METライブビューイングのために神戸へ
この週末はMETのライブビューイングに出かけることにした。プログラムはワーグナーの大作「トリスタンとイゾルデ」。上映時間が5時間を超えるという超大作。おかげでチケットも特別料金。フェスティバルホール会員割引があることだけが救い。
とりあえずネットでチケットを手配すると、上映開始に間に合うように早朝出発。劇場には計算通りに上映開始直前に到着する。

5時間の大作にひるんだか、割り増し価格が響いたか、ワーグナーは難しすぎるのか、理由は不明だが入場者は10人いるかどうかぐらい。かなり低調である。
騎士トリスタンとアイルランドの姫イゾルデの恋愛劇。インタビューで「この作品のシナリオは、愛し合って死んでしまうしかない」と説明していた者がいたが、確かにただそれだけの話である。
METライブビューイング ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」
指揮:ヤニック・ネゼ=セガン
演出:ユヴァル・シャロン
出演:リーゼ・ダーヴィドセン、マイケル・スパイアーズ、エカテリーナ・グバノヴァ、トマシュ・コニエチュニ、ライアン・スピード・グリーン
マルケ王と政略結婚するアイルランド王女イゾルデと、マルケ王の使者として彼女を迎えに行った騎士・トリスタンが誤って媚薬を処方されたせいで激しく愛し合ってしまい。その愛ゆえに最後は破綻に向かうというストーリーの作品。確かにシナリオを要約してしまうと「愛し合って死んでしまう」しかない。
全3幕で上映時間は5時間以上という大作だが、その前半はトリスタンとイゾルデの狂おしいほどの愛の描写が中心で、それがまたワーグナーの音楽のためにド耽美を極めることになる。ワーグナーらしく難解で分かりにくさのあるメロディにも関わらず、とにかく危ない美しさに満ちている。それに乗せてのダーヴィドセンとスパイアーズの美しも力強い歌唱が音楽として圧倒的な盛り上がりを見せる。
第2幕の後半は一転して一番信頼する友と妻に裏切られたマルケ王の嘆きの歌となるのだが、ズッシリとしたグリーンの歌声が作品を引き締める。マルケ王の心からの嘆きがヒシヒシと伝わってきており、実はこの悲劇の中で一番の悲惨な人物は、愛に浮かれている2人ではなく、彼であるのではというのが一番感じられたりする。
演出はかなり大胆なもので、現代劇を思わせるかのような幾何学的な舞台が現実の場面との二重構成となって、登場人物の実際の様子と心理世界を二重表現するような構成になっていたのが特徴的。大胆ではあるが分かりやすくもあり、また最近流行の無理矢理な現代翻案のような不自然さはない。
最後にはあまりに救いのないマルケ王の元に、トリスタンとイゾルデの子供が残るという演出となっておりこれは賛否両論ありそう。まあ私にはマルケ王があまりに救いがなさ過ぎたので、これぐらいの救いは欲しいと言う現代人としての感覚は納得出来るところである。ただワーグナー的な虚無感は削がれることになるが。
本作では特にワーグナーの麻薬とも言われる音楽の官能性が強烈に感じられる作品であった。これは音楽と演者と演出が三位一体となって発揮されたものだろう。そういう点で見ごたえは十二分であった。
ライブビューイングを終えると帰宅前にもう一箇所立ち寄っておきたい。目指すは西宮の大谷美術館。ここは圧倒的に車の方が交通の便が良いのだが、現在の高市による日本人を相手にしたセルフ経済制裁実施中の状況下では無駄にガソリンを使いたくない考えがある。そういうわけで今回は鉄道なのだが、鉄道を利用するとなると阪神香櫨園駅からの歩きとなる。徒歩は10分かかるかどうかぐらいなので、キャリーを引っ張っていない今日はたいしたことがないが、香櫨園駅が普通しか止まらない半端な駅なのが嫌なところ。駅間がやたらに短く、バスよりも遅いと揶揄される阪神の普通列車は無駄に時間がかかる。

大谷美術館は撮影禁止が多いのだが、今回は「遠くから会場全体を撮るのはOK。個別の作品を大写しするのはNG」だそうな。全作品の撮影許可を取っているわけでないからとのこと。まあデザインだけに盗作されるのとかが嫌なんだろう。

「スウェーデン・テキスタイル展 暮らしと自然に息づく北欧デザイン」西宮市立大谷美術館で6/28まで

デザインは専門ではないので細かいことはよく分からないが、フィンランドのマリメッコなどでもあるように、とにかくシンプルでカラフルというのが北欧デザインの特徴のようである。特にその色彩の鮮やかさは目を惹く。北欧といえば白夜の薄暗い国というイメージがあるのだが、その環境でこの感性が育つのは謎なところがある。

会場ではモチーフ別に分類してあったが、「日常生活」をモチーフにした作品が非常に楽しげで目を惹いた。また幾何学模様の作品などはいかにも北欧デザイン的である。これ以外にも伝説をモチーフにしたものなどもあり「ニルスのふしぎな旅」(がちょうに乗るあれです)がモチーフになっている作品など、思わずにんまりするところ。



最後のコーナーはファッションや家具なども登場。これらもシンプルながらも大胆で洒落ている。デザインはズブシロの私でも唸るようなセンスを感じさせるものであった。

なおこの手の展覧会のお約束として、物販コーナーはかなりの充実。もっともどうしてもやや割高な商品ばかりなので(アホノミクス円安も影響しているだろう)、私は何も買うことはなかったが。

これで本日の予定は終了。帰路で「あおやま菓匠」の「阪神とらの巻(300円)」と三ノ宮駅で一貫楼の豚まんをおみやげに仕入れて帰宅するのである。あっ、昼食を摂ってなかった・・・。

