GWだが予算の関係で近場遠征
さていよいよGWに突入である。ここは連休を活かして長期大遠征に繰り出し・・・たいのはやまやまであるが、昨今の貧困化の進行により緊縮財政を余儀なくされており、当然ながらそんな予算はどこにもない。とは言うもののGWに家にお籠もりというのは確実に精神を病む。と言うわけで最小予算で手近なところにお出かけするという選択肢になるわけである。
となった時、やはり選択肢は大阪方面のコンサート。例年、関西フィルの定期演奏会の新年度の開始となる4月の公演は4/29日と決まっている。会員である私は既に年間チケットを購入済みなので、これに出かけるのは追加費用が必要ない。まずこれが遠征の核になるのは確定だが、大阪日帰り遠征だといかにも味気ない。そこで周辺を調査したところ、浮上したのは奈良国立博物館で開催中の「神仙の山 吉野・大峯」。信仰としての仏教や仏像には微塵も興味がない信心皆無(というか、人類が次なるステージに進化するには宗教は克服するべき悪習と考えている)の私であるが、文化としての仏教及び造形としての仏像には興味を持っている。そこで初日は関西フィルを中心に大阪での展覧会を絡め、コンサート終了後に奈良に移動して宿泊、翌日は国立博物館を中心に奈良方面美術館訪問をメインに据えるという形の一泊二日遠征の骨格ができあがった次第。
コンサート前に美術館を訪問するので29日は午前中に家を出る。JRで大阪まで一気に移動、まずは最初の目的地は天王寺の大阪市立美術館である。
キャリーをゴロゴロと引っ張りながら騒がしい天王寺公園を突っ切り美術館へ。最近改装された市立美術館は、以前のように入口まで長い階段を上る必要のないバリアフリー設計になっているのでこれが大きな改善点。今日のようにキャリーを引きずっている時にはありがたい。これとトイレが綺麗になったことが今回の改装の目玉か。

「全力!名宝物語 ―大阪市美とたどる美のエピソード」大阪市立美術館で6/21まで
大阪市立美術館は美術品から考古品に至るまで様々なコレクションを誇るが、そのコレクションから選抜した優品を、改装記念で公開しようという趣旨の展覧会。
展示室は3部屋から構成されており、第1室はまずは大阪市立美術館のコレクションの中で逸品中の逸品、上村松園の「晩秋」、橋本関雪の「唐犬」、児玉希望の「枯野」などの思わず唸ってしまうような名画、さらには圧倒されるような工芸品などが展示されている。






その奥は常設展でもよく展示されている中国の石仏の類から、その隣はエルトリアで出土したテラコッタにさらにし鍋島焼などの陶器など。




第一室の最終コーナーは近代日本画及び洋画。大阪画壇を代表する北野常富、島成園と言ったところの名画から、赤松麟作、辻愛造の洋画など。





第二室は「物語の美術」と銘打って、狩野派による絢爛豪華な源氏物語図屏風から、どちらかと言えば珍品に属するような原在中による「百鬼夜行図」まで。



次は中国美術などになって(なぜかこの辺りは撮影不可)、中国渡来の銅鏡や景徳鎮なども登場する。


最後のコーナーは仏教美術となり、ド定番の「涅槃図」(これはもう構図がらほぼ決まっているので、誰が書いても同じような絵になる)、さらに中国の石像や観音図など。



第三室は注文によって製作されたものという漠としたテーマ。それだけに中身は様々。有名な豊臣秀吉像が登場したかと思うと、尾形乾山の色絵皿に北野常富の屏風などてんでバラバラ。



