徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

お知らせ

アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

福田美術館で東山魁夷を堪能してから、沖澤のどか指揮の京響の豊潤たる「英雄の生涯」

まずは嵐山に出向く

 翌朝は8時に目覚ましで起床。進進堂のパンの朝食があるというので2階まで出向く。朝食はパンとドリンクの簡易なもの。パンは3つまでにしてくれとの表示あり。残念ながらこれでは腹は膨れないが、まあエンジン点火の開始剤にぐらいにはなるか。

パンとドリンクの簡易朝食

 部屋に戻るとシャワーで体を温めてから出かける用意。今日の予定だが、嵐山の福田美術館とさらに今出川の承天閣美術館に立ち寄ってから京都市響のコンサートの予定。移動距離がかなり大きくなるので福田美術館が開館する10時に合わせて活動を開始する。

観光モードの嵐山駅で降車

渡月橋は観光客少なめ

 烏丸から阪急で嵐山に移動、嵐山は相変わらずのインバウンド大混雑だが、まだ時間が早めなのか若干人が少ない。福田美術館には開館10分前に到着するので、そのまましばし待つ。

美術館に到着

 

 

「東山魁夷と風景画の旅 日本から世界へ」福田美術館で4/13まで

現在の出し物

 独特の青い美しい風景画で知られ、国民画家とまで呼ばれた東山魁夷。彼の作品を核として東西の風景画を集めた展覧会。

 第1展示室は魁夷以前の画家の風景画。山水画の狩野芳崖に始まり、伝統の山水画に西洋絵画の技法を取り入れて端正な風景画を描いた橋本雅邦、西洋の技法を水墨画に取り入れた谷口香嶠などの作品が登場。

狩野芳崖「松霊瀑布之図」

橋本雅邦「秋山行旅図」

谷口香嶠「月夜天橋図」

 さらに日本画の変革を目指して朦朧体と言われる試行錯誤を繰り返した横山大観、菱田春草、そして彼らの同志でもある西郷孤月の作品。

横山大観「菜の葉」

菱田春草「枯野図」

西郷孤月「蘇李訣別」

 

 

 一風変わったところでは、速水御舟や土田麦僊の渡欧時のいつもと調子の違う風景画なども展示。

速水御舟「デッドシティー」

土田麦僊「ヴェトイユ風景」

 さらには福田美術館のイメージからはピンとこない西洋絵画も展示されている。

モネ「プールヴィルの崖、朝」

ピサロ「エラニーの積み藁と農婦」

ルノワール「コート・ダジュールの松林」

 

 

 第2展示室がいよいよ魁夷。いわゆる魁夷をイメージさせる「青い」作品から、それ以外のカラフルな作品まで多数展示されている。

東山魁夷「夕月」

東山魁夷「深秋」

東山魁夷「秋日」

東山魁夷「緑岡」

東山魁夷「秋深」

東山魁夷「静けき朝」

東山魁夷「月映」

東山魁夷「山峡朝霧」

 

 

 第3展示室では魁夷と同時代に活躍した小野竹喬、赤の元宗こと奥田元宗、独自性の強いダイナミックな作品を描いた加山又造などの作品が展示されている。

小野竹喬「秋」

加山又造「月光山稜」

東山魁夷「明宵」

 風景画ということでなかなか私の好きなタイプの作品が多数展示されており見応えがあった。それにやはり魁夷は良い。

 

 

 福田美術館の見学を終えると直ちに移動する。少々腹が寂しくはあるが、嵐山界隈のような京都でももっともボッタクリがひどい地域で何かを飲食する気にはならない。嵐電から地下鉄に乗り換えて今出川へ。

 今出川は同志社大学の最寄りらしく、出口で間違って同社大学内に入り込んでしまってウロウロ。しかも先ほどまではギリギリ保っていた天候が限界に来たか、雨がパラパラと降り始めた。何だかんだでいささか時間を無駄にすることに。それにしてもこの界隈は同志社大関係の赤煉瓦風味の建物ばかりである。

同志社大学構内に迷い込んでしまった

 承天閣美術館は相国寺の境内にあるが、もう昼時であるのでまずはそこに向かう前にやはり昼食を摂っておきたい。立ち寄ったのは「お食事処柳園」。同志社最寄りの中華料理店とのことで、平日なら学生や教師で賑わいそうな店である。「麻婆豆腐定食(830円)」を注文する。

