翌朝は6時に起床。ただ起床時間前にどこからかドタンバタンとやかましい音が聞こえたせいで早めに目が覚めていた。おかげで懸念していた寝過ごしはなかったが。どうも床の板張り構造が災いしているようだ。
鹿児島空港へと飛ぶ
手早く身支度をすると7時にはチェックアウト。今朝は早朝出発になることが分かっていたから、最初から素泊まりプランにしている。JRで野田駅から神戸空港まで移動するが、列車の接続が悪くて想定よりも時間を浪費する。
神戸空港に到着したのはフライト時刻の1時間ぐらい前。とりあえずあまりうまくないうどんを朝食に摂ってから飛行機に乗り込むことに。
目的地は鹿児島空港。最初は熊本空港を考えていたのだが、人吉に行くのなら鹿児島空港の方が近いため。球磨地方は熊本とはまた別の地域といえるようだ。使用したのは例によってのスカイマークの鹿児島便。フライト中は眠くなってほとんど寝ていたが、鹿児島空港に近づいたところで気流が乱れるのかやたらにガタガタ揺れたのがかなり気持ち悪かった。やはり未だに飛行機自体はあまり得意でない。
鹿児島空港には予定より5分早く到着したらしいが、途中で通路の扉のロックが開かないとかで通路で待たされるトラブル発生。まさかここで5分の調整をしたわけでもないだろうが。
鹿児島空港からの移動はレンタカーを予約してある。貸し出されたのはマーチ。嫌いな車なのにやたらと縁がある車種でもある。
さてこれからだが、実はほとんどノープラン。私も50を越えてから男性更年期うつ(所謂はらたいら病)の傾向があり、かつてのような綿密なスケジュールを立てるための集中力の維持が出来なくなっている。事前調査をしていたらしんどくなってきて、結局は計画というようなものは立たなかった次第。
人吉の老舗うなぎ店「上村」でうなぎを頂く
とりあえずはもうすぐ昼時だし、人吉に直行しようと考える。ノープランと言いつつも実は昼食だけはもう決めている。人吉の「上村」でうなぎを食べようというものである。人吉までわざわざ出張ってきた目的の一つはこれと言っても良い。
九州自動車道に乗ると人吉まで突っ走る。人吉ICに到着したのはちょうど昼時。上村の場所はうろ覚えだったが問題なく到着できた。ただ駐車場探しに少々ウロウロ。第一、第二駐車場は満車だったが、少し離れた第三駐車場に空きがあったのでそこに駐車。店の前には既に待ち客がいたが、幸いに私の到着と同時に空きが出来てすぐに入店できる。
注文したのは「うな丼の大(3000円)」。料理が出てくるまでに30分待たされる。その間にも客の出入りはひっきりなし。かなり繁盛しているようだが、やって来るのは観光客がほとんど。
パリッと焼けたうなぎが香ばしくて実に良い。甘めの味付けは私好み。それでいてうなぎの野性味的なものも垣間見えている。明らかに関西人にうけるタイプのうなぎで、日本一のウナギというのは誇大に過ぎるとしても、確かにかなりうまいうなぎにはなる。
ただご時世かボリュームに関してはいささか寂しい。うなぎが中にも入っているのはうれしいが、それを考慮してもボリュームがあるとは言い難い。もっともこれはこの店に限らず、昨今のウナギ屋共通の課題。今はシラスウナギの商業養殖の成功に期待するしかないのか。
腹が膨れたところで次の展開を考える。このまま人吉の市街をプラプラ散策という手もあるが、これは退屈しそうだ。やはりここは王道で行くか。事前調査の際に一応は山城をいくつかピックアップしている。その一つに向かうことにする。
湯前城 相良氏の人吉城の支城
最初の目的地は湯前城。築城年代は定かではないが、1559年には東直政が居城としており、直政の戦死後は東能登が城主になったという。1594年には相良長毎が朝鮮出兵中に竹下監物が犬童氏を滅ぼそうとして失敗、湯前城に籠もって抵抗したが最後は切腹したとの記録が残っている。その後も湯前城は相良氏に人吉城の支城として重視されていたとのこと。
湯前城は周囲を見下ろす小高い丘の上に立っている。最初は栄立寺に登ったのだがこれは間違いで、さらに奥の市房山神宮里宮神社の境内のところにあったらしい。地形的に東南西を断崖に囲まれており堅固。特に東には二重の堀切を切ってあってかなり堅固である。
ただ気になったのは、地形的にもっとも弱点であると考えられる北側に防御機構が見られなかったこと。東側の二重堀切に匹敵するような構造があって然りと思えたのだが、後に地形が改変されてしまったのだろうか。
里宮神社はなかなか立派な神社で、境内に飾られた馬と龍の彫刻が目を引く。龍の彫刻はチェーンソーアートなのだそうな。登り龍と降り龍が対になっている。かつては私もこの龍のように天に駆け上がる野心もあったのだが、結局は地を這ったまま終わってしまった。人生に一抹のほろ苦さと寂しさを感じる今日この頃である。私も老いたな。
ゆのまえ温泉湯楽里で一息