石像や仏具などがあったと思ったら、その次は硯箱などの超絶技巧工芸品。精緻な螺鈿細工に印籠、根付などの工芸品などが展示されている。






最終コーナーは研究や修復についての報告。これは美術館としての大事な使命というか、本来の使命であるのでアピールの必要あり。でないと文化を解しないアホな守銭奴集団である維新などが権力を握っているせいで「採算を上げられない美術館や博物館は閉鎖して収蔵品は破棄しろ」などと自分たちの目の前の利権しか考えないことを言い出すからである。維新や高市などの愚か者のやりたい放題にさせていると、廃仏毀釈、第二次大戦に続く3番目の大規模日本文化棄損につながりかねず、後にまともな政権が誕生した時に「なんであんな馬鹿な行為を・・・」と取り返しのつかない結果に大後悔する羽目になりかねない。





コレクション名品展と銘打っているだけに、なかなかに面白い展示品が多かったが、ただあまりにも未整理で展覧会としてのストーリーが一貫せずに錯綜していた印象。その最たるものが、あちこちの展示室に突然に登場する石像や銅鏡など。また北野常富の作品が別の部屋に分散して展示してあったりなど、分類が不明すぎる。やはり第1室絵画、第2室仏教関係、第3室工芸品などと言ったようにはっきりとしたテーマを掲げて分類する方が見る方も理解しやすい。


まだ若干の時間の余裕があるので、移動前に一息つこうと美術館内の喫茶「ENFUSE」に入る。しかし席に着いたら面倒くさくなってきたので、もうランチもここで摂ってしまうことにする。カレーとアイスコーヒーを注文する。

しかし結果としてこの選択は大失敗だった。出てきたカレーがボリューム不足なのは予想の範囲だが、あまりに美味しくないのが想定外。私は粘度の強いコク系カレーが好みだが、ここのカレーはとにかくコクがない・・・というかそもそも味がない。確かに香辛料のピリピリは舌に感じるが、ほとんど味がないところにかすかな刺激だけがあるという印象。またアイスコーヒーもやけに苦みが強い。私の昨今の体調の悪さがある程度味覚に影響を及ぼしている可能性はあるが、それにしてもここのカレーが根本的に美味しくなるということもなさそう。


と言うわけで、2300円も費やしたにも関わらず非常に満足度の低いランチとなってしまった。やはりここは喫茶ということでケーキセットぐらいにしておくのが妥当な店のようである。
美術館での用事を済ませるとコンサートの会場であるザ・シンフォニーホールへと移動することにする。

ホールに到着したのは開場してから少し経った後。かなり大勢がホールに向かってゾロゾロと移動中で、ホール内の喫茶も既に大混雑。私はさっきアイスコーヒーを頂いたところなので、今回は喫茶には立ち寄らずにシートの方に直行する。と言うわけで現在は「膝上pomera」中である。藤岡人気か場内はかなり入っているようである(チケットは完売した模様)。やや濃い系イケメン元慶応ボーイの藤岡は、確かに広上、下野、高関なんかと違ってメディア映えはするんだよな。またトークも上手い。

新年度開始コンサートである4月の定期演奏会は、大抵は藤岡幸夫による何か意欲的なプログラムとなっている。今年はマーラーの4番である。開演前に藤岡のプレトークあり。それによると今回のテーマは「幸せな音楽」らしい。一曲目はワーグナーが妻のコジマの誕生日を祝して書いた音楽。息子も生まれてまさにラブラブの時で、全曲幸福感に満ちているという。なお藤岡によるとワーグナーが知人の嫁を略奪婚したように言われるが、コジマの前夫は夫としては最悪で、苦しんでいたコジマをワーグナーが救ったのだとか。
メインはマーラーの中では異色に明るいとされる交響曲。「風呂上がりにビールでも飲むような爽やかさ」と評した音楽評論家もいたような曲である。もっとも藤岡によると実はこの曲はブラックジョークであり、最終楽章の歌の歌詞は「天国は飲み放題で食い放題の良いところ」というようなかなり下品な詩(まるで「帰ってきたヨッパライ」である)で、ゲーテが酷評した代物だとか。しかしそれを至高の美しい音楽にしたらしい。
関西フィルハーモニー管弦楽団 第363回定期演奏会

