徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

セイジ・オザワ松本フェスティバル オーケストラ コンサート Bプログラム&伊深城&霊泉寺温泉、鹿教湯温泉、美ヶ原温泉

 昨晩は集中空調の冷房の効きがイマイチのせいで蒸し暑く、なかなかに寝苦しかった。浅い眠りのままウトウトしていたら朝の6時に目覚ましで起こされる。

 眠い目をこすりながら身支度し朝食会場へ。クラウンホテル名物の名古屋飯バイキングを腹にしっかりとたたき込んでおく。

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名古屋クラウン名物、名古屋飯バイキング

 今日は8時の特急しなのに乗車予定なのでそれに合わせて準備。テレビをつけたら、またトランプが今度は与党の大物にかみついたとのニュース。自らが掲げている法案が滅茶苦茶すぎるせいで可決できないのに、それを彼らのせいだと喚いているらしい。ああいうタイプの人間は基本的にうまくいかないことはすべて他人のせいにせずにはいられないので、追い詰められれば追い詰められるほど周りにけんかを売りまくって孤立することになる。トランプ政権ももう既に末期状態になっているようだ。側近連中も既にもてあましていることがにじみ出ている。ああいう輩は本来はもっともトップに据えてはいけないタイプなのだが、概して本人は極めて権力志向が強いから困りものなのである。というのも、権力がないと責任を周りに押しつけることが出来ず、自らの無能が際立ってしまうから。つまりああいうタイプは自らの無能を偽るために権力を指向するのである。ただ概して言い逃れなどの弁は立つために、当初は無能が目立ちにくいのがたちが悪いところ。しかも本人が無能を自覚して周りに任せればまだマシだが、このタイプは己の無能を認めることが出来ないから自ら仕切ろうとする。だから大抵はトップに座られてから周りが大混乱させられるのである。ああいうタイプはどこにも存在し、日本でも橋下などがまさにそのタイプである。だから敵対国としてはそういうタイプがトップに立つように誘導すれば、勝手に相手国が自滅していくということになる。さすがにハッキングでトランプが選挙に勝利するように誘導したプーチンは策士である。

 

特急しなので松本へ

 7時過ぎにチェックアウトすると名古屋駅で特急しなのを待つ。しなのは車内販売がないとのことなので、売店で慌ててお茶を購入。最近は効率重視で車内販売が次々と廃止になっているが、これは明らかなサービス低下。長距離特急で車内販売がないというのは著しく不便である。しかし収益一辺倒の世の中では必然的にこの方向に向かうのだろう。既にほとんどの特急列車の車内販売は廃止されており、いずれは新幹線の車内販売もなくなりそうである。

 特急しなのの車内は結構な混雑。盆は過ぎたものの、まだ夏休みの最中と言うことだろうか。フラフラした感覚のしなのの車中で原稿を入力するのは例によって気持ちが悪い。また車内の冷房の効きが今ひとつなのも不快感の一因。エコを口実にした経費削減か、はたまた外が暑すぎるのか。

 名古屋はカンカン照りだったのに、中央線沿線はどんよりと曇っており天候が気になるところ。とりあえず2時間後に到着した松本はちょうど雨がぱらつき始めたところという悪コンディション。

 今日はオリックスレンタカーを予約している。貸し出されたのはマーチならぬアクア。明らかにクラスが上の車にチェンジされている。まあ今回は山道を走る予定はないから、ボディの小ささにこだわる必要はないのでこのチェンジはありがたいところ。

 

伊深城 由来の不明な室町時代の城

 最初に向かうのは伊深城。築城の経緯が定かではない城で、1180年に岡田冠者源親義が築城したという伝説があるらしいが、実際には室町時代に伊深氏が築城したと推測されているとのこと。

 伊深城の手前に若宮八幡があり駐車場もあるのだが、その道が「本当にこの道を車が登れるの?」と言いたくなるような急な坂。とりあえず怖々その坂を上ると駐車場に車を置いてから若宮八幡に登る。その脇に遊歩道が整備されており、伊深城に登ることが出来る。

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この鳥居の脇に駐車場がある

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若宮八幡の社殿

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登山道は整備されている

 遊歩道を歩き出すと共に雨が激しくなり始める。これは急ぐ必要がありそうだ。傘を差しての登山なので非常に進みにくいが、救いは道が整備されているので足下の不安が少ないこと。ただ遊歩道を塞ぐ形で倒木があったりして気持ちを削がれる。

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いきなり倒木に進路を塞がれる

 

 天候のコンディションが悪い上に私の体力もガタガタ。九十九折りの山道を少し進んでは一息つかないと駄目な状態。残念ながら山頂まで一気に登り切るだけの体力が全くない。

 途中の分岐を過ぎて少し進むと、番所でもあったのではないかと思われるような構造に行き当たり、そこから先は明らかに城内の雰囲気が漂い出す。こうなると死にかけていたところも元気が出てくる。何とか脱落せずに山頂まで登り切った。

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途中で石垣らしき構造が

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そこを越えると城内の雰囲気が漂い始める

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この石垣は往時のものだろうか?

