスッキリした。なおこの時には早朝からの鹿児島帰還で相当に疲労が心身共に限界に近いレベルに来ていたために、頭が半分ボケていてうろ覚えのような感じで記憶が今ひとつ不鮮明だった模様。まあとりあえずこれで納得はいったし、本展は初見学であるということがハッキリした。

 なお本展も時間指定前売り券なども発売されていたようなので、飛び込みだと待たされるようなことになると難儀だと思っていたが、幸いにして私の到着時には内部はそんなに混雑しておらず問題なく飛びこみでもすぐに見学できた。

 

 

「大英博物館ミイラ展 古代エジプト6つの物語」神戸市立博物館で5/8まで

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 近年の科学技術の進歩によって、CTスキャンを用いた画像解析によって古代エジプトのミイラの非破壊調査が可能となった。本展では大英博物館が所蔵する6体のミイラについて、その解析結果を中心に紹介、当時のエジプトの人々の生活やミイラに纏わる文化などを紹介する。

 本展に紹介されたミイラの主の年代及び履歴は様々である。最初に登場するのはどうやら役人だった人物で、その後は神官2名、さらに高貴な人物であったと思われる女性のミイラに、幼い子供のミイラ、最後がグレコ・ローマン時代(エジプトがローマに統治された時代)の若い男性となっている。年代としてはかなりの幅があるのであるが、基本的なミイラ文化はあまり変化してないということがある種の驚きはある。ちなみに最後の6体目のミイラに関する展示部分のみが撮影可。

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この手の副葬品類いの展示が主

 ミイラ以外の展示物はいわゆる副葬品の類い。子供のミイラにはやはり子供らしく玩具なども備えられていたというのがいかにも。なおどのミイラも護符の類いが必ず添えられており、ミイラが古代エジプトにおける宗教観、死生観の核でもあることが覗える。これ以外のいわゆるスカラベやらミイラの内臓を納めるための神々をかたどった瓶などは定番中の定番。毎度のことであるが異様に細工のレベルが高いのと色彩などが鮮やかなことに驚かされる。

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ミイラ

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そして石棺

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ミイラの装飾品

 興味深かったのはミイラマスクについて、私は有名なツタンカーメンの黄金マスクとかのいかにもエジプト的な装飾のものをイメージしていたのだが

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ツタンカーメンの黄金マスク(複製品)

 もっと写実的というか、生前の人物に似せたようなものも存在するということが非常に興味深かった。どうも後半の方の展示で登場していたようなので、時代の変化もあるのかもしれない。

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結構写実的なミイラマスク

 なお肖像画も登場しているのであるが、以前からよく言われているように男性の顔が見事なほどに阿部寛であるのは笑えるところ。

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阿部寛的な男性肖像画

 

 

昼食は阪急西宮ガーデンズで摂ることに

 これで本展の見学は終了、次はコンサートホール移動がてらにどこかで昼食を摂りたい。なお駐車場に戻って車を出そうと思ったところで、博物館のロッカーに鞄を入れっぱなしで忘れてきたことに気づいて引き返すなんてドタバタまであった。しかし実際にはドタバタはこれで終わらず、阪神高速をみたら「京橋周辺渋滞中」とのことで全く車が動いておらず、高速利用を断念して下道を延々と走るということを余儀なくされてしまった。

 しかし下道は下道で混雑中で、神経は磨り減るし時間は予定よりもドンドンと遅れていくという羽目になり、最初に目論んでいた店は到着する前にランチのラストオーダー時間を迎えてしまうという事態になって断念せざるを得なくなる。結局は早めにホールの駐車場に車を入れてしまって阪急西宮ガーデンズに朝食に出向くことになる。

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大ホールはまだ開場前

 レストラン街を一回りするが待ち客が多い店も少なくない。結局選んだのはこの日の気分が洋食になっていたこともあり「昔洋食みつけ亭」。エビフライとビーフカツ、ハンバーグがセットになった「みつけ亭デラックスセット(1480円+税)」をチョイスする。

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西宮ガーデンズの「昔洋食みつけ亭」

 スープとライスのセットであるが、スープはごく普通のコーンポタージュ。太めのエビフライがまずまず美味い。なお最近は私は年のせいか牛肉は胃にもたれやすくなっている(若い頃と同じ調子で焼肉を食ったら、後で猛烈な吐き気で体調を崩してしまったこともある)ので、ここのレア度の高いビーフカツは注意していつもよりも多めにしっかりと噛み砕いてから飲み込むことにする。レア度が高いこともあって柔らかくて美味い。いわゆる今流行のタイプのビーフカツである。なおハンバーグについてはこれという特徴はなし。

