翌朝は8時頃に起床するとシャワーで眠気を覚ましてから朝食へ。ルートインはなかなか良いホテルだが、どこで泊まっても朝食の内容に代わり映えがないのがいささかツラいところではある。
朝食を終えると9時前にはチェックアウトする。今日は京都でライブの予定だが、その前に立ち寄るところがある。京都駅で一旦途中下車してコインロッカーにキャリーを放り込むと、再び駅に舞い戻って瀬田まで移動する。ここの美術館を訪問するのは久しぶりである。
「ビアズリーと日本」滋賀県立近代美術館で4/17まで
1890年代に突然に10代でデビューしてイラスト界に旋風を巻き起こして時代の寵児となるが、その人生を駆け抜けるように若干25才で夭折してしまった天才・ビアズリーに関する展覧会。
1890年代と言えばまさにアール・ヌーヴォーの時代であるが、確かに彼のイラストはミュシャとは違ったタイプでのアール・ヌーヴォーを代表するような画風である。退廃的でエロティック、時にはグロテスクでありながら、それでいて強烈な魅力を放っている。ミュシャのような美しい世界だけでなく、その裏側も描くような凄みもある。20世紀最大の萌え絵師とも言われるミュシャと違い、ビアズリーの作品は悪魔的な感もあるが、それでいて目を離せなくなるところがある。
白と黒の明暗がハッキリとしたインパクトの強い画風が彼の特徴だが、彼もご多分に漏れず、この時代に流行したジャポニズムの影響は受けているという。本展ではそれをうかがわせる作品も展示されている。
ただ彼がジャポニズムの影響を受けた以上に、日本の作家陣の方が強烈な影響を受けたようである。当時の日本で登場していた版画の類いも展示されているが、それらには明確にビアズリーの影響を受けているものが多いのには驚かされる。
滋賀での予定を終えると京都に舞い戻る。コンサートホールに行く前に美術館を一カ所。
「生誕220年 歌川広重の旅」美術館「えき」KYOTOで3/27まで
平木コレクション保永堂版初摺による東海道五十三次を展示している。
初摺さくひんは後の版と違っている箇所がいくつか見られる。中には後に不都合な部分を修正したりしている場合もあるが、往々にして初摺の方が版木にヘタリが見られないのでシャープで明確なものが多い。また今回の展示品は保存状態も良好なものが多く、色彩が鮮やかであるのが特徴でもある。何度も目にした広重の東海道五十三次であるが、このような状態の良い版で見るとまた特別な感慨もあるものである。
そろそろコンサートの開演時間が近づいてきた。ホールに移動することにする。北山駅近くのデニーズで昼食を摂るとホールへと急ぐ。
京都市交響楽団 第599回定期演奏会
指揮/高関 健(常任首席客演指揮者)
曲目/マーラー:交響曲第6番イ短調「悲劇的」
ステージからはみ出しそうな大編成のオーケストラであったが、これを単に荒々しく鳴らすのではなく、キチンと整理した上で抜群のコントロールで音楽を奏でさせた印象があるのが高関の指揮であった。過度に感情を煽るようなことはしないが、それでも冷淡なわけではなく十二分に感慨深い演奏であり、京都市響の技術の確かさもあってなかなかに見事な名演であったように感じれた。最後まで緊張感を途切れさせず、長大なこの交響曲に対して冗長さを感じさせなかったのだから見事なものである。
これでこの週末の予定は終了、ようやく帰宅と相成った。