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本丸下の曲輪に到着

 登り切るのに要した時間は大体20分ほど。私のいつものペースというか、これ以上の時間がかかると体力が続かない。私の山城攻めは大抵20分以内で登り切るパターンなので、私に内蔵されたクライミングコンピューターの城攻めプログラムは20分が限界となっており、これを過ぎると過負荷で体から白煙が上がる・・・ということはさすがにないが、体力が完全に尽きて動けなくなってしまう。今まででは坂戸城でそれを経験している。

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上の段の本丸に登る

 

 山頂の郭は二段になっているが、面積はそれほどではない。一段低いところにあった帯郭を加えて、この辺りがこの城の主要部になるのだろう。なお山頂の本丸の奥はかなり深く堀切を切ってあるようだ。なお案内看板には「比高200メートルで眺めが素晴らしい」と書いてあるのだが、木が多いせいで眺望はほとんどない。

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本丸

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本丸は二段になっている

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北側はかなり切り立っている

 なんとか頂上にたどり着いたが、雨はさらに激しさを増してきている。足下がぬかるんで滑らないうちにさっさと下山することにする。実際はこれが一番危ない行程。しかし幸いにして大過なく降りてくることが出来た。

雨のために予定を変更して松本周辺温泉巡り

 しかし車に到着した時には雨はかなり激しさを増しており、これから他の山城を攻略するのは賢明ではないことは明らか。ここに来て予定の変更を余儀なくされることになる。妥当なのは松本市内観光だが、実際のところは松本市内でもう見て回るべき場所は思いつかない。松本城周辺をウロウロして時間をつぶす手もあるが、その場合は車は完全に邪魔になってしまう。

 どうせ車があるのだから松本市外まで少し足を伸ばすかと考えた時、目的地として浮かんだのが鹿教湯温泉。実のところ、今回の遠征計画の初期案では宿泊地は鹿教湯温泉を想定していたのだが、その後の状況の変化でキャンセルになっている。そこでどうせなら鹿教湯温泉を訪問してやろうかと考えた次第。

 

霊泉寺温泉を訪問

 松本から鹿教湯温泉は山間の有料道路(通行料510円とやや高い)を使用して30分程度。数年ぶりの再訪となる。相変わらず鄙びた風情のある温泉街である。宿泊するつもりだった大江戸温泉で入浴しようと思っていたのだが、残念ながら入浴は2時からとのことでまだ1時間以上先。では他の旅館でと思ったのだが、車を置く場所がない。これはどうしたものかと思案した結果、とりあえず鹿教湯温泉を通過して霊泉寺温泉を訪問することにする。

 霊泉寺温泉は鹿教湯温泉から車で10分ほど。ここは霊泉寺の隣に温泉用駐車場があり、共同浴場もあることは確認済み。車を駐車場に置くと、鹿教湯温泉に輪をかけて鄙びた温泉街を共同浴場まで歩く。

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鄙びた霊泉寺温泉街

 共同浴場はかなり古い建物。入口に箱が置いてあって200円を入れて勝手に入浴するシステム。無人販売所みたいなものである。

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霊泉寺温泉共同浴場

 霊泉寺温泉はアルカリ単純泉だが、この施設ではその湯を非加水・非加熱・循環なしでかけ流している。湯自体は肌にしっとりとくる上質のもの。先ほど雨の中の山道で疲れて汚れている体を洗い清めると共にしっかりとほぐす。

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霊泉寺温泉は泉質抜群

 

鹿教湯温泉を訪問

 入浴を済ませると昼食のために鹿教湯温泉に戻ってくる。ただ飲食店と言ってもそば屋ぐらいしかない。「たつみや」に入店して十割そばの大盛りを注文。そばはマズマズなのだが、さすがにそばばかりこの量だといささか飽きる。主食だけをひたすら食べている気分である。しかも今は生憎と秋の新そば収穫前の一番そばが悪い時期でもある。

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昼食を摂ったたつみや

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十割蕎麦の大盛り

 昼食が終わった頃には2時になったので大江戸温泉藤館を訪問。日帰り入浴を申し込んだところ、今日は部屋が全部埋まっていて宿泊客が多いから駐車場に空きがなく、チェックイン時刻の3時までに入浴を終えて欲しいとのこと。元より私はそんなに長湯するつもりもない。

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大江戸温泉藤館

 鹿教湯温泉もアルカリ単純泉である。ただここの浴槽は加温・循環・消毒ありなので湯の鮮度が先ほどの霊泉寺温泉よりは劣る。悪い湯ではないがインパクトはあまりない。

 

塩川の温泉饅頭を土産に宿泊先の美ヶ原温泉へ

 大江戸温泉を後にすると、ホテル内で試食用に配られていた塩川の温泉まんじゅうがうまかったことから、店に立ち寄って購入。後はまた510円の有料道路を通って松本に移動、今日の宿泊ホテルにチェックインすることにする。

