徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

新重伝建の加世田麓を見学してから、指宿温泉を堪能

加世田麓の武家屋敷街を見学

 ここからさらに少し南下すると加世田である。加世田の町は私が想像していたよりもはるかに大きく、これなら昼食はこの町で取れば良かったと後悔する。重伝建に指定された加世田麓は市街の南、重伝建地区の南端に位置する竹田神社の駐車場に車を置くと、徒歩で散策する。

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竹田神社

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水路沿いに町並みが広がる

 水路沿いにかつての武家屋敷の面影をのこす門などがいくつかある。ただ残念なことに建物はほとんどすべてが現代風に立て直したものばかりである。また住宅の中には完全に廃墟になっているものもあり、町並みの完成度としてはそれほど高くはない。

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ここはいきなり廃墟化している

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水路沿いの町並み

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ここの門は立派だ

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ここの住宅内には

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廃仏毀釈を免れるために匿ったという仁王像が

 

 

別府城は何も残っておらず

 途中に別府城跡があるが、ここも立派な石段を上った先に城跡碑があるだけ、どうも城跡は後に小学校になって今は遊園地になっている模様。

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別府城跡の階段を登ると

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小学校の門になっていたらしい

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上には石碑があるのみ

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城跡は小学校になって今は公園の模様

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辺りを見渡す高台にはなっている

 

 

さらに町並みを見て回るものの・・・

 さらにこの隣に旧鯵坂正一郎邸があるのでそれを覗こうとしたら、門前に侵入を阻止するかの如くゴミ袋が積み上げてある。どうやら下草刈りをしたものを詰めているようなので、それなりに管理はしているようなのだが、ゴミ袋をかわして中を見てみると、建物自体の保存状態はかなり悪く、特別に保存のために手を入れている雰囲気がない。既に廃屋状態なので、本腰を入れての整備をしないと早晩に廃墟になるではと懸念する。

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鯵坂正一郎邸の門前はなぜかポリ袋でバリケード

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立派な家だが既に廃屋化がかなり進行中

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立派な倉

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しかし庭園は荒れている

 正直なところ、様々な点でいまいち感が否定できなかった。特に最近になって指定された重伝建に多いパターンである。このままだと消滅してしまうから、その前に重伝建に指定して何とかしようという段階で、重伝建にしてからどうするというのがまだ確立していないという。現在のところはあまり見どころがあるとは言えず、現地が期待しているような観光需要は難しそうである。

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ここの門なんかは倒壊しそう

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ここは立派だが

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ここも立派だがかなり老朽化している

 

 

知覧の特攻平和記念館に立ち寄るが・・・

 加世田の視察を終えると次は知覧に立ち寄る。と言っても知覧の武家屋敷街はかなり以前に詳細に見学済みなので今さら再訪する気はない(加世田とはレベルの違う街並みが残っている)。目的はこの武家屋敷街の一番端にある亀甲城。以前にこの地を訪問した時には先を急いでいたのかすっ飛ばしていたので、それを見学しようと考えたのである。

 しかしいざ現地に到着すると、予想していたよりは結構大きい山で、見学するとなるとそれなりの時間を消費しそう(今日は指宿に早めに到着したいという思惑がある)なことと、近くに駐車場が見つからなかったことからパスして、ここから少し走ったところにある特攻平和記念館に立ち寄る。

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特攻平和記念館

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展示されているゼロ戦

 言わずと知れた特攻隊を弔うため施設である。館内にはボロボロのゼロ戦などが展示されている。多くの若者がこれに乗せられて、無謀な作戦によってミサイルの誘導装置代わりに無駄死にさせられたのである。

