徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

東京に移動して、インバル×都響とノット×東響のダブルヘッダー、合間に辰野金吾

 翌朝は目覚ましで7時に起床。さて今日の予定だが、急遽東京に移動すると都響と東京交響楽団のダブルヘッダーという強行スケジュール。まだベルリンフィルの感動冷めやらぬ状態だが、インバルのショスタコとノットのマーラーを聴きに行こうという考え。例によって体力的にも財政的にも無茶苦茶なスケジューリングである。

 30分ほどでさっさと身支度を調えるとホテルをチェックアウトして新大阪に向かう。朝食は新大阪駅で買い求めた弁当。品川貝づくしを新大阪で購入とは何とも馬鹿らしい話ではある。

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昼食の品川貝づくし

 東京に向かう新幹線の中では持ち出しビデオをチェックしながら「教ドキュ」の原稿執筆。横から見たら移動中も仕事に専念する猛烈サラリーマンに見えるかもしれない。確かに私の私生活ってブログ絡みの作業がほとんどで、それ以外は寝てるか風呂入ってるか飯食ってるかぐらい。もしこれが仕事だったら壮絶ブラック職場でやってられるもんじゃない。もっともビジネスだったら、莫大な経費に対して儲けはほぼ0なんだから、とっくに破綻してるが(笑)。要するにブラック企業というのは、社員に仕事を趣味にしろと要求しているわけであるが、そういう会社に限って仕事内容は単なる労働力搾取で趣味の余地のないものばかりだから破綻しているわけ。そういう働き方を要求する経営者は自ら無能を証明しているようなものだから、ビジネスの世界からは永久に手を引くべきである。

 そう言えば、以前NHKに出演した時、スタッフが早朝から深夜までずっと仕事漬けなのに驚いたことがある。あれは結局彼らにとって仕事が趣味と一体化しているから成立するものなんだろう。実際に全員異様なモチベーションの高さがあった。それに当てられてしまって、その後のしばらくの間、自分の今の仕事について本当にこれで良いのだろうかと悩んでドツボにはまったことがある。あれを仕事として強制されていたらそれは単なる地獄である。

 原稿を2本ほど書き上げた頃に東京に到着する。よりによって東京は今日、山手線が工事で止まるとかで混乱を極めている模様。とりあえずその中を駅内の美術館へ。

 

「辰野金吾と美術のはなし」東京ステーションギャラリーで11/24まで

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 東京駅を建築した辰野金吾の業績を振り返る・・・とは言うものの、実際は一番の業績といえば東京駅の設計になってしまうので、東京駅の設計図がメイン。後は親交のあった洋画家・松岡壽の作品など。これらで展示品の9割方になる。後は賞状の類いを展示されても仕方ないし、というわけで意外に見所の少ない展覧会でもある。だから会場も二階だけで入場料も普段の半額の500円ということか。

 ところで最初に東京駅の駅舎の設計を行ったのはドイツの技師のバルツァーであり、彼は日本建築を研究した上で和風のデザインを提案した。しかし当時の「近代化=欧米化」と考えていた日本では受け入れられず、結局は辰野金吾がヨーロッパ式に再設計したわけである。しかし今改めてバルツァーの案を見てみるとこれはこれで面白く、もしこの案が採用されていたら今の東京の風景は全く異なるものになっていただろうななどと思いを馳せることになる。

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和風なバルツァーの案

 

 美術館の見学を終えたところで11時過ぎ。今日のコンサート昼の部は東京芸術劇場で14時開演。とりあえずまずは荷物をホテルに置きに行くことにする。

 今回宿泊するのは南千住のホテル丸忠Classico。CENTROの方は何度も利用しているが、そちらが週末割り増しで高かったことからこちらを予約。と言ってもこちらの宿泊料も新今宮の高級ホテル・ホテル中央オアシスと変わらないぐらいの額になっている。

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ホテル丸忠Classico

 ClassicoはCENTROよりもさらに駅から遠くにあり、最寄りバス停は泪橋というかなり濃い地域。新今宮が「じゃりン子チエ」の世界だったら、こっちはもろに「あしたのジョー」の世界である。