湯前城を一回りした後は近くのゆのまえ温泉湯楽里で入浴していくことにする。この周辺一帯がゆのまえグリーンパレスというキャンプ場などの複合施設になっている。山を整地した施設が複数並んでおり、曲輪の連続のようにも見える。構造的には現代の山城という雰囲気がある。
湯楽里は宿泊施設にレストランも併設してある。大浴場は内風呂+露天のオーソドックスなもので、泉質はナトリウム塩化物炭酸水素塩泉とか。若干のヌルット感のある湯だが、キャラクターはそう強くはない。悪くはないが印象はあまり強くない。
上村城(麓城) 相良氏につながる上村氏の城
風呂で汗を流すと次の目的地に立ち寄ることにする。次に立ち寄ったのは多良木の上村城(麓城)。
紙つぶて仁王の立つ谷水薬師堂
上村城への登城路は谷水薬師堂から出ていると聞いている。途中から谷水薬師堂と麓城の案内看板が立っているが、どうやら麓城というのが上村城の別称らしい。
上村城に登る
谷水薬師の奥に麓城までのハイキングコースがある。麓城まで400メートルで15分とのこと。距離は大したことがないが、これが登りの山道なので早々に息が切れる。しかし何とか10分ほどで登り切る。
北側の高い曲輪が主郭で、南側の広い曲輪が二の郭というところか。西側の斜面には広い帯曲輪もある。主郭のさらに高い部分は天守台相当。天守はともかくとして、見張り台の櫓ぐらいは建てたのではなかろうか。
麓地区の武家屋敷街
上まで上がったところで、明らかに構造的に西側が大手だと感じたのだが、それは正解だったようだ。西側を降りたところの麓という地域に武家屋敷があったらしい。後で車で通過してみたが、今でも整然と区切られた区画が残っており、武家屋敷街の面影がある。
ここまで回ったところでもう既に4時を過ぎている。今日の予定はここまでにして宿に向かうことにする。
有形文化財の人吉旅館で宿泊
今回宿泊するのは人吉旅館。昭和初期に建造されたという建物が国の有形文化財に指定されているという由緒ある旅館である。宿泊補助を利用するなら、どうせだから格式のある旅館に宿泊しようと考えた次第。
趣ある館内を見学
人吉旅館はいかにも年季を感じさせる建物。非常に趣深い。通された筏口という部屋は、人吉川を望む見晴らしの良い部屋。天井が高くて欄間の細工などに格式の高さを感じさせる。古い建物ではあるが、水回りなどはリニューアルされており汚さは全くない。また建物は古いが、部屋はWi-fi対応でテレビはBSも映る。
最上の温泉を堪能する
部屋でしばしくつろいだ後、入浴することにする。大浴場は一階にあり、男湯は二つの浴場をつないだ構造。恐らく昔は男湯と女湯だったものをつなげて拡張したのだろう。泉質はナトリウム炭酸水素塩塩化物泉とのことだが、入浴するなりかなり肌がヌルヌルとする強烈な湯。かなり上質の湯である。この湯に浸かるためにもここまで来た価値は十分にあるというものである。
夕食は絶品の地場もの懐石
しばらく部屋でくつろいだ後、夕食は広間で。地場ものを中心とした懐石メニューだが、これが実にうまい。先付けの中の鮎の子というウルカがうまいし、山女の刺身や塩焼きが抜群。やはり川魚はうまい。デザートまで全品がかなりうまかった。ただデザートのババロアはうまいのだが焼酎の風味が私にはやや強く、頭が少しフラッときた。
夕食を終えて部屋に戻ってテレビをつけたら、NHKでプレキソ英語を放送中。キソ英語のレベルにさえ到達していない者向けの番組だろう。さすがに英語が全くダメの私でも、この番組ならヒアリングできる。どうやら私のヒアリングレベルはプレキソレベルだったようだ。これで外国人相手の仕事もさせられているのだから、考えれば無茶なことだ。
一息付くと再び入浴。今度は先ほどよりもゆったりと浸かる。湯が体にしみ入る感触。最高の湯である。
部屋に戻るとテレビを見るがろくなニュースはない。トランプは相変わらず差別主義むき出しの上に、自分にとって都合の良い右翼マスコミ以外は排除で、アメリカを自由の国から独裁国家に変えようとしている。一方、北の国の独裁者は疑心暗鬼に駆られているのか、自分の地位をわずかでも脅かす可能性のある者は片っ端から粛正しているようだし、日本の独裁者を気取っている安倍は、自分の取り巻きに国有地をただ同然で下げ渡すという公私混同をやらかして開き直っている。どうも世界中で馬鹿が馬鹿をやって世の中を滅茶苦茶にしようとしている。
10時頃に寝る前にもう一度入浴に行く。大浴場は男女の入れ替えがあったようだ。こちらの浴場はやや小さめの岩風呂。80センチの深さがあったあちらの風呂とは違って普通の深さの浴場。多分、お母さんはお子様と一緒にこちらの浴場へというイメージだったんだろう。
風呂でしっかりと体を温めると部屋に戻ってくる。この旅館は夜には夜の風情がある。実に趣深い(ガキならむしろ恐いと感じるかも)。
風呂から戻るとこの日はそのまま就寝。