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兵達の三角兵舎

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こんなところで過ごしていたらしい

 ただ展示を一回りしていて気になったのは、特攻隊員を悼むと言いつつ、どことなく賛美色が匂うところである。特攻隊を考える時、いかにして彼らが国によって犬死を強いられることになったかの視点は不可欠である。なお特攻隊員を犬死と言えば、特に戦争を肯定したい筋から「国を思って命を捨てた彼らの尊い行動を冒涜することになる」という批判があるが、現実には特攻隊で戦局をひっくり返せるわけもなく、彼らは単に軍部上層部の利権を守るために敗戦を引き延ばすべく命を捨てさせられたのだから犬死である。それを批判反省することになしに、彼らの死を称揚することの方がよほど彼らに対する冒涜である。実際にあの若者たちが生き残っていたら、どれだけ後に国のために役立ったであるかを考えたら、あのような愚行は二度と繰り返してはならず、そのためにはなぜあのような愚行が実行されるに至ったかの検証は不可欠なのだが、そこのところが完全にスルーされ、単に当時の兵器や軍服などが展示されているだけで、何も知らない子供などなら「カッコいいな」という印象を抱いても不思議でないし、むしろ意図的にそう誘導しようとしているのではという気さえ起った。

 というわけで、どうにも感心しないという印象だけを抱いて施設を後にする。これで一応全予定終了なので指宿に直行することにする。

 

 

指宿温泉に到着する

 知覧から山道を走り抜けると海沿いの国道226号線を延々と南下する。ようやく指宿に到着したのは3時半頃。今回宿泊するのは指宿いわさきホテルという超巨大ホテルである。実はここに来るのは初めてではない。かなり昔にこのホテルに隣接している岩崎美術館を見学に訪れており、またこのホテルで砂風呂体験もしている。その時にはこんなホテルに泊まることは一生ないだろうなと思っていたのであるが・・・。運命とは分からないものである。

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超巨大な指宿いわさきホテル

 私はANAトラベラーズ確保したお一人様夕朝食付きプランである。予約時に夕食の内容を指定していないからということで決めさせられたのだが、洋食、焼肉、和食とあって18時からと19時45分からの回に密回避のために分けているのだという。しかし和食は各回ともに満員、洋食の18時からの回も満員とのこと。焼肉を食べるという気にもならないし、結局は洋食の19時45分からの回にしてもらう。

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なかなかに高級な部屋

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窓からは一応オーシャンビュー

 部屋に戻って荷物を置くが、なかなか高級な部屋に思わず後ずさり。この部屋を高級と感じてしまうのは、旅慣れた人なら鼻で笑いそうだが、やはり私のホテルの部屋と言えば基準としてはビジネスホテルがあるので、やはりリゾート系ホテルの部屋は気後れしてしまうのである。それどころか私がもっとも頻繁に使用しているのは、ビジネスホテルの中でも最底辺クラスの、新今宮の一泊2000円台の元ドヤだったところだったりするので、あまりの落差に驚くのである。

 

 

とりあえず砂風呂へ

 いささか気後れはしたものの、とりあえず浴衣に着替える。このホテルは一応ホテル内は浴衣とスリッパでウロウロしてよいらしい。こういう点はあまりフォーマルではない(つまりは私向きだ)。で、やはり指宿に来たらこれはしないといけないだろうということで砂風呂に向かう。

 砂風呂は素っ裸でそれようの浴衣に着替え、砂に横になった上に砂をかけてもらうという形式。砂をかけられる前から既に背中がポカポカと温かいというよりも熱いんだが、砂をかけられると完全に蒸し風呂になる。どうしたわけか左手首が火傷しそうなほどに暑かったので動かしたんだが、そう言えば「低温火傷に注意」との表記があった。

 砂はずっしりと重く、またカッカした身体からかなり汗が出る。要はサウナ効果と砂による圧迫効果が肝なんだろうと思うが、思いのほかきつい。以前に砂風呂を体験した時にも思ったのだが、この程度の砂で体の動きがこれだけ阻害されるのだから、土砂崩れなどに生き埋めになった人が自力ではどうしようもないのが納得できる。そういう最後だけは送りたくないものだと思ったりする。

 お勧め時間は10~15分とのことなんだが、足にかかった砂の圧力がもろにかかとにかかって、両かかとが痛くて仕方ない。結局のところ10分ほどでギブアップである。そもそも私はサウナも苦手だし・・・。

