徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

養父市大杉の重伝建地区と此隅山城見学

 この三連休は特に予定もなく家でゴロゴロしていたのだが、やけに天気の良い空を眺めているうち、こんなことをしていると精神にも肉体にもよろしくないという気持ちがこみ上げてきた。そこで月曜日に急遽外出することにした。

 目的地として考えているのは、新たに重伝建に指定された養父市大杉。山間に多い養蚕集落の建物が重伝建指定されたらしい。これに以前から気になっていた出石の此隅山城を絡めて遠征計画のできあがり。ライブ通いを始める前のオーソドックスな遠征パターンである。大雑把に計画を策定してルートを調査すると、午前中のうちに慌てて家を車で飛び出す。

 久しぶりの自家用車による長距離ドライブである。国道2号から播但道に乗り継ぐと北に向けてひた走る。中国道以北の播但道は対面2車線になるので決して走りよい道ではないが、車もそう多くないので順調なドライブで朝来ICに到着、ここから県道70号、県道6号を経由して目的地へ。なお帰宅してからGoogleマップを見れば、明らかに和田山から和田山八鹿道路の養父ICを経由した方が早いはずなのだが、どうも私のカーナビの地図には和田山八鹿道路が入っていなかった模様。

 

養父市大杉の重伝建地区 

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遠くからの町並

 現地は典型的なのどかな山村。重伝建地区内に文化交流施設木彫展示館があるので、そこの駐車場に車を置いてプラプラと見学、案に反して結構な台数の車(7台ほど)が止まっていて驚く。

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木彫り展示館

 木彫り展示館は、かつて診療所として使われていたという建物の中に木彫り作品を展示してある。展示作は実に様々。いわゆるほのぼの系の作品もあれば、かなりシュールな作品まで。中には笑えるものもある。こうして見ると、木彫りというのも芸術としてのかなり表現力を持っているものだと改めて感心する。 

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作品の数々

 木彫展示館を見学した後は集落内を散策。集落を見下ろす丘の上に二ノ宮神社があるのでそこを見学。斜面に祠を連ねた意外に大規模な神社で驚く。なかなかに趣があり、気分が落ち着く。

 

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落ち着いた風情のある二ノ宮神社

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神社から見下ろした町並み

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養蚕住宅の町並

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突き出した三階が特徴

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蚕室の温度管理のためのものとか

 養蚕住宅は突き出た三階があるのが特徴。ただし今となっては養蚕をしている家もなく、その家を宿泊施設にしたりカフェにしたりしている。そんな一軒、「Rico cafe ~分散ギャラリー養蚕農家~」を見学。

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いわゆる古民家カフェ

 内部は3階までが吹き抜けたオープンスペースの建物。広い空間が開放的で、三次元的接続の面白さのようなものがあるが、同時に高所恐怖症にはいささか落ち着かない建物でもある。また風通しが良い設計になっているが、逆に冷暖房をしようとすると大変な構造でもある。このオープンスペースの内部に様々な作品が展示してある。

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 一回り見学を終えるとカフェで軽く昼食を摂ることにする。注文したのは鹿肉カレー。赤米に鹿肉カレーとサラダが添えてある。サラダがなかなか美味いが、肝心の鹿肉カレーについては甘口のカレーが私の好みと違っており残念。また鹿肉は意外に淡泊なので、カレーにするなら何らかの手でもう少しコクを補って欲しいところ。

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いわゆる鹿肉カレー

 養蚕集落の見学を終えると移動。近くのかいこの里交流施設を目指したのだが、何と閉館中。三連休中に閉館とは何とも商売っ気のないことだが、地方はたまにこういう施設があるから恐ろしい。仕方ないので、すぐに本遠征の第二目的地である此隅山城へと向かうことにする。

 

此隅山城 秀吉に落とされた山中氏の城郭

 「此隅山城」は出石の市街の北方にある。そもそもは山名氏ゆかりの城郭で、1372年に山名時義が築城したとされている。しかし1569年に山名祐豊の時に羽柴秀吉に攻められて落城、祐豊はより険しい有子山城に本拠を移して廃城となったという。ただその有子山城も1574年に羽柴秀長に攻められて落城、祐豊は因幡に出奔したとのことで、もう既に没落していた山名氏では、いかに堅固な城塞に頼ろうとも最早勝負にはならなかったということのようである。

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此隅山城遠景

 此隅山城のある山の北西に古代学習館があるのでそこに車を置くと共に、此隅山城のマップを入手する。登山道はここのちょうど裏から出ているらしい。

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此隅山城登山口

 動物除け用のゲートを抜けるといよいよ山城攻め。初っ端から険しい尾根筋の直登ルートになる。しかし下草は刈ってあるし、ルートもしっかりと定められているので不安はほとんどない。一番の問題は鈍りきっている私の体。数分と歩かないうちに心拍が上がって息が苦しくなってくる。体力がピークだった数年前なら一気に登れてしまいそうな斜面を、今は何回かに分けて登らないと息が続かない。

