遠征最終日だ
翌朝も目が覚めたのは7時半。タップリ寝たはずだが、体のあちこちに痛みが残っている。昨日一日で2万歩以上というのは明らかに歩きすぎである。
さて今日の予定だがライブが中心である。サントリーホールで14時に開演の日フィルのコンサートのチケットを取ってある。これが予定のメインで、後は開演時間までは残った美術館で時間つぶしというところ。

ホテルのチェックアウト制限が10時なので、その前の9時半頃にチェックアウトする。まずは東京駅に移動して、重たいキャリーをロッカーへ。この後は東京ステーションギャラリーに行く予定だが、開館時刻の10時までにまだ時間がある上に、実は10時に終えておくべき予定がある。
まずはまだ食べていなかった朝食を摂りたい。しかし東京駅の丸の内北口の周辺には適当な店がない。結局は八重洲口側まで移動してそば屋に入店する。
10時前になるとスマホを取り出す。実は10時からの用事というのはチケットの確保。これから半年後ぐらいに行われるコンサートのチケット販売開始が今日の10時なのである。PCを使えれば座席指定で予約がしやすいのだが、今の私はノートPCを持っていない身。やむなくホールのチケットセンターに電話である。しかしこれがなかなかつながらない。ようやくつながるまでに10分ほどを要した。何とか無事にチケットの確保には成功。まあマイナーなオケのコンサートなので、発売10分で売り切れるということはないだろうとは思っていたが。
チケットを確保したところで東京ステーションギャラリーに入館する。
「ピカソと20世紀美術」東京ステーションギャラリーで5/17まで


20世紀の美術はピカソがキュビズムで世界に衝撃を与えたところから始まるが、それからかなり多様な展開をしていくことになる。そのような20世紀美術の展開をアメリカとヨーロッパから見る。
やはりネタが20世紀美術というだけあって、私的には面白味を感じるのは残念ながらピカソやマティス辺りまで、後はどうでもいい(ウォーホルのマリリン・モンローはもうゲップが出る)というのが本音で、本展の後半部分に関しては退屈極まりなかった。
毎度のことながら、この美術館の最大の展示品は東京駅の建物ではないかと思う。東京への往路で「美の巨人たち」の東京駅の回を見た直後なので、感動もひとしおである。









すみだトリフォニーホールへチケットを受け取りに
美術館の鑑賞後は先ほど予約したチケットを受け取りにすみだトリフォニーホールに向かうことにする。チケットを郵送してもらうと手数料がかかるし、どうせ東京まで来ているのだからホールの場所確認がてらに直接受け取ってやろうという考え。
すみだトリフォニーホールへのアクセス駅は総武線の錦糸町。東京駅の地下に潜って総武線快速で移動する。錦糸町は豪雨の中だったが、折りたたみ傘を鞄から出すのも面倒なので建物伝いでホールまで移動。ホールはビル街の中というところ。隣にはやけに高そうなホテルがある。私がこういうホテルに泊まることは多分一生ないだろう。

トリフォニーホールでチケットを受け取ると移動。隣の両国に江戸東京博物館があるのでそこに立ち寄ることも考えていたが、雨が激しいし、あの博物館は駅から微妙な距離があるし、今の出し物は京都への巡回もあるしということでこのままライブ会場近くまで移動してしまうことにする。
今日のライブ会場はサントリーホール。最寄り駅は六本木一丁目である。駅に到着した時にはまだ開演の1時間半以上前。とりあえず昼食を摂る必要があるが、それ以外にも少々時間つぶしが必要なようだ・・・と考えた時に、泉屋博古館のポスターが目に入る。そう言えばこの近くだった。とりあえず立ち寄ることにする。
「小川千甕 縦横無尽に生きる」泉屋博古館で5/10まで」