 後はシャワーで砂を落としてから、展望浴場で入浴して体を洗う。確かに大分汗をかいたのは分かる。それによって体の毒気が抜けたというよりも、各所に溜まっていた疲労が一気に表に出た感覚。今日の山城連荘で思いのほか足腰がガタガタになっているのが改めて分かる。なんせ深めの浴槽に入ろうとしたら、足が踏ん張れなくて転倒しそうになったというお粗末。

 

 

大浴場はナトリウム塩化物泉

 砂風呂体験後は、部屋に戻る前に大浴場に立ち寄ることにする。指宿温泉はナトリウム塩化物泉なのであるが、要は地下で温まった海水じゃんと言われるからか、わざわざ「指宿温泉は化石海水で、太古の海水が地層中で変性したものであり、海水とは成分が異なる」との説明看板まで立っていた(笑)。ナトリウム濃度がかなり高いのだという。しかしそれを見ていると「要は煮詰まった海水じゃないの?」という意地悪い考えも浮かんだのであるが・・・。

 しかし確かに単なる海水風呂と湯の感触が違うのは事実である。海水風呂だともっと不快なねっとり感があるが、それは少なく比較的さらっとしている。ナトリウム塩化物泉の特徴はとにかくぬくもること。後で体がポカポカしてくるのである。とりあえず大浴場と露天で指宿の湯をじっくりと堪能するが、いささか暑がりの私はむしろ部屋に帰ってから体が火照って困った。

 夕食の時間がかなり先なのでそれまでは原稿の執筆・・・と思ったのだが、先ほどから温泉で体がほぐれるとともに体が綿のようにグダグダになっているのを感じる。昨日が1万4千歩も歩いていたが、実は今日も歩数はほぼ同じ。しかも登った階数が43階となっている。下半身がグダグダであり、それが異様な全身の重さにつながっている。結局は全く文章が浮かばず、それどころかテレビを見る気力さえなく、ベッドの上に横たわったと思ったらそのまましばし意識を失ってしまった。

 

 

夕食は洋食のフルコース

 なんだかんだでグダグダの内に夕食の時間となったので、レストランの方に出向くことにする。夕食は洋食のフルコースとのこと。酒が皆目駄目な私は、例のように飲み物はコーラを頼んでいる。

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高級ホテルとはこういう演出まで凝っているものだ

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雰囲気が高級すぎてやや気後れするのは悲しい貧乏人

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本日のメニュー

 まず前菜から。カンパチのマリネが抜群に美味いが、さらに車海老の生春巻きが非常に美味い。

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前菜からして抜群に美味い

 スープはキノコのしっかりとした触感が心地よい。実に美味。

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キノコの食感も美味なスープ

 メイン一品目はカジキの焼いたものだが、ややしょっぱいカジキとあっさりしたナスの取り合わせが絶妙。ああ、野菜って美味いなと感じる一品。

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カジキと野菜の取り合わせが良い

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マンゴーのジュースを頼んだが、これも美味

 次がステーキ。赤身のステーキが注文通りのミディアムで焼きあがっている。赤身肉なのでさっぱりした口当たり。こうして食べるとしつこい霜降りと違い、赤身も良いというのを非常に感じる。また付け合わせの野菜も美味だが、驚いたのは焼いたプチトマトの甘さ。思わず「えっ?」という声が出た。実は火加減が非常に難しいのだとか。トマトを焼いたものがこんなにも甘いとは衝撃であった。

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赤身肉のステーキ

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見事にミディアム

 そしてデザート。ガッツリとガトーショコラにカキのシャーベットだそうな。シャーベットはさっぱりとした口当たりで実に爽快。ガトーショコラはケーキとしては美味いのだが、コースのデザートとしてはいささか自己主張が強すぎ気もしないではない。

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デザートはガトーショコラにシャーベット

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そしてコーヒー

 これで夕食は終了。非常に満足のいくものであった。思わず「ああ、高級ホテルのディナーは良いよな」という言葉が出そうになる。こうして人はまた堕落していくのである。

 夕食後はしばし原稿執筆をして時間をつぶす。そして寝る前にもう一度入浴しておこうと大浴場に向かい、しっかりと体を温めるとこみ上げてくる眠気に体を任せて、この日もやや早めに就寝する。

 

 

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