翌朝はやはり4時頃に一旦目が覚めてしまうが、そのまま二度寝。朝方にどこかから子供の絶叫のような声が2回聞こえてきたが、「やかましいな」と思いながらも寝続け、7時半にセットしていた目覚ましで目覚めることに。睡眠力自体は落ちてきているのだが、とにかく疲労が強いようである。
さて今日の予定だが、困ったものだ。天気予報によると今日は午後辺りからかなりの雨が降るとのこと。となると山城は難しいところだが、そもそも今日回る予定だった城郭はほとんどが昨日に回り終えている。そこで今日は昨日回る時間がなかった富山市南方の城生城に午前の内に立ち寄って、近くの温泉で汗でも流そうかというのが最初の予定。
ホテルをチェックアウトすると富山を南下する。空模様は極めて怪しいが、まだすぐに雨が降るという雰囲気ではない。とりあえず雨が降り出す前に目的を達成すべく車を走らせる。
城生城 南北朝時代から続く川縁の堅城
神通川の上流、かなり山が迫ってきている辺り、八尾カントリークラブの西の川沿いの山上にあるのが城生城。南北朝時代ぐらいにこの地域を治めていた斎藤氏の居城であったという。戦国時代にはその位置的重要性から諸勢力の争いにさらされたようだ。
現地に到着すると本丸の西に当たる辺りに入口の案内看板はあるが駐車場はない。とりあえず駐車禁止の標識はないようなので、道路の邪魔にならなそうなところで左ギリギリにつけて止めておく。
入口から足下が鬱蒼としているので大丈夫かと不安になるが、一応案内看板などは立っているので、念のための唐辛子スプレーを腰から下げて進む。すぐに腰曲輪方向との分岐の看板があるが本丸方向へ直進、さらに登ると堀切方向との分岐があってやはり本丸方向に進む。ちなみに腰曲輪方向の道は、川沿いの斜面の細道で足を滑らせたら谷底に真っ逆さまになりそうな道にも関わらず、道上にかなり樹木の枝などが張りだしてきている状態だったので結局は見学を断念している。
登り切ると思いの外広い曲輪に出る。これが二郭のようだ。本丸はここの右手(南側)にあり、堀切がある上に高低差もあるところを土橋で登るようになっている。
本丸には城跡碑と案内看板が立っている。決して広いスペースではないが、周囲を見下ろす高所に位置し、下に見える大堀切との高低差はかなりのものである。
二郭に戻ると北に向かうが、すぐにかなり広い堀切に行き当たる。これを超えるとこの先はかなり広大な曲輪。ただし鬱蒼としているのでその全貌は把握しにくい。ところどころに土塁があることは分かる。途中で←井戸跡という看板があったので鬱蒼とした中をそちらに進む。途中で藪がガサッと音を立てたのでドキッとしながら思わず手が腰に伸びるが、幸いにして動物の類いではなかったようだ。なお井戸跡はそれらしい窪みがあるだけ。
この曲輪はかなり北まで広がっているようだが、先は鬱蒼としているので引き返すことにする。
二郭から降りて分岐点を今度は大堀切方向に向かう。こちらは大堀切の下から本丸を見上げることになるが、これが壮観。急斜面というよりも断崖絶壁で高さは10mはありそうなので、これをよじ登ることはまず不可能。ただ気になったのは土が大分えぐれてきているのか、本丸の端の方などは木の根で辛うじてもっているようなところがあったので、大雨でも来たら大崩落しないかということ。
この大堀切の南側にも曲輪がある。こちらが大手方向になるらしいが、それを守るらしい曲輪が数段になっている。
東西北の三方を川に囲まれて切り立っており、南からの攻撃には大堀切などの防御機構を万全に構えたかなり堅固な城である。また山上のスペースは結構広く、館などを建てるにも十分と言うことで城を構えるのには格好の地形と言えよう。
そう知名度が高い城というわけでもないので正直なところ侮っていたのだが、来てみると思いの外に見所の多い城であった。まだこんなところに私撰100名城Bクラスが潜んでいたとは・・・。
春日温泉で一服
1時間ほどの山城散策で汗をかいた後は、近くの春日温泉に立ち寄ることにする。大沢野ウェルネスリゾートウィンディというスポーツジムなどと複合した巨大施設があるので、そこの浴場へ。ナトリウム塩化物泉とのことでややネッチョリした印象だが、特別強い浴感はない。かけ流し浴槽などもあり意外と本格的。なお源泉温度がかなり高いので加水はしているようだ。
