徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

関西フィルいずみホール公演で、デュメイサウンドを堪能する

いざ、いずみホールへ

 今日は木曜日、週末に向けて仕事の方もラストスパートと言うところだが、今日は午後の仕事を早めに切り上げて大阪に出向くことにする。目的は関西フィルのいずみホール公演。先週末にデュメイの演奏を聴いたところであるが、今回はデュメイの指揮を聞くことになる。デュメイの指揮はコロナ禍になってから全く聞いていないので、実に丸2年半以上ぶりということになる。

 開催場所がいずみホールということでホールの勝手が分からない(特に駐車場が全く分からない)のと、さらに大阪市内の混雑が全く読めないということもあって、用心をしてザ・シンフォニーホールの時よりも早めに仕事を切り上げて車で大阪に向かう。

 しかしこういう時に限っていつになくスムーズに流れたりするのが阪神高速である。全くもってここには魔物が住んでいる。結局は想定よりもかなり早めに現地に到着してしまう。ホール駐車場の利用者割引は開演の1時間半前からなので、しばし道路脇に車を止めて車内でタブレットで録画番組を見ながらつぶすことに。「歴史探偵」の倍速視聴を終えた頃にようやく駐車場の時間が来るので移動。とりあえずは駐車場の確保には成功する。

 

 

 開演までに時間は十分あるので周囲で夕食を摂ることにする。この辺りと言えばOBPか(私はニューオオタニで食事できる身分ではない)。とりあえず店を物色。と言ってもこういう時はすぐに面倒くさくなるのが私の習性で、結局は見かけた中華料理屋「梅蘭」に入店してAセット(1630円)を注文する。

OBP3階の「梅蘭」

 至って普通の中華で可もなく不可もなくと言うところ。一応大衆中華ではない味はしている。とは言うものの、驚いたり感動したりするレベルでもない。場所柄CPが良いとは思えないが、料理の内容を見たら悪いわけでもないだろう。つまりはあらゆる点で可もなく不可もなくである。

まだ一品足りない

天心は後から来た

 夕食を終えると、そのまましばしこの原稿を執筆(笑)してから、頃合いを見計らってホールへ移動する。

 いずみホールも久しぶりである。ここも丸2年以上来ていなかった。ザ・シンフォニーホールなどと比べるとやや小振りのホールであるが、客の入りはザッと8割というところか。

かなり久しぶりのいずみホール

 

 

巨匠デュメイのベートーヴェン&ビゼー

指揮&ヴァイオリン:オーギュスタン・デュメイ(関西フィル音楽監督)
ピアノ:アンドリュー・フォン・オーエン

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第7番 ハ短調 作品30-2
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58
ビゼー:交響曲第1番 ハ長調

 最初はオーエンとデュメイが並んで入ってくるが、その印象は「デカッ」というもの。デュメイもかなりの長身だが、オーエンもデュメイと同じぐらいの背の高さがある。2人とも何となく「縦に引き伸ばされた」ようなスタイルである。おかげで続いて入ってきた楽譜めくりの女性が子供に見える。

 一曲目はデュメイのヴァイリオンでベートーヴェンのソナタであるが、ここで驚かされるのはデュメイよりもむしろピアノ伴奏のオーエン。いきなりガツンガツンとかなり表情の豊かな演奏をするので、伴奏ではなくて正面に出てきてデュメイとタイマンを張るという印象。デュメイの演奏も相変わらず個性の強いものであるが、それに輪をかけて個性の強さを感じる演奏。結局は両者の丁々発止のやりとりが繰り広げられた演奏となる。

 当然ながらピアノ協奏曲となるとオーエンの表現はさらに激しいものとなる。比較的大人しい印象のあるこの曲を、よくぞここまでと言うほどに強弱変化にテンポの揺さぶりなどあらゆる表現を駆使して濃厚な演奏を繰り広げる。もっともそれでもさすがにバックのオケと合わせることを意識して、実はこれでも表現を抑制しているようである。バックを気にしなくて良いカデンツァとなれば、煽るわ揺らすわとかなり過激な表現を繰り広げる。

 一方の関西フィルなのだが、もう最初の音から「ああ関フィルサウンドだ」と頷くような音色。デュメイが鍛えた関フィルの音色である。ネットリとシットリとしたシルクの肌触りのような弦。これこそまさしく関フィルサウンド。最近はこの音色を聴いてなかったよなということに思い至る。この関フィルサウンドがオーエンの奔放な演奏を裏からしっかりと支えてなかなかに聴き応えのある演奏となった。

 休憩後の後半はビゼーの交響曲。この曲はとにかく明るく爽やかで軽快な曲だが、第一楽章からデュメイはギュンギュンと突っ走る。それに対して一糸乱れずについて行く関フィルサウンド。煌めく朝の光が過ぎっていくような心持ちの快適さである。

 第二楽章はオーボエを初めとする管楽器が大活躍する叙情的な楽章。ここはしっかりと感情豊かに謳わせてくる。時にはしっかりと溜まで入る感情豊かな演奏である。そして第三楽章は美しいハーモニーを聴かせつつ、しっかりとメリハリの効いた演奏。

 そして軽快でありながら怒濤の最終楽章。デュメイもかなり捲っているのだが、決して雑にはならないというところが最大のポイント。とにかく軽快さ、爽やかさに満ちた演奏であった。

 ああ、デュメイの関フィルサウンドを堪能したなという演奏であり、久しぶりに満たされた気分。やっぱりデュメイはただ者ではないし、デュメイの手にかかると関フィルの音が根本から変化するというデュメイマジックを改めて体感した次第。仕事を早めに切り上げてでも飛んできた甲斐があったというものである。

 久々のデュメイサウンドを堪能したのは私だけでなかったようだ。日頃の関フィル定期と比べて数割増しぐらいの熱気にホールは包まれて、デュメイは何度もステージに引っ張り出されることになっていた。最後はいささか強引なぐらいに打ち切って幕である。