徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

難所の松牟礼城を見学して、宝泉寺温泉のお洒落なホテルで温泉三昧

まずは美味い朝食を堪能してから筋湯温泉を後にする

 翌朝は7時ごろに起床すると、まずは入浴して体を温める。とりあえず体温を上げないと活動もままならない。大浴場でのんびりゆったりとくつろいでから朝食に出向く。

和食の朝食

 朝食はお約束のような和食であるが、焼きシイタケがあるのがご当地っぽいか。肉厚のシイタケがなかなかに美味い。これは日頃シイタケはほとんど食べない私が言うのだから間違いない。野菜嫌い、魚嫌いなど人によって好き嫌いはよくあるが、往々にしてその原因は「本物を食べたことがない」ということにある場合が多い。ご当地で本当に良いものを食べたら必然的に好き嫌いは減る。私も最初はかなり好き嫌いが多いほうだったのだが、各地に行っていろいろ食べているうちに好き嫌いが激減した。

焼きシイタケがご当地らしい

 朝食を堪能するとチェックアウト時刻の10時まで部屋でグダグダしてからチェックアウトする。こういうギリギリまでホテルでグダグダするのは、今回の遠征が無目的ノープランであることが大きいが、実のところ朝一番から活動する気力及び体力がなくなったというのもある。これが30代くらいのころなら、まさに寸暇も惜しんで早朝出発というのが常だった。時にはホテルに頼んで早朝の6時にチェックアウトさせてもらったこともある。あの頃はホテルといえば本当に寝るだけだったから、ビジネスホテル以外の選択肢なんてなかったが。また日本各地も刺激に満ちており、各地に未訪問の山城、美術館、名所などがあった。年を取るというのはそういうフロンティアが無くなることも意味している。

 

 

九州芸術の杜に立ち寄ることにする

 さてチェックアウトしたものの、細かい計画は全く立てていない。とりあえず思いつくのは、この近くに九州芸術の杜なる美術館があったはずという情報。俳優である榎本孝明氏の美術館を始めとして数人の作家の作品を集めた別荘美術館というようなものらしい。まあこの手のリゾート美術館には大したことのないところが多いのだが、何も予定がないよりはマシだろうと向かうことにする。

 現地にはすぐに到着する。入場料金を払って入場すると、一番手前にあるいかにも別荘風の榎本孝明美術館。俳優として有名な榎本氏だが、どうやら絵画の趣味があるのか、各地を訪れた際にスケッチなどを多数描いているようである。そのようなスケッチを展示してある。正直なところ自ら絵画を描かない私にはその技量のほどは判断できないのだが(何しろ私の画力は「鬼灯の冷徹」に登場した白澤とタイマン張れるレベル)、変に技巧的でなくて非常に素直なタッチであるのが好感を持てる。

榎木孝明美術館

 隣にあるのが小路和伸氏の美術館だが、アクリル絵の具の鮮やかな色彩で描いたやけに空に固執している風景画が特徴であり、かつなかなかに魅力的である。非常にイラスト的なので一般受けもしやすい作風。なお向かいにかなり爆発した建物が建造中であるが、それは小路氏が自ら建造中(まさに自分自身でセメント練って建てているらしい)というアトリエで、完成まであと数年かかる見込みとか。

小路和伸美術館

この爆発している建物は建設中のアトリエ

 これ以外にも洋画家工藤和男氏の美術館がある。彼の作品は濃厚な色彩で描いた漁港の人々の姿などのインパクトの強い作品が多い。

工藤和男美術館

 実に端正な日本画を描く後藤純男氏のリトグラフを展示した美術館などもありここは展示作の販売も行っている模様。

後藤純男リトグラフ館

 笑えたのは城本敏由樹氏の美術館。非常に力強い赤富士などのインパクトが強烈な作品を展示してあるのだが、その合間に「私は絵が下手だからこんな作品でごまかしてるのではありません」と言わんばかりに写実的な鯛の絵などが同時に展示してあること。なんちゃって自称アーティストの中に本当にまともな絵を描けないのがいるから・・・。ちなみに私は彼の強烈な作品には結構好感を持った。

