徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

大阪フィル第529回定期演奏会&「描かれた神戸・大阪」at 芦屋美術館&「山沢英子」at 大谷美術館&「抽象世界」at 国立国際美術館

 今日は大阪フィルの定期演奏会に大阪まで出向くことに。先の定期演奏会ではデュトワの指揮の下で見事な演奏を聴かせてくれた大フィルだが、果たして今回、レヴィの指揮ではどうなるか。

 それにしても暑い。情けないことに早くも夏バテ気味である。こんな中、生ぬるい電車に乗って大阪まで行って、灼熱地獄の中をウロウロしていたら倒れそうである。そういうわけで今回は車で行くことにする。

 車で行くとなると行きがけの駄賃で、車でないと行きにくい美術館に寄り道したいところである。まずは芦屋の住宅地の中の一通地獄の先にある美術館へ。

「-描かれた神戸・大阪- 阪神名勝図絵と青山政吉」芦屋市立美術博物館で6/30まで

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 阪神間の発展は鉄道の発達と軌を一にしていた。明治38年の阪神電鉄の開通によって、阪神間は住宅地として急激な開発が進む。当時は「健康地として最良」と紹介されていたらしい。そのような当時にこの地の景観を描いた「阪神名勝図絵」が製作され、これが朝日新聞に掲載された後に木版画集として出版されたという。その阪神名勝図絵と、昭和の阪神間の風景を描いた大阪出身の青山政吉の水彩画を併せて展示。

 阪神名勝図絵については、今のこの地域では想像もつかないほどの長閑な風景が広がっているのが笑える。雲雀丘などまさにその名の通りの何もない丘で、今の住宅地の風景など想像もつかない。これ以外でもやはり住宅がいかにも昔の建築であったりなど当時の様子が覗える作品となっている。

 青山政吉については、日本画と洋画の両方を学んだという変わった経歴をもつ画家である。そのことは彼の水彩画作品にも反映しており、描き方や着色方法に日本画の要素と洋画の要素の双方が覗える。この辺りが彼の独自性でもあるのだが、実際の作品は技法云々よりも目の前の風景をありのままに伝えるということに徹しており、芸術性よりも観光ガイドのような感の方が前に出るところがある。好ましい絵画ではあるが、正直なところ印象は残らない。


 芦屋市立美術博物館の見学を終えると、芦屋の住宅地の間を抜けて隣の美術館へと移動する。

「生誕120年 山沢栄子 私の現代」西宮市大谷記念美術館で7/28まで

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 山沢英子は1899年に大阪に生まれ、1920年代にアメリカで写真を学び、日本に戻ってからは職業写真家として活動した。特に晩年においては単なるポートレートではなく、抽象絵画の如き写真を撮影しており、これが独特の作品として知られている。

 彼女の代表作である「私の現代/What I am doing」の作品が館内に展示されているが、確かにまさに抽象絵画そのものである。彼女は最初アメリカで写真修行した時は、アメリカ人写真家コンスエロ・カナガの助手となっていたとのことで、カナガの写真はいわゆるドキュメンタリー写真なので明らかに志向が違うのであるが、カナガを通じて知り合った写真家達の中にこの手の芸術作品を得意にしていたものがいたらしい。

 彼女の写真については、いわゆる普通の写真を撮っていた頃から、写真によるフレーミングを巧みに使用していたり、あえて幾何学的な文様を写していたりなど、明らかに後の作品につながる傾向が初期から見られていた。晩年の抽象写真を見た時に、一番顕著であるのは色彩感覚の鋭さである。だから作品にインパクトがあり、独特の世界を形成することが出来ているのである。


 美術館を二つ回ったところで11時を過ぎたので昼食のためのレストランを目指す。しかし予定していた店は何と今日は臨時休業とのこと。思わず天を仰いで「オーマイゴッド!」、いや、一応仏教徒である私は「オーマイブッダ!」である。

 これで事前に組み上げていた予定が脆くも崩れ去ったが、さらに追い打ちがかかる。私は大阪ではフェスティバルホールメンバー特典を使用して提携駐車場を確保する予定だったのだが、駐車場に予約の電話を入れたところ、空きがないとのこと。昼食を摂る場所と車を置く場所の二つを同時に失ってしまって計画はガタガタ、根本から計画を組み直す必要に迫られる。

 大阪で他の場所に車を停めるとなると、異常な駐車料金を取られるのがオチ。それにこの近辺で昼食を摂る飲食店を探すとなると車はかえって邪魔。結局は阪神西宮駅南の辺りのタイムズに車を置いて、ここから阪神電鉄で大阪入りすることにする。何をやってるんやら・・・。