お食事処柳園

 店内に「人手不足のために混雑すると時間がかかります」という趣旨の張り紙がしてあるが、確かに調理はやや時間がかかる。しばらく待った後に麻婆豆腐が丼に入って出てきたからボリュームにビックリ。もしかして麻婆丼か?(私は実は麻婆丼は好きでない)と思ったが、続けてご飯が出てくる。どうやら正真正銘の麻婆豆腐らしい。流石に学生の町である。

ボリュームたっぷりの麻婆豆腐定食

 麻婆豆腐の味付けはいわゆる町中華の味付けであって本格的からはほど遠いが、ホッとする味でなかなか美味い。最初に出てきた時には完食は無理だろうと思ったのだが、気がつけば完食していた。12時を回ると店内は教員とおぼしき客で混雑し始めるのでさっさと店を後にする。

 昼食を終えると美術館へ向かう。美術館は相国寺の北東奥にあるので結構歩く必要がある。雨がぱらつく中を歩くことに。相国寺春の特別拝観の看板が立っているのでついでに参拝もと思ったら、どうやら来週からの模様。美術館に直行することにする。

重要文化財の相国寺法堂

 

 

「畠中光享 日本画展 清浄光明を描く 一期」承天閣美術館で4/20まで(4/23~二期)

承天閣美術館

 奈良出身で日本仏教史を専攻、卒業後は度々インドを訪問しインド美術研究家しても知られ、仏教を題材とした作品を描いている日本画家の畠中光亨の展覧会。

 非常に明快な色彩で画面を塗り分ける塗り絵的で平面的に感じられる作風が特徴であるが、どうもその作風も長年の試行錯誤の果てに行き着いたように感じられる。スケッチなどを見ていると、本画ではあまり現れていない微妙な細かい線描や陰影などの表現も見られているところが興味深かったりする。

こういうタイプの絵である

 妙な静けさを感じるところがある絵画であるが、その辺りは仏教精神を尊重しているのであろうか。ただあまりにありがたすぎて、人間らしさが今ひとつ感じられないところが、私的にはあまり興味を惹かれないところでもあったりする。

 

 

京で抹茶と和菓子を頂く

 美術館の見学を終えたところでまだ開場までに1時間ある状態。今出川から北山なんてすぐそこなんで、今から行っても向こうでひたすら待つだけになる。何か喫茶でもあればな・・・と向かいを見れば和菓子店「俵屋吉富」がある。和菓子博物館が併設してあり、呈茶付きの入場券が発売されている模様。菓子は季節の菓子と雲龍(ここの名物らしい)で選べる。私は雲龍を選ぶ。

俵屋吉富

和菓子博物館が隣接

 しばし待った後に抹茶と茶菓子が。抹茶は綺麗な色をしている。なお野蛮人である私はお茶の作法の心得などは皆目ないが、それでも器はこちらを正面に出されるから、それを避けるために回してから口を付け、最後は飲み口を手で拭った後に器を元に戻すなんてぐらいは知っている。時々この器を回す意味を知らなくて、グルグルと一回転させてしまう奴がいるとかいうが、茶の作法も結構合理的なので、どうしてそういう作法があるかを理解したら分かりやすい。

茶席に通される

抹茶と雲龍

 茶菓子を堪能してから二階の展示を見学。和菓子の歴史と菓子で作った花などの展示がなされている。精緻な細工には絶句。なお和菓子自体はやはり国産の砂糖が一般に普及しだした江戸期以降が本番の模様。

 和菓子でマッタリした頃には開場時刻が近づいてきた。地下鉄でホールに移動することにする。現地に到着したのはちょうど開場時刻直後。入場してからしばし開演を待つことになる。ホールには結構来ており、9割は埋まっているというところか。

雨の京都コンサートホール

 

 

京都市交響楽団 第698回定期演奏会

本日の演目

[指揮]沖澤のどか(京都市交響楽団常任指揮者)
[ヴァイオリン]金川真弓
[フルート]クレア・チェイス

藤倉 大:ヴァイオリンとフルートのための二重協奏曲(日本初演)
R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」 作品40

 開演前に沖澤のプレトークがあったが、昨年から産休に入っていた沖澤は11月に無事に子供を出産され、今回は復帰コンサートということになるようである。なお今回のプログラムの藤倉については沖澤も個人的な思い入れが少々あるようで、今回は日本初演ということになるのは光栄だとか。

 一曲目はその藤倉の協奏曲。金川のヴァイオリンが流石の安定感があるし、クレア・チェイスのフルートも美しい。。ただ残念ながら曲の方が私にはやや不可解な曲。音色の美しさは感じるのであるが、メロディラインが明確ではない曲は私にはややキツい。「残念ながらこの曲は私にはキツいな・・・」と思って辺りを見渡すと、やはり落ちてしまっている観客がチラホラ。かく言う私も必死で意識をつなぎつつも、それでも知らない間に意識が飛んでしまっていたことが数瞬。