京都に生まれた小川千甕は、浅井忠に洋画を学びながら、日本画を描いたりさらには挿絵や漫画も手がけるなど、非常に幅広い絵画を描いた人物である。渡欧の際にはルノワールとも面会したそうだが、その頃の状況をのびのびとしたスケッチで描いている。
晩年には富岡鉄斎などの影響も受けて南画を描き始めるのだが、まさにこの展覧会のタイトル通りの「縦横無尽」なダイナミックな作品である。
ジャンルに特にこだわらず、とにかく心の向かうままに描いたという印象で、年月を追うと画風がコロコロと変わっているのであるが、それでも最終的な晩年の南画まで一本の線でその変遷がつながるというのが興味深い。
チェーン店で昼食を
美術館に立ち寄った後は昼食に。しかしこの周辺の店は無意味に高そうなところが多い。そこで東京での飲食店選びの経験則「困った時にはとりあえずチェーン」(全く期待は出来ないが、下手な店で大外しするよりも無難)というわけで「とんかつ和幸」で昼食にする。

無難な昼食を終えるとサントリーホールに移動。到着したのは開場の10分以上前。それにしても別に並ぶ必要がない(全座席指定である)にも関わらず、入場時間前に列を作って並ぶ日本人の奇妙な習性。

開場時間になると玄関の上にからくり時計のようなものが出てきて開場時間を告げる。妙なところに凝った仕掛けのあるホールである。

サントリーホールはかなり天井が開けたホールという印象。二階席のオーバーハングが少なく、全体的に上が開けている。全席で残響1.8秒というのはふかし過ぎとしても、そういう方向を目指しているホールであるのは分かる。ただ二階席のオーバーハングが少ないことで、私の席は二階席の一番奥であるため、ステージまでの距離がやや遠い。
日本フィルハーモニー交響楽団第365回名曲コンサート

指揮 西本智実
ピアノ 若林顕
曲目
チャイコフスキー: オペラ『エフゲニー・オネーギン』から「ポロネーズ」
ラフマニノフ: パガニーニの主題による狂詩曲
チャイコフスキー: 交響曲第5番
一曲目のチャイコフスキーは私は初めて聞いた曲だが、ロシア旋律がタップリの曲で、やや俗に聞こえる部分もある。
二曲目はこれも私には初めての曲だが、それでもいきなりラフマニノフであることは分かるぐらい彼の特徴の出た曲。例によってのピアノが大活躍である。
三曲目は言わずとしれたチャイコの5番。今更説明の必要もないほど有名な曲だし、私も今まで何十回耳にしたか分からない。
若林顕のピアノについては地味という印象。華麗にテクニックを誇るというタイプでもないし、タップリと歌わせるというタイプでもない。
日本フィルに関してはやけに弦が薄く感じられることが気になる。ピアニッシモは単なる弱い音になるし、フォルテッシモでは管楽器の音だけが聞こえてくることになる。そのせいで非常にダイナミックレンジの狭い演奏というように聞こえて、単調で万事が盛り上がりに欠ける。
指揮者の西本がスラリと背を伸ばして指揮台に立つ姿は、まるで宝塚の男役スターのようで非常に絵になる。指揮の動作などもやや芝居がかった感があり大時代的である。ただその指揮自体は実にオーソドックスで外連味のないもの。それがむしろ残念。もう少しハッタリをかますぐらいの茶目っ気でもあった方がより魅力的な演奏になるように思われる。キッチリ、カッチリしているのだが、妙にクールすぎて何か物足りない。
どうも全体的に「地味」な印象の演奏だったような気がする。それがこのホールの直接音よりも間接音がタップリの柔らかい音響効果に包まれて余計に地味さに拍車がかかっていたような。
これで本遠征のすべての予定は終了。新幹線で帰途についたのである。
結局は一日かけて東京エリアの美術館をかけずり回り、サントリーホールを見学してきたというようなところ。ただライブに関してはやや残念というのが本音。どちらかというと紀の善のくず餅の方がより鮮烈な印象を残したのである。
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