 昼食を摂る店だが、車を置いた駐車場のそばに「レストラン ロンドン」なる洋食店を見つけたので入店する。フライ系のメニューなどいろいろあるので迷ったが、珍しいものを見つけたのでそれに決める。注文したのは「ビーフストロガノフ(1080円)」

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レストラン ロンドン

 ソースの味がなかなか良い。肉は特別に良いと言うほどのものではないが、全体の味が良い。ただ一つ残念なのは、ご飯にかけない方が良かったというもの。ビーフストロガノフはハヤシライス式でご飯にかけるのがメジャーなようだが、私はこの味だとシチュー的にご飯のおかずにしたかった。それだけが残念。

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ビーフストロガノフ

 昼食を終えるとこのまま阪神電鉄で大阪入りする。冷房がどことなく生ぬるいのだが、甲子園を目指す珍妙な格好をした大量の阪神ファンのせいで暑苦しいようだ。その連中が次の甲子園駅で一斉に下車すると急に車内が広々とする。

 大阪に到着したのは13時前。開演は15時からなのでまだ時間はある。まずは体に熱が入ってしまって苦しいので、クールダウンからしたい。「つるや茶房」に入店して、夏メニューの宇治金時を注文。

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つるや茶房

 いきなり白氷が出てくるが、これに自由に抹茶シロップをかけてくださいというタイプ。このシロップがなかなかに抹茶が濃くて美味い。また小豆も美味いし、抹茶寒天も美味。なかなかにグレードの高い宇治金時である。

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いきなり白氷登場

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抹茶シロップは好みの量をかける

 宇治金時ドーピングを終えると再び町中に繰り出す。フェスティバルホールに入る前に最後に一カ所、近くの美術館を訪問する。

「抽象世界」国立国際美術館で8/4まで

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 1980年以降のヨーロッパ及びアメリカでの抽象作品を展示。

 タイトルからある程度覚悟はしていたが、それにしても見事なほどに心に響く作品のない展覧会であった。普通は現代アート系の展覧会でも一つか二つは心に少々引っかかる作品があるものだが、本展では見事に全タイトルが全く心に響いてこなかった。本展にタイトルをつけるなら「空虚な空騒ぎ」。こういう作品を子供に見せたら、ユーチューバーよりも楽そうだとアーティストを目指す子供が増えそう。


 これで美術館の予定はすべて終了なのでフェスティバルホールに向かう。それにしても辺りは灼熱地獄。熱中症を避けようと思うと野外活動時間に制限が付きそう。

 フェスティバルホールは9割方は埋まっているようだ。この前のデュトワの場合とは比べるべくもないが、それでも大フィル絶好調の模様。

大阪フィルハーモニー交響楽団 第529回定期演奏会

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フェスティバルホール

指揮/ヨエル・レヴィ
曲目/モーツァルト:交響曲 第38番 ニ長調 K.504「プラハ」
   ヤナーチェク:狂詩曲「タラス・ブーリバ」
         :シンフォニエッタ

 最初はモーツァルトから始まるが、なかなかに美しい。大フィルのアンサンブル力が以前よりも上がったようだ。去年に尾高の指揮でモーツァルトの三大交響曲を演奏した時には、今ひとつ締まりのない演奏であったが、今日の演奏はなかなかに決まっている。

 休憩後にはヤナーチェクを二つ。最初の曲は時折荒々しい響きが入る変わった曲であるが、大フィルの金管にかなり冴えがあるし、弦楽にも艶がある。それはトラでラッパを大幅強化したシンフォニエッタでも同様で、とにかく金管が非常に冴えまくっており、大フィルの金管と思えないほど。また難しい曲であるにもかかわらず、弦楽合奏もピッタリと決まっていた。

 これがレヴィの統率によるものなのか、それとも先のデュトワの余韻がまだ残っているのかは定かではないが、かなり冴えた演奏であった。大フィルは指揮者によってガラッと演奏が変わるオケなので、指揮者の選択は大事。デュトワに首席客演指揮者辺りに就任してもらって、年に3回ほど振ってもらったら、大フィルも日本を代表するオケに成長するのではなどど思ってしまうのであるが・・・。


 これで今日の予定は終了。阪神電鉄で西宮に向かったが、途中の甲子園駅から試合終了後の阪神ファンが大量に乗り込んできてむさ苦しくてまいった。しかも駅から出た途端に雨が降り出すし、道路は時間的に渋滞時刻であるしで散々だったのである。