徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

チョン・ミョンフン指揮 東京フィルハーモニー交響楽団&「奇想の系譜展」「新北斎展」「河鍋暁斎展」

 翌朝は7時に起床。まずはレストランで朝食へ。ここの朝食は品数が極端に多いというわけではないのだが、メニューにうどんがあったりなどが地味にうれしい。とにかく朝からしっかりとエネルギー補給をしておく。

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クライトンの朝食バイキング

 部屋に戻るとシャワーを浴びたりなど身支度を調える。テレビをつければ「まんぷく」を放送しているが、ついにまんぷくラーメンが完成で量産に入るとか。いよいよ話が佳境に入ってきたが、ここでヒロインが突然に倒れる(過労だろう)というアクシデントが・・・というところ。前作のような滅茶苦茶(ヒロインが明らかに頭がおかしいとしか思えなかったが、それは脚本家が実際に頭がおかしかったからだろう)と違って安心してみられる普通のドラマである。NHKとしては前作のような異常な作品(放送事故レベルである)がどういう経緯で間違って製作されてしまうことになったかはキチンと反省してもらいたいところ。NHK三大汚点ドラマ「江」「半分青い」は脚本家に実力のない者を選んでしまっての大失敗、「花燃ゆ」はそもそも企画自体がなっちゃいないということで、いずれも責任者は切腹もの。ちなみに「西郷どん」もかなりひどかったので、テーマが西郷隆盛というキャッチーなものでなかったら上の作品と同じカテゴリーに入っていた可能性大。

 

新幹線で東京へ向かう

 支度を終えるとホテルをチェックアウト。新大阪から新幹線で東京に向かう。平日の昼だというのに新幹線は結構混雑している。それにしても新幹線もかなり揺れるようになった。路盤が相当に劣化してきているようだ。そういう点ではいすれは大規模改修が必要だろう。しかしそのためにリニアではなく、やはり新幹線の複々線化の方が正しい選択だと思うのだが。

 車内ではpomeraでこの原稿を入力したり、スマホでこれからの美術館攻略ルートの設定やチケットの手配。考えてみれば「ハイテク」な時代になったものだ。いずれも2,30年前には考えつかなかったことだ。あの頃は新幹線車内にレッツノートとどでかい外付けモバイルリチウムイオンバッテリを持ち込んで、MPEG1圧縮したテレビ番組を見るだけでかなり「ハイテク」で、時代の最先端を行くモバイルビジネスマン気取りだった(実際にそこまでモバイル機器を使いこなしている者は一般にはあまりいなかった)。隔世の感がある。今ではSNSもLINEもやっていない私は、単なるハイテク音痴なジジイの一人だ。

 疲れ切った頃に新横浜に到着。足下に注意のアナウンスに驚いて外を見ると雪が降っている。まもなく到着した東京も雪がぱらつく極寒の地。

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東京も雪がぱらついていた

 

南千住のそば屋で昼食にする

 もうそろそろ13時近いので、とりあえずホテルに荷物を置きに行きがてらどこかで昼食を摂りたい。立ち寄ったのは南千住のそば屋「登知喜屋」。昔に一度来たことがあるがそれ以来である。と言うのも、ここは店を閉めるのが早いから。私がホテルに戻ってくる頃にはいつも閉まっているので立ち寄る機会がないのである。

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南千住の登知喜屋

 「カツ丼」を注文。オーソドックスなそば屋のカツ丼だが、これが不思議に美味い。まさに正しいカツ丼と言うべき存在。これで閉店時刻がもっと遅ければ夕食に使えるのだが・・・。

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私好みのカツ丼

 昼食を終えた時には13時を回っているのでホテルにチェックインする。ホテルは例によってのホテルNEO東京。部屋に入って荷物を置くと、一息つく暇もなく直ちに外出である。これから19時のコンサートまでの間にたっぷりと予定がある。 

 まずは上野に移動すると東京都美術館へ。ここで奇想の絵画展を開催している。この入場券については先程新幹線の車内で手配済みである。

 

「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」東京都美術館で4/7まで

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 江戸絵画の中でも特に異彩を放った画家たちの作品を集めた展覧会。伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、岩佐又兵衛、狩野山雪、白隠慧鶴、鈴木其一、歌川国芳といった一癖も二癖もある絵師の作品を特集している。