 とりあえずホテルに荷物を預けるとホールのある池袋に向けて移動。しかし山手線運休の煽りをうけて車内は殺人的混雑(東京の通常の朝ラッシュ並み)。池袋に到着した頃にはかなり疲れてしまう。

 ようやく池袋に到着したものの毎度の事ながらこの駅の構造はサッパリ分からない。とりあえず芸劇は西口方面だったはずと西口を目指すが、どこから地上に出られるのかも分からない。つくづく東京はダンジョンである。そう言えば東京をそのままダンジョンにしていたゲームもあったような・・・女神転生だったっけ。

 

 地上に出ようと出口を探していたらビルのエレベータを発見。どうやらそのビルの上階に飲食店街があるようなので、ついでに昼食を摂る店を物色することにする。立ち寄ったはビル6階の「秋田真壁屋」。稲庭うどんを扱っている店のようなので、稲庭うどんの定食を頼む。

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秋田真壁屋

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窓からは芸劇がそこに見えた

 入店して窓際の席に座ったら、窓の向こうに芸劇が見えていた。どうやら道は間違っていなかった模様。なお稲庭うどんについてはなかなか美味い。ただ秋田の佐藤養助を何回か訪問したことのある身としては、うどんにもう一腰欲しい気もする。それとやはり東京は水が良くないのがどうしても分かる。

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稲庭うどん

 昼食を終えると1階に降りて、目の前に見える芸劇へ。しかし西口公園完成記念イベントとかでごった返していて、目の前に見える芸劇まで大回りを余儀なくされる。

 私の席は二階席中央ブロック。定期会員ではない遠隔組であることを考えると、まずまずの席を確保できたと考える。

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まずまずの席

 

東京都交響楽団 第891回 定期演奏会Cシリーズ

指揮/エリアフ・インバル
ヴァイオリン/ヨゼフ・シュパチェク

ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調 op.77
ショスタコーヴィチ:交響曲第12番 ニ短調 op.112 《1917年》

 一曲目のショスタコのヴァイオリン協奏曲はシュパチェクの演奏に圧倒される。最年少でチェコフィルのコンサートマスターを務めていたというチェコの新進気鋭。その技と音色の豊かさは並ではない。ショスタコのこの曲は曲想がころころ変わる変化の激しい曲だが、彼の表現力の幅に魅了される。まさに神業である。

 二曲目のショスタコの12番は、初っ端からホールが地鳴りするような轟音。低弦がビンビン響いて、実はこのホールってこんなに反響があったんだって驚いた(笑)。とにかく怒濤のような演奏で始まる。ホールを揺るがさんばかりの演奏だが、ここで都響は乱れない。そこから急に静かな第二楽章になると今度は謳わせる。そこから終盤に向かって徐々に盛り上げて、作曲家がほとんどやけになっていたのではないかと思わせる大フィナーレになだれ込む。まさに圧巻の音楽が展開。ここまで凄まじいのは久方ぶりに聞いたような気がする。

 場内は大興奮の坩堝となった。結局インバルの一般参賀あり。私は都響のことはよく知らないが、定期公演で一般参賀って普通にあることなんだろうか? 少なくとも関西では見たことはない。

 

 もうこの公演だけで東京までの新幹線代の元を取った気分であるが、興奮の内にコンサートを終えると次の会場に向けて移動する。今日はコンサートのダブルヘッダーである。次はサントリーホールで開催される東京交響楽団のコンサート。地下鉄を乗り継いでホールに移動するが、サントリーホールへは開演時刻18時の1時間以上前に到着してしまう。夕食を摂ろうかと思ったが、昼が稲庭うどんだったので杵屋のうどんという気にはならない。仕方ないのでホールまでプラプラ歩きながら店を探すが、適当な店がない。パン屋があったので覗いてみたら、思わず目を疑うような非常識極まりない六本木価格に仰天して、さっさと撤退する羽目に。元々オフィス街なのか、休日に開いている店が少ない上に、店もお洒落だがやたらに高いというタイプばかりで私が入店する気になるような店は皆無。毎度の事ながら六本木周辺は私にとっては鬼門。ヒルズだけでなくてこんなところまで禍々しい成金結界が及んでいるのだろうか。