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登山道は整備されている

 いきなり心臓が止まってしまっては洒落にならないので、様子を見ながら休憩を取りながら慎重に登っていく。尾根筋には所々細かい削平地があるのでしばし休憩を取るのには向いている。

 5分ほど登っていくと主郭まで300メートルの標識が立っているが、ここから先がさらに厳しい登り。ロープを使って急斜面直登の場面がある。

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急坂をロープで登る

 そこを登り切るとようやく曲輪らしきところに出る。そこからさらに数段の曲輪を登っていくと、かなり大きな堀切があって、その先が主郭群。

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この堀切の先が主郭群になる

 目の前に聳える崖を横目に見ながらまずは右手に回り込む。土塁に囲まれた細長い曲輪に出るが、これが主郭群の一番下の曲輪。この西にさらに一段降りたところに西曲輪がある。

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右手のこの曲輪の一段下が西曲輪


 西曲輪に降りてみると、中央部には削平し残したような小山があり、ここが見張り台ではないかと思われる。その下には展望台と称した場所が。ここの曲輪と南の千畳敷とでお屋敷の側面を守備する形になっているという。 

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西曲輪の先端は展望台になっている

 西曲輪の見学後は主郭目指して数段の曲輪を登っていくことになる。この辺りも尾根筋に小曲輪が連なり、その間をかなり険しい尾根道が結んでいる。最後には関所よろしく巨岩まである。

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ロープを使って本丸へ登る

 最後はロープまで使ってようやく主郭に到着。主郭とそれを取り巻く二の郭というべき曲輪で山頂はなっている。なお案内図によると千畳敷には山道が通じていないとのことだが、確かに上から見下ろしてもそちらの方面は鬱蒼としていて進めそうな気配がない。

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急に視界が開ける

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頂上の本丸

 主郭からはかなり眺望が利き、この辺りを支配するには格好の立地と思える。ただこの堅固な城でも落城したとなると、山名氏が有子山城に逃げるのも分からないでもない。

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展望はかなり利く

 帰路は北東の曲輪群に沿うコースを取るが、結果としてはこれは失敗だった。というのはこちらは往路に比べて極端に整備状況が悪く、途中で危うくコースを見失いそうになる。ようやく遊歩道の標識を見つけてホッとしたものの、そこから先も道とは言いにくいような所ばかり通ることになり、急斜面を斜めに下っていた時に足を滑られて1メートルほど滑落して擦り傷を作る羽目に。ボロボロになりながらようやく登山口と書かれたところまで出てきたが、今度はそこが鬱蒼とした竹藪で、どっちに進めば抜けられるかが分からずウロウロ。散々な有様でようやく集落の所まで出てきたのである。途中の見学どころでなかったし、これは大人しく最初の道を戻った方が良かった。

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本丸の裏手に下りたのだが

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だんだんと道が怪しくなり

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そしてとうとう道が消失した

 トボトボと車の所に戻ってきた時には全身ドロドロのボロボロであった。頭から汗だくだし、とにかくどこかで汗を流したい。この近くで温泉と言えば出石温泉乙女の湯があったはずと車を飛ばすが、何と本日は休館とのこと。全くこれだから田舎の施設は・・・。

 

出石温泉湯元館で入浴

 仕方ないので近くをウロウロしていたら、出石温泉湯元館なる施設を見かけたのでそこに入ることにする。ややくたばった印象のある外観の施設で、入浴料は300円。

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外観はややくたばっているが、湯は抜群

 しかし入浴して驚いた。pH8.5というナトリウム-炭酸水素塩泉は浸かるなり肌が強烈にヌルヌルする美肌の湯。擦りむいた右肘がいささかヒリヒリするが、なかなかにして最上の湯。

 浴槽は内風呂と露天風呂があり、内風呂の方がやや温度が高め。露天風呂でくつろいで内風呂で体を温めるというパターン。地元の常連らしき連中を多数見かけたが、この湯なら確かにそうなるだろう。私ももし家の近くにこんなに素晴らしい温泉があれば、毎日仕事の後に通いたい。

 

 しっかり汗を流したところで、やはり出石まで来たならそばは食べて帰りたい。ここの隣にそば屋があるようだが、残念ながらもう営業終了の模様。そこでここに来る途中で見かけたそば屋「善店」に入店することにする。注文したのは「皿そば」

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善店

 とりあえずお約束のようにデフォルトは5皿。トロロで頂くが、ややパサッとした蕎麦はいかにも出石蕎麦。なかなかに美味い。そこでさらに5皿を追加。こちらは玉子を入れて頂く。なかなかに上々の蕎麦であった。ただ蕎麦を食べ始めた途端に、先ほどの入浴の影響が出て全身が汗だくになってしまったのは計算外。

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出石名物皿そば

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さらに追加

 これで全予定終了。まずまず久しぶりに充実した内容であった。後は夕闇迫る但馬を後にして、播但道をひた走って帰宅することになったのである。

 最近はライブ三昧だったが、今回は久しぶりに原点に戻ったような遠征であった。後これで美術館がついていれば完璧という所。やはりこういう遠征も良い。