 最近になって爆発的人気となった若冲に関しては、その圧倒的な技倆を見せつける精密彩色画を中心に展示。若冲が得意とする鶏の絵が展示されている。

 私的には蕭白や芦雪の作品がうれしい。圧倒的な技術を持ちながらも極めてあくの強い蕭白の作品は何とも言えない独特の魅力がある。本展のポスターにも鳴っている「雪山童子図」などの鮮やかな色彩に精緻で軽妙な筆さばきなどはいかにも蕭白らしい。また芦雪もプライスコレクションから「猛虎図」が展示されており、師匠の応挙とは違った虎の描き方(応挙の猫と違って芦雪の方はもう少し虎っぽい)が見れて面白い。また芦雪のユーモアを示す「白象黒牛図屏風」なども展示されていて楽しい。

 次に岩佐又兵衛、狩野山雪と「奇想」と呼ぶには若干渋めのところが来て、いかにも楽しげな白隠慧鶴の作品に琳派の継承者であり異端者の鈴木其一が登場、そしてトリは江戸の奇想を締めくくるに相応しい歌川国芳。現在の漫画にもつながる雰囲気のある大判の版画はなかなかに躍動感があってワクワクする逸品。ちなみに国芳は河鍋暁斎の師匠に当たるので、この要素は濃厚に暁斎にも引き継がれているのである。

 百花繚乱というか百家争鳴の方が正しいか。とにかく個性的な作品が並ぶかなり楽しい展覧会であった。


 最近とみに若冲が人気のせいか、かなり大勢の観客が来ていた。しかし私としては、蕭白に芦雪も忘れるなと言いたいところ。後期展示には蕭白の「群仙図屏風」が展示されるようだからこれも見たい。

 

 とりあえず上野での予定は終了なので、次は成金ヒルズまで移動である。先程手配したセット券のもう一方がここで開催されている新北斎展。例によって毒の沼地のような成金オーラで精神力を削られるが、何とか森美術館に到着。しかし券売所の前で大行列。しかもなぜか前売り券を買った者までここで行列に並んで入場券に引き替えないといけないという。意味不明だが、どうやら券売所で行列を作って改札制限にしているようだ。前からここの美術館はこういうことをよくするが、これが私がこの美術館が嫌いな理由の一つ。しかもここをくぐり抜けて会場まで行っても、その前でまた行列で入場待ち。もうこうなると何のことやら意味不明。入場前から不快感がマックスである。

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会場入口前はこの異常な混雑

 

「新北斎展」森アーツセンターギャラリーで3/24まで

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 北斎はその生涯において何度もその名称を変更しているが、それらの時代を追ってその作品を展示している。一般的な版画作品よりも、肉筆による小品、版本などが多いのが今回の展示の特徴で、展示作の大半はこの度島根県立美術館に寄贈されることとなった永田コレクションによるものである。一般的な北斎展でよく展示されている富嶽三十六景などの量産型浮世絵版画が中心でないところが「新北斎展」と名乗っている所以だろうか。

 本展の目玉の一つとしてPRされているのが、最近になって対図であることが判明した太田記念美術館の「雨中の虎図」とギメ美術館の「雲龍図」が併せて展示されることだが、実は私はこの組み合わせは以前にハルカス美術館で開催された大英博物館共同プロジェクトの北斎展で目にしている。墨絵の龍と色絵の虎が火花を散らせてにらみ合うという迫力ある構図になる逸品である。

 私的には一番興味を持ったのは西新井大師總持寺の「弘法大師修法図」。おどろおどろしい鬼と対称的に静かな表情で座る弘法大師の表現が臨場感のある描写でさすが。

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中にはこんな作品も

 平日の昼であるにもかかわらず、東京の展覧会ではよくあることだが観客が多すぎて落ち着いてみられない。なお私は北斎展の類いにはこの数年だけで何度も行った気がするのだが、東京地区で大規模な北斎展が開催されるのはかなり久しぶりらしい。そのことが観客の異常な多さに拍車をかけているのか。ただ今回の展示の大半は永田コレクションであることから、結論としては島根県立美術館に行った方が賢そうである。島根県立美術館ではこれから数年かけて、永田コレクションの全貌を展示するそうであるので。

 

 大分時間が遅くなってきたが、コンサートの開始までにもう1カ所ぐらいは立ち寄れそうだ。成金ヒルズからさっさとに逃げ出すとミッドタウンまで歩く。ヒルズほどではないにしても、こちらも成金オーラが漂っていて私のあまり得意ではない場所である。ここの4階の美術館が次の目的地。実際にはここの訪問が私の美術館方面での主目的の一つである。