この時点で昼頃だが、山城の予定をこなして温泉で汗を流すといよいよこれからすることがなくなってしまった。完全ノープランである。こうなったら金沢にでも行くしかないかと思いつく。お昼もまだだし、久しぶりに自由軒にでも行くか。
金沢のひがし茶屋街で昼食
北陸自動車道を経由して金沢までは1時間ほど。到着した金沢は大勢の観光客でごった返している。北陸新幹線開通以来、とにかく金沢は観光客が増えているが、今日はもうGWなのか異常に観光客が多い。自由軒に立ち寄るべくひがし茶屋街の方面に車を向けたが、駐車場に空きが全くない。結局は駐車場を探して兼六園付近まで移動することに。
兼六園近くにようやく車を置くと、ひがし茶屋街の自由軒までトボトボと歩く。しかし到着した自由軒の前には大行列が。思わずため息。しかしここまで来た以上引き返す気もない。結局は40分ほど待たされることに。
ようやく入店、注文したのはオムライスとビーフカツ。ジューシーなビーフカツは相変わらず美味いが、少し首をかしげたのはオムライス。ここのオムライスはケチャップでなくて醤油ベースなのが特徴なのだが、以前に食べた時のような鮮烈な印象がない。端的に言えば味が落ちたような気がする。私の体調のせいなのか、それとも本当に味が変わったのか。客が以前に比べてかなり増えているようなので、手が回らなくなって味が落ちているんでなければ良いが・・・。実際に観光ガイドの類いに取り上げられたことで駄目になってしまう店は少なくないだけに少々心配。
自由軒を出た時にはとうとう雨が降り出した。傘を持ってきていなかったので慌ててループバスで駐車場に戻る。当初は車から傘を回収してここからバスで移動しようと考えていたのだが、雨が本降りになってきたのでその気が失せる。とりあえず次の目的地の近くまで車で移動することにする。
長町武家屋敷街の見学
金沢に立ち寄ったのは自由軒で昼食を摂ることだけが目的でなく、長町の武家屋敷を見学したいというプランも考えていたから。金沢は今まで何度か来ているが、立ち寄り忘れていたのが長町の武家屋敷街である。そこで長町の近くまで車で走ると観光用の駐車場があったのでそこに車を置いて徒歩で見学に向かう。
長町の武家屋敷街は水路沿いに往時のイメージの塀が連なっている。家自体は必ずしも往時のものが残っていると言うわけではないが、塀の雰囲気をそろえているので町並みとしては風情がある。
中には九谷焼を販売している店やら和菓子屋やら観光客対象の商売を行っているところが多い。私も九谷焼の見学をしたり、みやげの和菓子を購入しておく。土産に九谷焼を・・・とも思ったが、こちらは私の財力では全く手が出ない。
それにしてもここもひがし茶屋街ほどではないが観光客が多すぎて閉口。GWということもあるだろうが、やはり北陸新幹線開通以降、金沢の観光客が異常に増えているのを感じる。おかげで京都同様に風情が全くなくなってきた。景気の刺激のためにインバウンドの拡大も結構だが、副作用としては観光地がいろいろと荒れてくる。これは困ったことだ。特に喧しい中国人の団体客はどうにかならないものか。
山代温泉で一泊
30分ほどプラプラと散策を行って長町の見学を終えたところで、雨の中を今日の宿泊ホテルまで移動することにする。今日宿泊するのは山代温泉の大江戸温泉山下家。山代温泉までは北陸道経由で1時間程度で到着する。山下家は古総湯や総湯のある山代温泉の中心地。そこにある城郭風の超巨大建築が山下家である。元々は山代温泉を代表する巨大ホテルだったんだが、昨今のレジャーの変化と不景気に耐えられずに大江戸温泉の軍門に降ったというところか。山下家と言えば私の子供時代には関西でも良くCMが流れていた。あの時代によくCMを見た旅館と言えば山下家以外ではびわこ温泉ホテル紅葉、有馬温泉兵衛向陽閣、伊東温泉はとやホテルなどである。この中でホテル紅葉は業績不振と老朽化で閉館して取り壊されてしまった。兵衛向陽閣はまだ健在のよう。はとやホテルは行ったことがないのだが、あまり良い噂は聞いていない。この辺りは時代の変化というものを感じさせられる。