城本敏由樹美術館

 なんだかんだで各美術館を散策しながら回っていたら1時間ちょっとぐらいを費やした。正直なところ全く期待していなかったのであるが、案に反してなかなかに面白かった。これは上々。

 

 

松牟礼城を見学することに

 九州芸術の杜の見学を終えたところではたと困ってしまう。今日はこの後が完全にノープランである。しかしまだ午前である。そこで今まで調査した諸々を頭の中でザッとひねくり回して、一つのプランに行き着く、松牟礼城を見学しよう。

 事前の調査によってここから東にかなり走った山中であるが、松牟礼城なる山城があることが分かっていた。ただ先人達の記録によると「車ですぐ近くまでいけるものの、その道路に難がある」とのことだった。正直、体力も運転の腕も自信のない私はパスかとも思っていたのだが、ここまでノープランになってしまうとこのぐらいしか思いつかなかった。

 松牟礼城は奥豊後グリーンロードから脇道を進んだ先にある。この奥道後グリーンロード、名前からするとハイウェイか何かのようだが、実際はグリーンロードの名の通り、森の中を突っ走るハイランドウェイである。しかも場所によっては1.8車線ぐらいになるところも。この道からさらに脇道へとなると不安が過ぎる

グリーンロードに脇道がある

 10分程度でその横道の入口にさしかかる。あまり目立たないが松牟礼城の案内看板も立っている。とりあえず入口は侵入に不安を感じさせるような雰囲気はない。しかしいざ進み始めると100メートルほどですぐにすれ違い困難な道幅に突入する。こうなると対向車が来ないことをひたすら祈るのみである。

分かりにくいが案内看板あり

最初はそれほどひどい道でもない

しかしすぐに道幅は狭まる

 

 

道路はついに未舗装道路に

 しかもこの道路はこれで終わらない。ついには途中で舗装が終わってしまい、その後は未舗装道路。草がぼうぼうに茂る道を車の底を草でザワザワ言わせながら走るしかなくなる。私は「傷へこみ上等」の山城アタック用ノートを持参していたので突っ込んだが、レンタカーで来ていたら引き返さざるを得なかったろう。また大型車、車高の低い車(まさかシャコタンで山城攻める馬鹿はいないと思うが)は断念するしかない。

そしてついに舗装がなくなる(と言うか、これが道か?)

 車の底やサイドをザワザワと草で擦るし、途中でタイヤが滑らないか不安になるような登りはあるしでエッチラオッチラとようやく車で行ける終点にさしかかる。事前情報でこの先に駐車場があるというので、その情報だけが頼りでここまで来たが(もし駐車スペースがなかったら転回不可能)、確かに車を4台ほど止められそうなスペースがある。恐らく作業用車両を駐車するためのものと思われる。なお現在ここの手前の分岐まではGoogleストリートビューで見ることができるが、この駐車スペースについては不明なので私のように不安を感じる人もいるだろうと思うので、その写真を掲載しておく。

この分岐のところまで来られる

このような十二分の駐車スペースがある

 

 

城内を進む

 車を置くと先ほどの分岐を150メートルほど進むと松牟礼城に到着である。最初はなだらかな登りで、本丸が近づいた最後の最後にそれっぽい急な登りがあるが、体力ガタガタの私でも問題なくたどり着ける(ただし息は切れ切れ、心臓バクバクとい情けなさ)のだが、通常の山城マニアなら何の問題もなく5分程度で到着できるだろう。

この分岐を登っていく

道はこんな感じで最初はほぼ平坦

分岐があったりするが

そういうところには案内看板

こういう削平地は明らかに曲輪跡だろう

ここから少し登り

 

 

ようやく本丸到達

 急斜面を少し登って、冠木門ならぬ倒木の下をくぐれば本丸到着である。本丸にはかなり立派な石碑が立っているが、スペース自体はそう大きくない。堅固とは言っても周りからかけ離れすぎているし、やはり最後のお籠りのための城というところか。松牟礼城の詳細は知らないのだが、この辺りを治めていた大友氏配下の田北氏のお籠もりのようの城だったとか。周りに小削平地はいくらか見られたので、数百人ぐらいは籠れそうではある。まあこんな山奥まで追っかけて攻めようとするやつが本当にいるのかは不明だが・・・と思ったのだが、城主不在のおりに島津が落としたらしい。さすが島津バーサーカー軍団、見境がない。