 

「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」サントリー美術館で3/31まで

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 その圧倒的な技術によってありとあらゆる絵を描きながら、かえって捉えどころがないとして日本では存在が忘れていた暁斎であるが、イギリスなどでは暁斎の弟子であったジョサイア・コンドルの解説本などもあって、北斎と並んで有名な日本人画家であるという。実際の彼の作品を目にすると、海外で評判になることも納得できるのであるが、最近になってようやく日本国内でも注目を浴びることになってきたようである。

 本展では暁斎の作品を時代を追って概観しているが、その中で暁斎がこだわっていたという狩野派絵師としての自負を垣間見せるような展示となっている。暁斎といえばおどろおどろしい幽霊画やさらには痛烈な風刺画、果ては春画に至るまでおよそあらゆる作品を描きまくっている(恐ろしいほどのスピードで量産したらしい)が、そのベースとしては古典に学び狩野派としての修練を真摯に積み重ねてきたことがある。本展では彼の絵帳などが展示されており、彼がかなり熱心に勉強をしていたことも伺わせる。

 江戸期から明治期にかけて活躍した暁斎であるが、こういう点を見ていると、先の「奇想の系譜」につらなる一番最後の絵師こそが彼なのである。

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この軽妙さ

 それにしても河鍋暁斎もつい先頃までは日本では全く忘れられていたが、ここに来て急に注目を浴びてきた。若冲なんかもそうだったが、やはり一目見ただけでその作品が並ではないことが素人にも分かるということが大きい。私も暁斎の作品を初めて見た時は息をのんだ。そして次の瞬間に「なんでこんなすごい人物が全く無名なんだ?」と大きな疑問を感じたものである。

 

喫茶で生麩ぜんざいを頂く 

 これで美術館方面の主要目的はほぼ押さえた。開演まではまだ時間があるが、もう1カ所回るというほどの時間もないので、少しお茶をしていくことにする。「不室屋」生麩ぜんざいを頂く。上質の生麩に上質の小豆。最上の一時である。

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このぜんざいが最高に美味い

 お茶でほっこりしたところでサントリーホールに向かう。ここからサントリーホールまでは距離は大してないはずなんだが、いざ移動となると適切な交通機関がない。結局は地下鉄を一駅ずつ乗り継ぐことに。ホールに到着した時には既に入場が始まっていた頃。結構な人数が来ている模様。

 

東京フィルハーモニー交響楽団第916回定期演奏会

指揮:チョン・ミョンフン

東京フィルハーモニー交響楽団

マーラー:交響曲第9番

 マーラーの9番といえば、私の頭の中にはラトル・ロンドン響やヤンソンス・バイエルン放送響の印象がどうしてもある。そのせいか、チョン・ミョンフン向け特別編成の東フィルの演奏でも、どうしても粗が目立ってしまうことになってしまう。

 ただそういった演奏の粗に目をつぶったとしても、どことなく淡々とした印象のチョン・ミョンフンの演奏は、どこか物足りなさのようなものを感じさせてしまうのである。普通の人が普通に人生を送り、普通にその最後を迎える音楽のように聞こえてしまう。今一段深いレベルの感動が欲しかったというのが本音。

 今回はこれを聴きにわざわざ東京くんだりまで出てきたのだが、正直な感想はイマイチというもの。決して悪い演奏ではなかったのだろうが、どうしても比較対象が2018年度と2016年度のベスト演奏では相手が悪かったか。

 

上野で寿司を夕食に摂ってホテルに戻る 

 これで今日の予定は終了だから夕食を摂ってからホテルに戻ることにする。夕食を何にするかだが、寿司でも食いたい気分ということで上野の「江戸っ子」に立ち寄る。私の好きなホッキ貝を中心に10皿ほどつまんで2700円。安いとは言えないが東京だとこんなものだろう。

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上野の江戸っ子
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ホッキ貝等を適当につまんでから

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締めの大トロ一貫盛

 ホテルに戻るととりあえず入浴。大浴場の熱めの湯でしっかりと体を温める。今日はとにかく寒かった。上着を着ていても凍えそうなのでカイロで体を温めていた次第。ダウンを着てこなかったのが失敗だった。

 風呂から上がって部屋に戻ると一気に疲れが出てくる。ほとんどそのままグロッキーの状態で就寝してしまうことになる。