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まずまずのデラックスセット

 いわゆる町の洋食屋さんとしては大きなインパクトはなく普通、ただしファミレスなどよりはレベルは上。と言うことでファミレス以上本格洋食屋未満というところか。まあこの手のモール内の飲食店としてはこんなものだろうというところ。価格がやや高めに感じるのはモールの寺銭が反映か。これ以上を望むなら独立した店を探す必要があるが、この界隈にそのような店の心当たりはない。

 とりあえず昼食を終えると外は雨がぱらつき始めたので、なるべく屋根のあるところを通ってホールに向かう。

 久しぶりの兵庫芸文であるが、PACオケはCPが高いこともあるのか、場内は満員であった。

 

 

インキネン シベリウス&春の祭典

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久しぶりの兵庫芸文大ホール

指揮/ピエタリ・インキネン
ヴァイオリン/川久保 賜紀
管弦楽/兵庫芸術文化センター管弦楽団

シベリウス : 交響詩「フィンランディア」op.26
シベリウス : ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47
ストラヴィンスキー : 春の祭典

 フィンランドの新進気鋭の若手・・・と数年前には言われていたが、今は堂々たる中堅になっているインキネンによるご当地ものシベリウスと、ストラヴィンスキーのプログラム。

 一曲目のフィンランディアからかなりガンガンとぶちかましてくれるという印象。昨今は次々と新進気鋭の若手指揮者が台頭してきている密かな指揮者大国フィンランドであるが、フィンランドの若手指揮者の特徴はいささか極端にも感じるほどの豊かな感情表現がある。そこは「元祖新進気鋭の若手指揮者」とも言えるインキネンも同じ系統を汲んでいる。振幅はなかなかに激しく、謳わせるところ徹底的に謳わせる指揮。

 PACはメンバーの入れ替わりが激しいので、2年前の私の記憶にあるPACサウンドからまたかなり変化している。基本的に若さが反映して管楽器がやや強めであるバランスは相変わらずである。またいささか弦に硬質さも感じられた。

 ヴァイオリン協奏曲については、結構曲者のこの曲を軽く演奏してしまう川久保はさすがだろう。本当に最近の日本の若手奏者はテクニックの面では欧米に全くひけをとらないレベルになったと感じるところである。なお若手に多い「上手くはあるが無機質で機械のよう」という演奏にならないところは、さすがに川久保は十二分にキャリアを積んできたということだろうか。もっとも過剰に謳いすぎるところもないバランスである。

 なおアンコールにコンマスとのデュエットで「シチリアーナ」を演奏したが、これもなかなかに良かったところ。

 後半は「春の祭典」だが、この炸裂して叩きつけるような音楽は、如何にも若いPACには向いているのを感じる。いささか元気さ過剰気味にさえ思える管楽陣が、この曲の場合には爆発するエネルギーが音楽にしっくりとくる。しかもインキネンはその辺りも心得た上で、意図的に暴発気味にオケをコントロールしている感がある。

 結果としてかなり鮮烈にして生命感に満ちたまずまずの演奏になったというところ。まさに「血湧き肉躍る」というところだろうか。当時に「芸術の破壊だ」と場内が騒然となったというのもさりなん。このむき出しの生命感は当時の芸術界においては「非芸術的」と判断されても然りである。

 アンコールはフィンランド出身のインキネンらしく「悲しきワルツ」。これが先ほどのハルサイでの熱狂に対するクーリング効果を持つと共に、今回のプラグラムでは感じられなかったPAC弦楽陣のしっとりとした色気ある音色を引きだしており、「今のPAC弦楽陣はこんな音色も出せたのか」と驚いた次第。円熟味を増しつつあるインキネンの面目躍如な感があるが、同時にPACに対して決して若手の教練オケと侮るなかれということを感じさせられた。


 久しぶりのPACを堪能する帰途についたのであるが、この行程も途中で阪神高速の異様な状態に巻き込まれて、家に着いた時には心身消耗しきって夕食をまともに摂るための気力さえ残っていない状況、結局はそのままかなり早めに寝床についてしまったのである。つくづく無駄に精神力を消耗させられる阪神高速の渋滞だけはどうにかならないものかと思う次第。高速料金をふんだくりながら、実際には高速として機能していないのだから看板に偽りありである。