今日は予約が一杯のようで、やや遠目の駐車場に案内される。チェックインを済ませて私が通されたシングルルームは客室と言うには極端に狭い部屋。いわゆる典型的な「添乗員部屋」という奴である。まあシングルプランがあるだけで良しと考えていたのでここまでは予想の範疇だが、禁煙部屋にも関わらずドアを開けた途端にむせかえるようなたばこの臭いがするのには閉口。長年散々たばこの臭いをしみつけた部屋に、ファブリーズをシュッシュッして灰皿を撤去したらそれで禁煙部屋のできあがりというものでもあるまいに。さすがにこれにはテンションが下がる。
ちなみにかつては喫煙天国とさえ言われていた日本(「男のくせにたばこも吸えないのか」なんて言う馬鹿なおっさんが普通にいた)も、昨今では世界的潮流を受けて非喫煙者の方が多数派となり、今や喫煙者は少数派。そう言うわけでビジネス的にも喫煙部屋を設けずに全部屋禁煙にする方が効率的になっている。ただ喫煙部屋を禁煙部屋に切り替えた場合に問題になるのは、それまで染みついた臭い。長年に渡るたばこの臭いはファブリーズ程度で消えるものではない。これを確実に脱臭できる技術を開発したら、ホテル業界や中古車業界などにビジネスチャンスがありそうだ。
部屋に荷物を置くとすぐに外出する。とりあえず総湯は以前に行ったことがあるので、今回は古総湯に入浴したい。古総湯はシンプル極まりない設備で、4m四方程度の浴槽が一つあるだけ。洗い場が全くない構造である。明治時代の昔の共同風呂を再現したのだとか。かけ湯をすると入浴するが、とにかく熱い。最初はビックリする。足をつけた途端にヒリヒリして、いきなりは体をつけることが不可能。雪国の温泉は往々にして湯温の高いところが多いが、どうやらここもそのようだ。
山代温泉の泉質はナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉とのことであるからようは食塩系。寒い地域に多い「温まる湯」。ここの湯もとにかく汗がやたらに出てくるのが特徴。肌当たりはややネットリしている。温度が高いこともあって、とにかくサッパリと目が覚めるタイプの湯。
浴場の上には休憩室があるのだが、これがまた奇妙なスペース。色ガラスが何か落ち着かないし、開放感がないので圧迫されたような気持ちになる。少し休んだだけですぐに出てくる。やはり休憩室なら道後温泉本館が風情があって良いかな。
古総湯の入浴を終えると隣の総湯の売店で温泉卵を頂く。これが意外に美味い。これは確かに古代ローマの温泉技師でなくても驚くところだ。
ホテルに戻ると屋上の展望大浴場へ。山代温泉を見下ろす格好の浴場であるが、やはり湯自体は先程の古総湯よりは劣る(消毒臭がする)。また湯温は観光客を意識して若干低めの模様。壺風呂に湯が張ってなかったのは、大江戸温泉のコスト低減戦略の一環だろうか。
入浴を終えたところで夕食バイキングへ。大江戸温泉らしいバイキングで、内容的には普通に美味い。また伊東園の配給飯とは比較するまでもない。ただ特に驚きや感動はない。同じ大江戸温泉でも鬼怒川温泉のものよりは劣る印象。バイキングと言えば最近では作並温泉の一の坊のが非常に良すぎただけに、あれの記憶が残る現時点ではかなり不利だろう。
私のプランにはアルコール飲み放題が付いている模様。しかしこれは完全に無駄。アルコール飲み放題抜きで安くなっているプランがあれば良かったのだが・・・。まあ勿体ないのでノンアルコールカクテルを一杯だけ頼む。
夕食を終えると部屋でプラプラ。とにかくしんどい。今日はあまり歩いた記憶がないのだが、かなり広い城生城内を散策したことと、兼六園からひがし茶屋街や長町内など結構歩いていたのか今日も1万2千歩を超えている。ここのところ連日1万歩超えである。単に1万歩だけならそれほどでもないが、ことごとく山道を含んでいるので中身が濃い。やはりダメージは大分蓄積しているようだ。しばらくベッドで横になって過ごすが、1時間程度休んでから大浴場へ入浴に行く。
大浴場はかなり広い空間で、かつての地域を代表する大ホテルの面目を一番感じる設備である。湯は露天風呂よりは良い印象。とにかくゆったりと体を浸し、特に足の疲れを取っておく。
この日は夜の11時頃までBDを見て過ごし眠くなったところで就寝する。