徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

ダニエル・ハーディング指揮 パリ管弦楽団(京都コンサートホール)&「ロマンティックロシア」「吉村芳生」in 東京

 翌朝は8時前に起床すると、昨日買い込んでいた朝食を腹に入れ、9時頃にはチェックアウトする。今日は13時の新幹線で京都に移動することになっているから、それまでに残った予定を消化しておく必要がある。なお今回は移動費の節約のために新幹線をEX早得21で押さえているので新幹線の時間は厳守である。 

 まずは身軽になるために東京駅に立ち寄ってキャリーをコインロッカーに放り込む。いつも東京駅のロッカーに空きがなくて四苦八苦することが多いが、今日はさすがに平日なのでロッカーにも空きがある。

 身軽になったところで渋谷に移動する。今回の美術館方面でのメインはここ。

 

「国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンティックロシア」BUNKAMURAで1/27まで

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 ロシアの実業家トレチャコフが蒐集したコレクションに端を発したロシア美術の殿堂がトレチャコフ美術館。その中から19世紀末から20世紀初頭にかけての印象派の手法を用いていた画家たちの作品を展示。

 展示作は印象派的な作品ではあるが、ロシアという土地柄かやや保守的な印象があって、手法的にはヨーロッパほど尖った作品は少ない。その一方で絵画としてはしっかりと描きこんだ好ましいものが多い。

 やはり一番インパクトがあるのがクラムスコイの作品。本展の表題作にもなっている「忘れえぬ女」は背景はいかにも印象派的なサクッとした表現なのにも関わらず、人物はかなり詳細でリアルな描写を行っている作品。おかげで人物が浮き立っているような効果を上げている。また同じくクラムスコイの「月明かりの夜」も幻想的で美しい絵画。

 これ以外ではシーシキンの一連の風景画が記憶に残るところ。ロシアの風土を叙情たっぷりに緻密に描きあげた絵画は非常に美しい。


 美術館を後にした時には11時頃。新幹線に乗る前にもう1カ所美術館に立ち寄る。と言っても東京駅最寄りの美術館なので時間には不安はない。

 

「吉村芳生 超絶技巧を超えて」東京ステーションギャラリーで1/20まで

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 延々と17メートルに渡る金網、リアルに書き写した新聞紙面など鉛筆画による独特の世界を展開した吉村芳生の展覧会。

 一番一般受けしやすいのは色鮮やかな花を描いた作品だが、どうもその手の作品は彼にしては食い扶持稼ぎのつもりもあったのかもしれない。もっとも強烈に彼自身の己が表現されているのは新聞紙に自身の肖像を描いたシリーズ。自分と社会との関わりをそこに表現していたのだろう。

 執拗で異様に細かい表現には、何がそこまで彼を駆り立てたのかと疑問も感じたりするのだが、独特のインパクトのある作品ではある。

 

弁当を買い込んでから新幹線で京都へ

 美術館を出た時には12時過ぎなのでそろそろ新幹線が気になる頃。昼食を摂る必要があるが、朝食を遅めの時刻に結構ガッツリと食べたせいかあまり空腹感はない。これはどこかに店に入るよりも、駅弁でも買って車内で済ませることにする。

 結局はキャリーを回収すると、駅内で深川飯を買い込んでこれが今日の昼食。後は京都への移動である。今、京都への車内でこの原稿を入力中。

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昼食は新幹線車内で深川飯

 ふと正面の電光掲示板を見れば、東名の煽り運転で二人殺した殺人鬼に対して、地裁が危険運転致死を認めて懲役18年の判決が出たとのこと。当たり前である。しかし正直なところ、これで殺人罪が適用されないのは法律の不備と言っても良いし、検察の求刑の懲役23年よりも減ったことは不満。本当の妥当な判断は殺人罪で死刑である。

 

京都の定宿で宿泊と夕食を

 京都に到着すると今日の宿泊ホテルであるチェックイン四条烏丸に移動する。チェックインして部屋に入るとシャワーを浴びるなどしばしくつろぐ。相変わらず笑えるほど狭い部屋だが、この部屋にも大分慣れた。

 さて今日の夕食をどうするかだが考えるのも面倒くさい。いっそのことコンサートの後にするかとも思ったが、それだとやはり時間が遅すぎるだろう。結局はホテル内の飲食店プレミア百に立ち寄ってエビフライと卵焼きにご飯セット。これで900円だからCPは結構良いだろう。残念なのは卵焼きの味が薄すぎる。もう少し出汁を効かせて欲しいところ。

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お手軽でCPも良い

 夕食を済ませるとホールに移動する。北山のコンサートホールはクリスマス装飾になっている。私的にはもうクリスマスはオワコンなんだが。

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京都コンサートホールでは電飾が

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完全にクリスマスモード

 

パリ管弦楽団

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[指揮]ダニエル・ハーディング(パリ管弦楽団音楽監督)

[ヴァイオリン] イザベル・ファウスト

ベルリオーズ:オペラ「トロイアの人々」から 「王の狩りと嵐」

ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.61

ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 op.68「田園」

 札幌で転倒して足を骨折したハーディングがいきなり車椅子で登場。今年はこれでデュメイ、メータに続いて座っての指揮を見るのは3人目。一体どうなってるんだか。

 しかし演奏の方はハーディング自身が「関係ない」と言い切ったというだけあって負傷のことは一切感じさせない。ハーディング自身、興が乗ってくると片足で立ち上がって指揮をしている場面もあった。

 最初は16編成でかなり煌びやかな曲。さすがにパリ管は上手い。管は抜群の安定性の上に音色に艶がある。そして弦はドッシリと分厚い。その魅力をいきなり遺憾なく発揮する。

 ベートーベンになると一転して12編成で安定したアンサンブルを聴かせるようになる。協奏曲についてはヴァイオリンのイザベル・ファウストの演奏なのだが、技術的には高いのだろうが、どうも音色がか細いのが気になるところ。バックのオケがフルで演奏すると小編成にしていても音がかき消される傾向がある。

 田園についてはやや速めのテンポで非常に生命力に満ちた演奏。煌びやかな音色が極上のサウンドを展開しており、実にキラキラとして躍動感のある活気溢れる演奏。正直なところ私はこの曲は退屈で今ひとつと思っていたのだが、その先入観を破壊する見事な演奏である。この曲はかくも多様で美しい響きに満ちていたのかと再認識した。演奏終了後もあまりの気持ちよさに思わずしばし陶酔してしまったぐらい。


 さすがにパリ管、極上のサウンドであった。ただフル編成での曲が最初の一曲だけというのはいささか寂しさもある。今回の来日でのプログラムは「田園」と「巨人」の二枚看板になっているが、それぞれ違うパリ管をお楽しみくださいという趣向か。

 ホテルに気持ちよく帰ってくると、大浴場でゆったりと入浴する。その後はブルーレイでサイエンスZEROを見て過ごす。