熊本城の被害は私の想像を超えていた
熊本城の最寄りで下車すると、熊本城の地震での被害の惨状が目に飛び込んでくる。東側の高石垣については大きな崩れは見られないが、その上の塀はほぼ全面的に倒れてしまっている。
ここから北側に回り込むが、最も被害が激しいのがこの辺り。熊本大神宮の裏手の石垣が全面崩壊して、石垣上の櫓が熊本大神宮の上に落ちてきて大神宮は完全に押しつぶされてしまっている。ここから棒安坂の間の石垣が一番崩壊が激しく、ほぼ全面的にダメージを受けている。
棒安坂を登って加藤神社に抜けるが、加藤神社から見える天守は瓦が落ちてかなり惨憺たる有様だ。せめてもの救いは、現存の宇土櫓は隣接する長櫓の損壊は見られるが、本体は無事であるように思われること。加藤神社でも熊本城修復の募金を集めていたので、一応募金しておく。
石垣が崩壊して一列だけで支えられている状態になっていた五階櫓がよくテレビに登場したが、それ以外でも戍亥櫓なども石垣崩壊でかなり危ない状況になっている。ここも早急なる作業が必要なようである。なおここまで見ていて感じたのは、後で積み直したと思われる石垣の方が崩落がひどいこと。新しい石垣の崩落に巻き込まれて下の古い石垣も崩落しているケースが目立った。やはり江戸期の穴太衆の技術と、明治以降の建設技術とだと技術のレベルが違うのか。
二の丸広場までやって来たところで県立美術館に立ち寄ることにする。そもそもここの訪問が今回の大きな目的の一つである。ただ灼熱下の熊本城を歩き回ってかなり体が火照っているので、美術館の見学の前に喫茶でケーキセットを頂いてクールダウンする。
ようやく人心地ついたところで展覧会見学。
「ランス美術館展」熊本県立美術館で9/4まで
フランスのランス美術館が所蔵する作品を展示。
バロック・ロココ絵画から始まって、ポスト印象派の辺りまでの作品が展示されているが、どちらかと言えば力点は古典の方にあり、圧倒的に面白かったのはダヴィッドやドラクロワなどの作品。画題にもドラマティックさを感じさせるものであり、なかなかに印象深い作品となっている。
終盤はフジタが晩年に手がけた礼拝堂の壁画装飾などの特集になるのだが、これがまさにフジタの集大成と思わせる内容で、彼が真摯に宗教的テーマに取り組めばこうなるんだということが頷かせられる興味深い作品である。私がフジタに抱いていたやや軽薄なイメージとは異なる内容が、新たな彼の姿を私に見せてくれた。
美術館の見学を終えると二の丸広場を抜けて桜の馬場の辺りまで降りてくる。この辺りは飲食店や土産物屋が並んでおり、おもてなし武将隊の舞台など多くの観光客で賑わっている。暑くて仕方ないので「白玉屋新三郎」で「八女茶のかき氷」を頂く。暑い時の宇治金時ドーピングの一環。いささかボリューム不足であるが、こんなバリバリの観光地店では贅沢を言っても無駄だろう。白玉の味が良かったので良しとしよう。
桜の馬場から表門方向に回ってくる。問題の五階櫓は奥で見えないのだが、その辺りに巨大な鉄骨が見えていることから、応急処置がなされたのだろうと思われる。またこの表門周辺も損害がひどく、崩れてない石垣もかなり孕んでしまっていて手直しが必要な部分が見られるし、馬具櫓は下の石垣が崩れてかなり危ない状況になっている。
熊本城の想像以上の損害状況に暗澹たる思いである。地震の復興に関してはまず第一に被災者の生活再建を急ぐべきであるが、併せて熊本城の再建工事も迅速に開始してもらいたいところだ。このまま放置すると状況は悪化する一方になる。
熊本市街で遅めの昼食を摂る
熊本城を一回りした頃には3時を回っていた。ここに来て昼食をまだ摂っていなかったことに気づく。そこで熊本の繁華街をプラプラと歩くが、ちょうどもう昼食時は過ぎてしまっていて開いている飲食店が少ない。そんな中「天草海士宴」なる店が昼食をまだやっていたようなので入店する。「桜御膳(1000円)」を注文。
いろいろな種類の料理が盛りつけられた御膳で、いずれの料理もうまい。これはランチとしてはお値打ち品だと感じる。ウニ入りのオムライスなんかもこの店の名物らしいが、再訪することがあればそれも食べてみたいところ。
昼食を終えると熊本の繁華街をプラプラと次の美術館まで歩く。次の美術館はビルの3階に入っている。
「かえってきた!魔法の美術館」熊本市現代美術館で9/19まで
映像技術などを駆使して、観覧者が自ら参加する作品を集めた展覧会。自分の顔がポリゴンになったり、ボールの映像が落ちてきたりなど子供でも楽しめる内容。
美術展と言うよりは体感型アトラクションといったところで、夏のお子様向け企画としては良しだろう。これで美術に親しむ子供が増えれば良いが、そちらの効果は少々疑問。
夕食のために八代に戻ることにする
さてここで思案は夕食をどうするか。昼食がかなり遅かったのでまだ腹は減っていないので、熊本で夕食を摂ろうと思うとどこかで時間をつぶす必要がある。とは言ってももう熊本で立ち寄るべきあてはない。しかも午前中からの炎天下の行軍で体力はもう既に限界に近い。結局は「八代でも夕食を摂る店ぐらいはあるだろう」ということでホテルに一旦戻ることにする。
JRとバスを乗り継いでホテルに戻ってくると、ダウンしてしまう前に大浴場で汗を流すことにする。
八代で夕食を摂る
風呂に入ってサッパリすると、部屋で少し体を冷やしてからまだ動ける内に夕食に繰り出すことにする。午前中に市街をうろついた時、ホテルの南側に繁華街があることを確認しており、夕食を取れそうな店も数店目をつけている。
夕食を摂るのに入店したのは「金之助」。郷土料理の居酒屋といったところの店だ。カウンター席に通されると、「馬刺盛り合わせ」「馬すじ煮込み」「サケ握り」を注文。
馬刺しは赤身とタテガミと心臓の3種盛。それぞれ風味が違ってうまい。好みとしてはオーソドックスに赤身が一番私に合うか。また馬すじ煮込みがこれまた非常にうまい。さらに「焼き鳥3本」「揚げ出し豆腐」を追加。
揚げ出し豆腐が結構ボリュームがあるのでこれは注文しすぎだったかと思う。しかしこれもやはりうまい。十二分に堪能したのである。
ボリュームがある上にうまい。以上で支払いは3450円。なかなかにCPも良い。また八代に来ることがあれば立ち寄りたい店だ。
夕食を終えて部屋に帰ってくると体のダメージのせいでグッタリしてしまう。夕食後にもう一回入浴するつもりだったのだが、とてもそんな気が起きない。あの灼熱地獄の下で2万3千歩も歩いたダメージはかなり体に来ている。今日一日でペットボトル何本のお茶を飲んだろうか。体が火照ってる感じでとにかくしんどい。この日はかなり早めに意識を失ってしまう。