 仕方ないので、ホール前のベンチでこの原稿を打ちながら開演時刻を待っている(笑)。関西のホールは開演の1時間前に開場するところが多いのだが、東京のホールは開演30分前に開場というところが多いから、ホール内で時間をつぶすこともできない(まあホール内に入ったところで、特に時間をつぶせる場所もないが)。日没と共に辺りは段々と冷えてきた。今日の日中は暑くて少々もてあましたが、こうなってくるとダウンジャケットを着てきたのは正解だったという気がしてくる。

 体が冷え切った頃に開場。ゾロゾロと場内に入る。今回の私の席は二階席。これも会員でないことを考えるとまずまずの場所。会場内には空席もチラホラあり、入りとしては8割と言うところか。

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サントリーホールの2階席

 結構疲労が溜まってきているので、ホール内で普段はまずしない贅沢をすることに。1本500円の超高級ペプシコーラと600円の高級サンドイッチを頂く。ようやく一息ついた頃に開演時刻となる。

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高級コーラ&サンドイッチ

 

東京交響楽団 第675回 定期演奏会

指揮:ジョナサン・ノット

ベルク:管弦楽のための3つの小品 op.6
マーラー:交響曲 第7番 ホ短調 「夜の歌」

 正直なところベルクは私にはよく分からない。何やらやけにキラキラした曲であると言うことは感じるが、それ以上の感慨は特にない。

 さて本題のマーラーであるが、非常に個性的なメリハリの強い演奏。ノットの指揮には実に仕掛けが多く、細かいテンポの変動など随所に様々なニュアンスをつけていた。テンポもかなり抑えめで弛緩してしまいかねないギリギリの線。ただし単に酔狂で個性的な演奏をしているわけでなく、各所で楽器のバランスなども考えていることも覗える。

 これに対して東響の演奏は概ねノットの意思に対応していた。細かいところを見ていけば、金管がヘロってしまったりなどのミスもいくつか見られたが、それが致命的な破綻にまではつながっていない。ベルリンフィルやウィーンフィルを聴いた直後の耳にはかなり劣って聞こえるのは仕方ないところだが、概ね健闘していたというところか。

 ただ総じて言えるのはなかなかの熱演だったということ。東響の演奏も気合いの入ったものであったことを感じた。

 個性的なマーラーなので好き嫌いは分かれるところだろう。終演後足早にホールを去る客がいる一方で、残って拍手を続ける観客も少なくなく、何とこちらでもノットの一般参賀に。

 

 東京までの新幹線代の元を取ったことを感じさせるなかなかの演奏続きに胸一杯だが、一方で腹の方は空いてきている。この日の夕食は帰りに上野の「つばめグリル」に立ち寄って「ハンブルクステーキのセット」を頂くことにする。洋食店のはずなのだが、茶碗に入ったご飯とスープでなくて味噌汁が出てくるというのはなかなか異色。確か横浜ではこんなことはなかったはずだが・・・。上野という土地柄に配慮したのか? とりあえず味噌汁が意外に美味かったのは驚き。

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上野のつばめグリル

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ハンバーグのセット

 夕食を終えるとホテルに戻ってくる。やはりこうやって疲れた時に歩くと駅からの距離が結構気になる。

 ホテルに戻ると風呂の時間は23時からなので、それまでは原稿の執筆及びアップ。23時になったところで大浴場に繰り出すが、カランが6つの浴場に10人ぐらいの宿泊客が入れ替わり立ち替わりでやってくる大盛況。これには「このホテルにこんなに大勢が宿泊していたのか」と驚いた。一見すると閑散として人の気配を感じなかったのだが。

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三畳一間のシンプルな部屋

 明日は早朝から京都までとんぼ返りになる。とりあえず「ザ・プロファイラー」と「ガイアの夜明け」の録画分をチェックしてから就寝する。