 という次第なので、恥ずかしながら曲や演奏の善し悪しを云々というレベル以前の状態になってしまった。決して聞きにくい曲でもなく、悪い曲や嫌な曲とは思わなかったのであるが、その美しさが逆に眠気を誘うところがあって・・・。

今回も3階正面席

 で、休憩の後は気を取り直して後半プログラム。なお沖澤のプレトークによると、今回は練習の段階からこのホールを使用しての練習が出来、ホールの特性に合わせてミッチリと練習が出来たので、京都市響の音自体がそこでかなり変化したという類いの事を語っていたのであるが、それはすぐに実感として体験することになる。

 もう既に冒頭から「おやっ?」という感じである。元々京都市響の音色は冴えがあってキレがあるのが特徴だが、今回は冒頭からそこにいきなり何とも言えない色気のようなものが加わって、実に豊潤というべき音色を出しているのである。

 最初の低弦とホルンの音色からしてまさに「馥郁たる」と表現したくなるような味わい深い音色となっており(まるでウイスキーのCMのようになってしまったが)、終始その調子で弦には色気のようなものが、管には艶が乗っていて、いつものややクール気味の京響サウンドとは印象がかなり異なる。

 そしてそのような音色はオケの色彩の魔術師たるR.シュトラウスの曲には非常にマッチしている。この曲はかなり難しい曲で、演奏が下手だと退屈極まりない長い曲になってしまうこともあるのだが、美しい音の奔流に巻き込まれているだけで睡魔の訪れる余地さえない。

 結局は最後までその調子でオケの音色に魅了されっぱなしで終わってしまった。まさに圧巻である。これは驚いた。以前より沖澤の指揮には「色彩」を感じることが多かったのであるが、それがある意味で極まった演奏であった。

 

 

夕食は九州料理

 コンサートを終えるとホテルに戻ることにする。帰りに夕食に立ち寄るにはまだ時間が早すぎるのでホテルに直行すると部屋でゴロゴロして時間をつぶし、7時前になったところで改めて夕食のために繰り出すことにする。

 今日はとっくに1万歩を越えているので、夕食のために遠くまで出向く元気は既にない。そこで近くのビルの地下の「薩摩ごかもん」を訪問する。

ビル地下の「薩摩ごかもん」

 メニューを見ると美味そうなものが多いがいささか予算オーバー気味。しかしこの時に私の頭の中で何やらプチンと切れる音が聞こえると、私はバーサークモードに突入してしまう。日常のストレスでこのままだと精神が壊れそうだ。もうここは食いたいものを食っちまえと腹をくくる。

 まずは飲み物にぶどうジュースを頼む。突き出しはイカの刺身か。イカをつまみながらぶどうジュースという奇妙な取り合わせだが、イカが美味い。

ブドウジュースと突き出し

 しばらくして注文していた馬刺しの三種盛と羽根つき餃子が到着。馬刺しは美味い。涙が出るほど美味い。やはり私は赤身が好きである。また餃子も私好みのサッパリ系餃子で実に美味い。これだと何皿でも食べられそう。

涙が出るほど美味い馬刺し三種盛り

羽根つき餃子もこれまた美味い

 最後にやはりご飯ものが欲しいと考えて高菜炒飯を追加。ややしょっぱめであるがなかなか。

ややしょっぱめの高菜炒飯

 夕食を堪能して以上で5000円弱・・・やってしもた。ストレスや疲労が限界を突破すると私は自動自衛モードとしてバーサークモードに突入するのであるが、そうなると行動力は3割増しになるのだが、先のことを考える知能が半分以下になってしまう。今回も今月の財政に大穴を開けることに・・・。

 

 

 しかしもう気分は毒食えば皿まで。さらにこの後「星乃珈琲」に立ち寄ってアイスコーヒーとパンケーキまで頂くことに。ヤバい、1万3千歩超えた私は完全に判断力が死んでいる。

勢いで星乃珈琲に立ち寄る

アイスコーヒーとパンケーキ

 夕食とお茶を終えてホテルに戻るとしばしグッタリ。やはり歩き過ぎで疲労が強くて集中力がない。しばし布団の上でボンヤリしてから入浴へ。体が温まると今度は眠気も出てくる。布団に仰向けになってタブレットでコミックを読んでいたら、ウトウトしてタブレットが顔面直撃する羽目に。こりゃ駄目だと就寝することにする。

 

 

この遠征の翌日の記事

www.ksagi.work

この遠征の前日の記事

www.ksagi.work