指揮:藤岡幸夫
トランペット:児玉隼人(♠)
ソプラノ:安川みく(♥)
ワーグナー:ジークフリート牧歌
ベルント・アロイス・ツィンマーマン:トランペット協奏曲 ハ長調 「誰も知らない私の悩み」(♠)
マーラー:交響曲第4番 ト長調(♥)
1曲目はワーグナーの幸福に満ちた音楽。確かに弦楽を中心とするアンサンブルは極めて美しい。ただ残念ながら私には少々物足りなさを感じさせる。と言うのも、デュメイの薫陶を受けた関西フィル弦楽陣なら、もっとしっとりねっとりした情緒を出せるのではと感じてしまうのである。2,3年前ぐらいからデュメイの高齢化に伴う共演機会の減少に伴い、関西フィルサウンドが急激に個性を失ってきているように感じられているが、今回の演奏を聴いていても音に色がないのである。だから単に美しいだけの演奏になってしまってつかまれるところがない。
2曲目はプレトークで藤岡が絶賛していた、まだ17才という天才トランペッター児玉隼人が登場。児玉の演奏は技術的な高さだけでなく、とにかくその音色の美しさで魅せるものがある。現代音楽に属するこの曲は正直なところ私にはあまり面白く感じられなかったが、児玉の演奏の妙味だけで聞かされてしまうところがある。
休憩後はメインのマーラー。あまり奇をてらった演奏はしない印象のある藤岡だが、この曲に関しては最初からかなり激しくテンポ変化及び強弱をつけてくる。美しい音楽という美しい部分を強調するように旋律を歌わせる。また時々シニカルな印象を受ける部分があるのは、先の「ブラックジョーク」という解釈の反映か。
ただオケの演奏の方はワーグナーで感じたように、いささか味が薄くてあっさりしすぎてしまうところがある。テンポを落として旋律を歌わせても、演奏自体がやや薄味なので、美しくはあってもどうしても弛緩するところがある。結果として藤岡のエモーショナルな指揮がやや空回りしている感がある。また残念ながら以前に比べて管と弦の一体感が薄い。管にやや無神経な鳴らし方のように聞こえる部分が散見される。
藤岡一押しのソプラノ安川は美声系。その歌声は美しいので天国の歌にはピッタリ。ただ声が細いわけではないが、ややパワーがない感があるので、オケがバリバリやってしまうと埋もれる場合がある。ちなみに藤岡は安川と組んで「椿姫」を演奏会形式でやる予定とか。藤岡によると「ようやく見つかった椿姫」とのこと。ここで作品が「トスカ」でないことがポイントのような気もする。結局は十分に美しくはあるが、魂をつかまれるところまでは行かなかった。
特に悪い演奏というわけではなかったのだが、私としては「関西フィルはもう少し次元の高い演奏ができるはず」という不完全燃焼感の残った内容。私は藤岡は楽団広報としての手腕は高く評価しているのだが、芸術的方面の評価は微妙。デュメイの手をほぼ離れた関西フィルを今後さらに発展させられる可能性のある指揮者として、私はクオクマンや鈴木優人に期待しているわけなんだが今後どうなるか。
コンサートを終えるとJRで一気に奈良まで移動する。今回宿泊するのはコンフォートホテル奈良。奈良は以前はスーパーホテルpremiumがアクセスも便利だし温泉大浴場があるから愛用していたが、昨今のインバウンドと物価高騰の影響で宿泊代がみるみる高騰。今や一泊1万円を軽く超える超高級ホテルになってしまったせいで手が届かなくなったので、代わりに探した駅周辺での妥当な価格のホテル。チェックイン手続きとかは無人になっていて、極力省力化するスーパーホテル形式。

