翌朝は8時に目覚ましで起こされる。どうにも体がだるい。レストランでバイキング朝食を摂るとシャワーを浴びて目を覚ますがどうにもシャッキリしない。この日はチェックアウト時刻の11時近くまでゴロゴロする。
さて今日の予定だが、美術館の梯子をしてから奈良に移動の予定。最初に向かう美術館だが、遠い方から泉屋博古館。住友コレクションの美術館で東京に分館がある。この分館の方は何度か訪れているが、京都の本館の方は初めてである。
泉屋博古館はかなりはずれの方にあり、アクセスはバスによるようだ。5系統のバスが通っているとのことなので、四条駅の近くのバス停からバスで移動することにする。東天王町バス停で下車すると、そこから住宅街を少し歩いたところに美術館がある。
「上島鳳山と近代大阪の画家たち」泉屋博古館で7/24まで
日本画壇と言えば東京と京都が代表的なのだが、大阪でも多くの画家たちが活躍し、独自の世界を形成していてた。そういう大阪画壇の画家である上島鳳山の展覧会。
東京画壇とも京都画壇とも異なり、独特の濃さを持っているのが上島鳳山の美人画の特徴。スッキリとした伝統的日本画の流れを汲む京都画壇の作品などと異なり、西洋画的な技法も取り込んだ濃厚な立体表現の入ったものになっており、美人画などもその表情に独自リアリティのようなものがある。中央の画壇ではそれが悪趣味と見られ、鳳山の作品も官展で落選したりなどと言うことがあったようだが、今日的な目で見るとモダンというように感じることが出来る。
保守的な中央では評価されなくても、関西では鳳山はそれなりに評価され、住友家の依頼による多くの作品なども残したようだ。今日的な目で見るとこれらの作品は非常に生気に溢れて実に魅力的である。
展覧会のサブタイトルが「大阪の美人画は濃い!」というものだったのだが、確かに「濃い」という表現がピッタリくる作品であった。しかしそれは嫌みがあるわけでなく、濃厚でコッテリした味わいというところ。こうして見ると上村松園は京画壇の流れを、島成園は大阪画壇の流れを汲んでいるんだということが思い起こされる。この二人の画風の違いがそのまま京画壇と大阪画壇の違いのようである。
ちなみにこの美術館は青銅器の展示館もあり、そちらの方も逸品ぞろいであってかなり楽しめた。本当はもっとジックリ回りたかったのだが、腰の方が良くないことがあって落ち着いて鑑賞とはいかなかった次第。いずれ日を改めて再訪したい。
バスで遠くまでしんどい思いをして来たのだが、その甲斐はあったと言うべきかかなり満足できる展覧会であった。
昼食には蕎麦を食べる
次の移動の前に昼食を。美術館で割引券をもらったそば屋「光海」を訪ねることにする。注文したのは「そば定食(900円)」。
天ぷらそばにご飯と小鉢がついてくる。小鉢が意外にうまいのはさすがに京都。そばは悪くないのだが、このそばは二八かそれ以下か。もう少しそばの風味が強い方が私の好み。
奈良に移動する
昼食を終えるとバスで移動。当初の予定ではもう一カ所立ち寄るつもりだっただが、長距離移動で疲れてしまったのでもう京都駅に直行することにする。バスは河原町辺りで渋滞に巻き込まれて予定より遅れて京都に到着。京都の渋滞は相変わらずである。やはりこの町は本格的に他県ナンバーの流入規制を考えた方が良いだろう。
京都駅からはみやこ路快速で奈良を目指す。奈良までは40分強。やはりこの路線は単線なので時間がかかる。
奈良に到着するとホテルのチェックイン時刻まで時間があることから時間つぶしを兼ねて喫茶へ。駅の中にある「天極堂」で「極パフェ(918円)」を頂く。ここのパフェは寒天でなくてくず餅なのが良い。やはり奈良はこれに限る。
宿泊は奈良の駅前ホテルで
喫茶でマッタリとくつろいでからホテルにチェックイン。宿泊ホテルはスーパーホテルLOHAS奈良駅前。最近は奈良で専らここに泊まっている。スーパーホテルにしてはやや高めだが、駅前の便利な立地に天然温泉大浴場付きというのが良い。
部屋に入るとしばしグッタリしてしまう。やはりからだにかなりダメージがある。休憩の後はとりあえず大浴場で汗を流すことにする。ナトリウム-カルシウム塩化物の弱アルカリ泉というのがここの泉質。特に強い湯ではないが入りやすい。
当初の予定では奈良県立美術館で開催中の藤城清治展を見学に行くつもりだったのだが、しんどくてその気にならない。結局は展覧会は明日に回すことにして、5時前まで部屋でグダグダと過ごす。
ホテルを再び出たのは5時前。バスで奈良県文化会館を目指す。今日はムジークフェストなら2016の一環でフランス国立リヨン管弦楽団の演奏会がある。そもそも奈良までわざわざ来たのはこのため。到着したホールは既に観客でごった返している。
フランス国立リヨン管弦楽団
レナード・スラットキン(指揮)
ベートーヴェン/エグモントより序曲
ラヴェル/スペイン狂詩曲
ラヴェル/ダフニスとクロエ組曲2番
ムソルグスキー(ラヴェル編)/組曲《展覧会の絵》
一曲目のベートーベンはオケのやや軽めの音色もあって、あまりベートーベンらしくないベートーベンという印象。
このオケの真価が発揮されるのは二曲目のラヴェルから。ラヴェル特有のキラキラとしたサウンドが繰り広げられ、このオケの特性が遺憾なく発揮されている。CDで聞いた時にはあまり面白い曲に思えなかったこれらの曲が、こうして聴くと実に魅力的に聞こえる。極彩色の音楽世界である。
一方、ラストのムソルグスキーは予想外に渋い音色で鳴らしてきた。スラットキンの指揮も決して煽ることがなく堂々としたテンポ。しかしそれでいて終盤には段々と音楽が盛り上がってくる。キラキラサウンドで押してくるかと思っていた予想を裏切られて、さらに一段階上のサウンドを聞かされたという印象。さすがだったのは管楽器の抜群の安定性。国内オケのこの曲の演奏では管のソロがヒヤヒヤさせられる場合が多いのだが、そのような不安は微塵も感じさせることがなかった。
ちなみにアンコールではスラットキンのアレンジの「天国と地獄」。軽妙かつおふざけ満載のサウンドは、ある面でこのオケとスラットキンの真骨頂でもあるような気がした。
なかなかに密度の濃いコンサートであった。わざわざ奈良くんだりまで出てきた価値ありである。それにしてもこのオケはクラシックからポップスまでいけるオケのようだ。なかなか芸達者である。
コンサートの後は知人に夕食をゴチになり、ホテルに帰ったのは22時過ぎ。さっさと風呂に入ると24時頃にはバタンキューとなる。