斜面を回り込むように登る

登り切ると冠木門ならぬ倒木門が

本丸へ到着

立派な城跡碑が立っている

 下を見るとまだ尾根筋沿いに先があるような雰囲気はあったが、これ以上降りていく気もせず、ここで引き返すことにする。コアな山城ファンならいろいろと遺構を見つけ出すのかもしれないが、私のレベルでは石碑が立っている主郭が一つで、その周辺に曲輪の可能性のありそうな箇所がチラホラという程度の感覚である。

回りはかなり切り立っている

尾根筋沿いに何やら構造がありそうな雰囲気はあるが・・・


 正直なところあの道だと「こんなところに長居は無用」という感覚の方が強い。空模様も今日はずっと朝から怪しいし(おかげで灼熱地獄にさらされずに済んだのだが)。というわけでスゴスゴと撤退。グリーンロードに出てきたらホッとしたのである。ああ、あの道から出てきたら、このグリーンロードもハイウェイに見える(笑)。

 

 

長湯温泉のかじか庵で昼食と入浴

 さてもう昼時を過ぎているし、先ほどのあの程度の移動でも汗をかいた(正直なところ、悪路走行の冷や汗の方が多い気もするが)。どこかで昼食を摂るついで一汗流したい。と思ったところでこの近くで思いつくのは長湯温泉である。以前の九州遠征でかじか庵に宿泊したが、あそこはレストランも経営していて、実際に朝食が美味かったのを覚えている。泉質抜群の温泉もあるし、そこに立ち寄ることにする。

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 長湯温泉へはグリーンロードから10分程度である。1年半ぶりにかじか庵を訪問する。まずはレストランの「食事処せり川」の方に入店すると、川魚づくしという「せり川御膳(2200円)」を注文する。

かじか庵に到着

 エノハの塩焼きにうなぎ、さらに鯉の洗いまでついていて川魚のフルコースである。エノハを頭からバリバリ頂くが、やはり川魚は美味い。そして鯉の洗い。これは私の大好物。もう涙が出そうなほどに美味い。やはり川魚は海の魚より野性味があって味が濃いのが何よりも魅力である。川魚フルコースを堪能して、満足度の極めて高い昼食を摂ったのである。思わず「ああ、生き返る」という言葉が出る。

鯉の洗いにエノハの塩焼き

さらにうなぎまで

 昼食の後はかじか庵の浴場「湯処ゆの花」で入浴することにする。ここの浴場はマグネシウム・ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩泉ということで、いわゆる炭酸泉であるが、41度のお湯を無加水・無加熱・無消毒・無循環で純粋なる源泉かけ流しを行っている。湧出温度が若干低めなのでぬるま湯の雰囲気だが、ジッと浸かっていると炭酸の効果で体がポカポカしてくる。以前の訪問時は11月だったので若干の肌寒さもあったが、今のシーズンならまさに最適である。ラムネ温泉のようなこれ見よがしの派手な泡着きはないが、湯が体に優しくまとわりついてくる感じで、通常は烏の行水で5分と入浴することのない私が、いつまでも入浴していられる。以前の訪問時に泉質の非常な良さに感心したのだが、その泉質はそのままであった。また湯の表面一面に浮いている湯の華も。

 美術品で心を癒し、山城を一つ攻略して体を動かし、そして地場の美味い飯を食い、さらに良い湯でたっぷりと体をほぐす。まさに極楽至極、「男はこうありたいね」と一昔前のアメックスのCM(今のご時世だと内容的にアウトだろう)のようなことを呟きつつ、非常に満足の高い一日を送ることができた。後は今日の宿泊ホテルを目指すだけである。

 

 

宝泉寺温泉で宿泊

 今日宿泊する予定のホテルは宝泉寺温泉の「はんなりおやど龍泉閣」。宝泉寺温泉はちょうど筋湯温泉のさらに西なので、ここまで走行した道を戻る形になる。山道を走行すること1時間ほど、ようやく宝泉寺温泉に到着。宝泉寺温泉の温泉街はかなり鄙びた雰囲気が漂っており、秘湯から秘湯に移動したという感じである。