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塩川の温泉饅頭

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実に美味である

 宿泊先は前回に宿泊した浅間温泉を考えていたが、ホテルの料金が高めなのとあまりに芸がないと考えたことから、今回は美ヶ原温泉で宿泊先を探した。見つけたのは湯宿和泉屋善兵衛。美ヶ原温泉の温泉街自体が路地がウネウネしたところなので旅館を見つけるのにやや手間取る。見つけた旅館は白壁土蔵風の少し変わった建物。

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白壁土蔵風の湯宿和泉屋善兵衛

 旅館にチェックインすると早速露天風呂に入浴に行く。この旅館は奥に長い独特の構造をしており、露天風呂はその一番奥。野外で開放感のある浴場で、浴槽には湯がダバダバと注がれている。泉質はアルカリ単純泉とのことで、あまり特徴のあるお湯ではないが、肌にしっとりと馴染む優しい湯。その湯に体をゆだねるとまさに極楽。

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開放感抜群の露天風呂

 

松本市街で夕食を摂ってからホールへ

 一風呂浴びてしばしマッタリとしてから、5時過ぎに夕食を摂るために外出する。しかし困ったのは松本の飲食店は松本城周辺に集中しており、その界隈では車は邪魔になること。結局はウロウロしているうちに「竹風堂」の前を通りかかったので、そこの駐車場に車を入れて夕食を摂ることにする。注文したのはいつもの「山家定食(1890円)」。本来なら昼食にするところのものが夕食になってしまった。

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いつもの竹風堂でいつもの山家定食

 やや軽めの夕食を終えるとキッセイ文化ホールに向けて移動。ホールには6時過ぎに到着したが、既に駐車場はほぼ満杯の状況で車を止める場所を探してウロウロする羽目になる。誘導もほぼないに等しい状態だし、押しかけてくる人数に対して会場側が対応し切れていない様子。

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キッセイ文化センター

 会場周辺では記念写真を撮影する者が非常に多い。そのような光景は前回にも多数目撃したが、この辺りが通常のコンサートと違ってお祭り気分が強いところ。なお会場内はほぼ満席になっていたが、当日券の販売もあったようだ。前回は私の席は2階の奥だったが、今回はチケット購入のコツが分かったので1階の比較的良いポジションを確保している。

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ホール入り口は大混雑

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ホール内もこの賑わい

 

セイジ・オザワ松本フェスティバル オーケストラ コンサート Bプログラム

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指揮:小澤征爾(ベートーヴェン)
ナタリー・シュトゥッツマン(マーラー、ドヴォルザーク)
ソプラノ:リディア・トイシャー(マーラー)
演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ

ベートーヴェン:レオノーレ序曲 第3番 Op.72b
マーラー:「少年の魔法の角笛」より
ドヴォルザーク:交響曲 第7番 ニ短調 Op.70, B.141

 小澤が振ったのは一曲目のレオノーレだけなのだが、やはり小澤が振るだけでサイトウキネンオケの音色がピリリと引き締まるのが感じられる。気持ちの入った演奏というか、オケの気合いのようなものが演奏を通して感じられる感動的な演奏。おかげでレオノーレが実際以上の大曲に聞こえてくる。小澤もここ一番では立ち上がって棒を振るなど、なかなかに気合いが乗っている。まだまだ小澤健在をアピールしている。

 指揮者が代わって「角笛」に関しては、トイシャーのソロが若干弱々しさがあり、終始オケの音色に埋もれてしまうような印象があったのがつらいところ。

 シュトゥッツマンの指揮に関しては、軽やかで躍動感に満ちているのが特徴。その中でメロディを浮き立たせる形になっている。また弱音に対して神経を使っているのを感じられるが、いささかサイトウキネンのパワーをもてあまし気味である印象も受けた。独特のリズムで躍動感のある交響曲第7番の第3楽章などは彼女の演奏の特徴が最も現れていたように思われたが、両端楽章についてはもう少し緊張感が欲しいようにも感じられた。

 小澤がステージに現れただけで空気が変わるというか、楽団員の小澤に対する敬意のようなものが滲んでいた。指揮者と楽団員の親密さが伝わってきており、小澤がいるだけでオケに影響を与えているのが分かる。これがいわゆる巨匠効果というものか。なおこの効果は楽団員だけでなく、観客にも及んでいたようだ。

 

 コンサートを終えると全員が早足で会場を後にする。ここで出遅れたら駐車場を出るだけでかなりの時間を要してしまう可能性がある。私は幸いにして出口が渋滞する前に会場外に出ることが出来た。前回でも感じたがこの会場は足の問題も抱えている。ただキッセイ文化ホールがベストな会場とは思えないが、松本には他に施設がないのだろう。

 旅館に戻って来た時には温泉街はひっそりと静まりかえっており、辺りは既に半分眠っている状態。この温泉街は歓楽街などを有していないので夜が早いようである。部屋に戻った私は、とりあえず内風呂でゆったりと体を温めてから就寝することにする。

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内風呂でゆったりと入浴する