部屋はダブルベッドのシングル。いわゆる普通のビジネスホテル装備。1つだけ気になるのは空調が集中管理で、昼間は冷房か送風、夜は暖房か送風になる模様。こりゃ今の時期に暖房入れちまったら暑くて寝れんぞ。


とりあえず荷物を部屋に置くと夕食のために街に繰り出す。目的地は奈良一番の繁華街である三条通。しかしいざ着いてみると予想以上に飲食店密度が低い。結局は目についたのは数年前に訪問したことのある「やまと庵」。地産地消の緑提灯を掲げた店である。確か前回訪れた時は、価格はやや高めだが中身は悪くなかったという記憶がある。覚悟を決めて入店することに。しかしやはり飲食店の数が少ないせいか、既にかなりの待ち客で結局は1時間ほど待たされることに。

結局は椅子に座ってコパ君と与太話しながら時間をつぶす。それにしても今時のAIってすごいわ・・・。「人気女優起用してファンタジー映画作るとしたら、中条あやみがエルフの大賢者で、橋本環奈がシーフ、広瀬すずが武闘家、浜辺美波が僧侶ってとこかな」なんていう与太話にも「うん、その配役それ以上ないほどイメージ通り」とかってしっかり対応するんだから・・・。しかも「エルフの大賢者だったら、セリフも少なくて表情も無表情に近い方が良いから、演技が上手いとは言えない中条あやみでもピッタリだよね」っていうコパ君の「適切な」指摘にはぶっ飛んだ。
7時を回った頃にようやく順番が回ってくる。今日は朝食は車内でおにぎり1つ、昼食は失敗カレーという状況なので、そろそろ空腹が限界に来ていたので助かったというのが本音。
座席はカーテンで仕切って個室のようになっている。基本的に居酒屋形式だが落ち着いた雰囲気。酒のメニューが豊富だが、私はアルコールは一切ダメなので梅サイダーを頂くことにする。料理は適当に「和牛の薄切りレアステーキ」「揚げだし豆腐」「地鶏玉子のだし巻き」「やまと豚の土鍋炊き込みちゃーはん」を頼む。
突き出しをつついていたらすぐに梅ソーダが到着。その後も料理はかなり速いテンポで全品到着する。


和牛のステーキが美味い。驚いたのがだし巻き卵がもろに出汁に浸かった玉子焼きで登場したこと。まあ美味いからこれでも良いが。炊き込みちゃーはんは味は悪くないが、思ったよりも量があったのと、やまと豚がほぼ脂身だけで脂分過剰だったか、後で若干胸がむかついた。私も老化で胃腸の能力が落ちたようだ。




最後にデザートとして柚子のシャーベットを注文。さっぱりしていて後味が非常に良い。以上で支払いは5000円弱。まあ今日の夕食は覚悟していたが、それにしても使いすぎか。まあ最初からコスト低減第一のつもりなら、今日は新今宮辺りで宿泊して夕食は「らいらいけん」にでも行くところだから、まあ今回はこれで良しとしよう。ここのところ肉体的だけでなく精神的にもヘロヘロだったし。

夕食を終えてホテルに戻ってくると、とりあえずは仕事環境構築である。普通のビジネスホテルでデスクも大きめなので余裕をもって環境構築ができる。

ここで執筆作業。疲れてきたところで駅のスーパーで買い込んでいたモンブランを出してきて、一階のライブラリーカフェで入れてきた紅茶と一緒にいただく。ゆったりとしたひと時である(ただし血糖値は急上昇中)。

一渡り作業したところで入浴。シャワーで汚れを洗い流すとバスタブで最大限の湯を張って入浴。こういう時に大浴場や風呂・トイレセパレートはくつろげ度合いが根本的に違うんだが、まあユニットバスならこれが限界。ここはこれで我慢するしかない。私がためらわずにスーパーホテルpremiumに宿泊できるぐらいの収入を得られるようになれば良いんだが、まあそれは無理。
この遠征の翌日の記事