徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

お知らせ

アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

ヤン・ヴォー展を見学してから、大阪フィルの定期演奏会へ。沼尻の「大地の歌」はまずまずの名演。

 この週末は大阪フィルのコンサートで大阪に出向くことになった。コロナ感染はピークを過ぎた(本当かどうかには疑問の余地はあるが)とのことであるが、それでも相変わらず数十人から百人レベルの新規感染は常に出ており、GoToキャンペーンなんかの影響で再増加もあり得る局面。やはりまだ鉄道は避けて車で出かけることにする。

 家を出たのは昼頃。駐車場はフェスティバルホール会員予約で2時半からホール近くの駐車場を予約しているのだが、大阪にはそれよりも1時間早く到着してしまった。そこで時間つぶしに国立国際美術館に立ち寄ることにする。

 

「ヤン・ヴォー ーォヴ・ンヤ」国立国際美術館で10/11まで

f:id:ksagi:20200927152201j:plain

国立国際美術館

 ベトナム出身で現在世界的に注目を集めている新進気鋭のアーティストであるヤン・ヴォーの個展。

 ヤン・ヴォー自身がボートピープルとしてベトナムから逃れ、難民キャンプを経由してデンマークに移住したという経歴の持ち主だとのことで、作品の背後にメッセージ性を込めてはいるようなのではあるが、正直なところメッセージが直截的なものではないので私のような感性の鈍い者には全く伝わってこなかった。

 作品自体は最近のアートに多い、あらゆる既成の事物を組み合わせた「レディメイド」に分類されるところだろうと思われる。展示会場の特徴として、作品の正面だけでなくあえて裏側をもさらしているというところにもメッセージ性があるのだろうとは感じた。そのために会場は何となく工事現場感があったのではあるが。

 正直なところ、現代アートは一人作者の個展では、アイディアのパターンが一本になるので見ていてしんどいなというのが私の本音。よほど作者の感性が自身と一致していないと退屈する。実は本展よりはコレクション展の方が、各作者がアイディアを持ち寄っての展示になっているので、変化があって面白かったと感じたのは事実。

 

 正直な感想は「あまり面白くなかった」。まあ私の場合は現代アート系の展覧会で「面白かった」と感じることの方が珍しいので毎度のことではある。ただ今年になって「金の亡者になる」という生活目標(笑)を掲げている私としては、駐車料金と入場料を考えると金の無駄だったかなという考えも頭をよぎる。まあそういう金の無駄遣いも学習投資と考える考え方もあるのだが。つい最近も豪ドルの外貨預金で1ヶ月で3000円の損失(元手が5万円なんだから、割合から行けばかなりだ)という学費を支払ったところである。

f:id:ksagi:20200927152235j:plain

久しぶりのフェスティバルホール

 そろそろ駐車場の予約の時間になったので車を停めに行くと、ホールに向かうことにする。なお大阪フィルでも次回の公演からは通常の座席配置で実施するとのアナウンスがあった。正常化への大きな一歩ではあるが、果たして本当に大丈夫かはまだ不明な部分も多々ある。来年のオリンピックのためにコロナをなかったことにしたい政府の勇み足がかなり懸念されるところである。

f:id:ksagi:20200927152311j:plain

この大編成がステージに載せられるのは流石にこのホール

 

大阪フィルハーモニー交響楽団 第541回定期演奏会

指揮/沼尻竜典
メゾ・ソプラノ/中島郁子
テノール/望月哲也

武満徹:オーケストラのための「星・島」
三善晃:交響詩「連祷富士」
マーラー:交響曲「大地の歌」

 沼尻が大阪フィルに登場しての現代音楽(と言うには既に古典に近づきつつある)の前半と、後半はマーラーの声楽付き交響曲である。

 前半の武満と三善は正直なところ現代音楽があまり得意でない私には分かりにくい曲。武満については、彼の曲にしては分かりやすい方という印象を受けた。冒頭から炸裂する強烈な不協和音がいささか頭痛を招くが、曲自身は何やら幻想的な雰囲気がある。解説には「エロティシズムも含んだ」というような表現があったが、確かにそういう解釈も理解できなくはない。

 三善の曲についてはとにかく音色が多彩で派手派手な曲という印象が強い。様々に用意した打楽器が入れ替わり立ち替わりで多彩な音色を出すので、音楽的感慨というのとは無関係に興味深くはある。ただ私にはこの曲がどういう風に富士なのかということは今ひとつピンとこなかった。あえて言うなら太古の造山運動の世界の表現だろうか。

 演奏する側にとってはかなり難しい曲であると思われるが、その辺りは沼尻の指揮の下の大阪フィルには乱れは感じられなかった。難解な曲であるが、沼尻は曲自体をよく把握しているようである。

 後半はマーラーの歌付き交響曲であるが、オペラを手がけている沼尻が指揮をするとやはり曲自体がオペラ的な雰囲気になる。オケはなかなかに統制がよく取れているように感じられたが、声楽陣はテノールの望月哲也がやや弱めで、オケの音に埋もれがちに聞こえたのがやや残念。ただこの曲自体は正直なところあまり私が得意な曲ではなく、いささか曲調が冗長に感じられる(特に最終楽章)のがツラさがある。沼尻はそれをメリハリ付けて分かりやすい解釈をしているとは感じられたが。

 総じてオケを良くコントロールしたなかなかの名演だったと感じられた。流石にその辺りは沼尻である。大規模編成のオケをドライブする能力に長けているのを感じさせられた。下手な指揮をするとガラガラドッシャンになることもある大阪フィルを見事にまとめきっていた。


 今日の予定は終了したので阪神高速で帰途についたが、ちょうど夕方のラッシュ時なのか、それともこの日がたまたまなのかは不明だが、摩耶手前あたりで大渋滞に出くわして散々疲労する羽目になったのである。