宝泉寺温泉は川沿い

龍泉閣

 龍泉閣にチェックイン。ホテルは綺麗で女性も喜びそうな洒落た雰囲気。そこに宿泊するむさいオッサン(もう既に爺さんか?)一名。コロナ感染防止のために部屋に荷物を運ぶのは止めているとのことだが、感染防止よりも人件費削減ではないかという気も。

ロビーには洒落たカフェが

 部屋は広くてきれい。布団は既に敷いてあるというのは今どきの省力化。だが私はこの方が早めから布団の上でゴロゴロできるので好み。

部屋は広くて綺麗

窓からの風景

 部屋に入るとまずは仕事環境構築。昨日のホテルと違って大きな座卓があるので作業スペースに困らない。意外と機能性が高いのが日本間である。今どきのホテルらしくWi-Fi完備なのでネット接続もスムーズに。と、ここまで来たところで一つ困ったことに気付く。今日はひたすら山の中を走り続けていたので、ライフライン(ミネラル麦茶の意)の補給が全くできていないのだ。とりあえずまだ日が高いうちに買い出しに行くことにする。

仕事環境もスムーズに構築

 ネットで調べたら近くにスーパーファミリーマートなる怪しい食料品店(ファミリーマートなのに営業時間は7時までのようだ)があるので覗いてみるが、日曜のせいか、廃業したのかは定かではないが閉まっているので、さらに先に足を延ばすことになる。結局は九重IC向こうのローソンまで20分近く走行する羽目に。コンビニがない、これは僻地あるあるである。

 

 

とりあえず入浴である

 取りあえずライフラインを補給すると大浴場へ直行する。ここの泉質はナトリウム・塩化物系の弱アルカリ単純泉であり、そう強い浴感はない。ただホテルはメタケイ酸も多いので美肌に良いということを謳っている(やはり女性がターゲットの模様)。クセのない柔らかい湯なのでゆったりと浸かっていられる。湯上りにはナトリウム・塩化物泉の常としてやや体のべたつきを感じる。

男性大浴場

内風呂の奥には小さな露天が

 入浴を済ませるとしばし執筆作業。この宿の資料を調べていると打たせ露天風呂があり、男性は19時までとの記載がある。時間を見ればちょうど18時、慌てて入浴に行く。

庭園露天風呂とあり、屋外である

 打たせ露天とは庭園風呂と銘打ってあるだけあってまさに野外風呂。そこにお湯が降ってきているので、それを滝修行よろしく体に当てるとコリがほぐれるという趣向か。まあそれは良いんだが、正真正銘の野外風呂だけにとにかく浮遊しているゴミが多い。特に虫の死骸が大量に浮かんでいる虫風呂になっている。私は露天とはこういうものと思っているから驚かないが、これは女性は文句言いそう。

打たせ露天

 露天から戻ってきてしばし執筆作業を続けていたら夕食の時間が来るので大広間へ向かう。

 

 

夕食は綺麗し美味い

 夕食は大広間で。内容はお約束の懐石料理だが、盛り付けに美しさがあるのがこのホテルらしい。

盛りつけからして美しい

寿司に鍋に小鉢など

メインは豊後牛の焼肉

 山の中で刺身などという謎メニューもあったりするが、メインの豊後牛の鉄板焼きが非常に美味い。柔らかい牛肉が絶妙。なおこの鉄板、実は鍬になっているというところが凝っている。

この焼肉が最高

 最後は鍋を楽しんでからデザートのゆずシャーベットを頂いて終了。非常に満足のいく夕食であった。

豚肉の鍋を頂くと

最後は柚子シャーベット

 

 

最後は貸切風呂でマッタリ

 この後は部屋に戻ってしばしの執筆作業ののちに、貸切風呂の方に出向くことにする。こちらは離れにある家族風呂。まあ大浴場も常にほぼ貸切に近い状態なのであえて貸切風呂を使用する理由もないのだが、やはりあるものは体験しておこうという貧民根性。よい湯を独占してゆったりと楽しむ。

貸切風呂で湯を独占

 思い切りくつろいだらもう何か作業する気力など吹き飛んでしまった。結局は敷いてある布団の上でゴロゴロしてそのうちに眠ってしまう。

 

 

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